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四章 二つ目の国
愚痴る
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「毎っ回思うんですけど、なんでこう神様って自分勝手なのが多いんですかね」
「えーと、それは私に言われても困るのですが……」
僕は今、どこまでも続くような草原の真っ只中で一人の女性と対峙している。
腰まで伸びた純白の髪にゆるやかなローブの様な服をきた人、彼女こそ今回の僕が出会うべき豊穣神、オーベリ様だ。
あれから、平原をなんとか進んで街にたどり着いた僕らは、到着早々に教会に足を運んだ。
そして、僕は絶賛彼女に管巻き中というわけ。
「まだほとんど説明なしで放り出されたことについてはいいですよ? その後の対応がひどいんですよ対応が」
目を閉じたまま困ったような表情で固まる彼女にどんどん追撃する。
「力の神さまは最後に投げっぱなしジャーマンするし、狩猟神さまは脳みそまで筋肉かってくらい好戦的だし、知恵の神さまは他のことは知らんって。知恵の神さまなら知ってろよ! 他の神さまのことも! ってなりません?」
「まぁこちらの対応に不備があったのは判っておりますが、私に言われましてもどうしようもないのですよ。何せ私達は基本お互い不干渉というのが原則ですので」
「せめて他の神さまの場所くらいはわかりますよね?」
「いいえ、私達も別段どこと定めているわけではありませんので…… 運とめぐり合わせでしょうか」
「そんなんで全部の神さまに出会えって無理があるでしょー! もうちょっとなんか統一してよー」
なんでもかんでも僕にぶん投げすぎだ。せめてなんらかの統一見解くらいは出してほしい。主に居場所とかもうちょっと世界に関しての知識とか。
「善処致しましょう。とはいえ、私もそう強く言えるような性格ではございませんので、聞いていただけるかどうかは……」
なんだろうこのオーベリ様は神さまの割に腰が低いというかなんというか。見た目はTHE女神な感じなのに非常にしゃべりやすい。
その分僕は今までの神さまへの苦情を彼女に吐き倒したのだ。
「まぁ私も、元は人間ですので…… 兎に角、力をお渡しいたしますね」
彼女の言葉とともに勝手に光の剣が浮かぶ。
注がれる光の奔流とともにまたわずかに剣が実体に近づく。
「豊穣の光といいます。その名の通り私の力は戦いには役立ちません。あなたの望むようなちいとな能力でもありません。精々あなたが思い描いた植物を一時的に生えさせる程度のものです。」
なんだそっかー。ってそれはそれで結構なチートなのでは? だって稲を思い浮かべれば生えるってことだよね?
「そうですね。範囲に限度はありますが、植物本体は消えても収穫物は消えませんので、いざというときの食料は賄えますよ」
いやいや、それどころか毎食ご飯を食べれるかもしれないってことだ。その他にもこの世界にあるかわからない植物も作り出せるとなれば、食糧事情は一気に解決だ。
これは今後の野営の時が楽しみになるね。
「喜んでいただけたなら何よりです。他の神につきましては善処いたしますが、あまりご期待なさらないでくださいね。結果につきましては…… 神託の巫女にお会いになったことはありますか?」
「んやー、そういう人には出会ってないですね」
「あなたの目指すべき国の一つにフラデア教国がございます。そこの中央教会に神託の巫女がおりますので、次はそこを目指してください。それまでには他の神に話をつけるようにしておきますので」
おっと、そうなると目的地変更か。あとで地図で場所を確認しておかないと。
「あなたの旅路が良きものとなることを祈っておりますよ」
あ、まだ言い足りないことがーーーー
無慈悲に鐘がごおんとなり、意識が引き戻される。
あれだけ話やすい神さまは初めてだというのに、お金払うから延長させろー!
なんか微妙な気分になりつつ聖堂に戻ればアランがぼやーっと天井を眺めて待っていた。
「お待たせ。何見てるの?」
「いや、なーんも」
天井を僕も見てみるが…… 確かになにもない。
「あ、そうそう。ここの書庫にスキルの本あるってよ」
それは有り難い、そうそう見せてもらって確認しよう。
書庫に案内されるがままに入る。
そこは四方に棚がありぎっしりと本が詰まっている。
丁寧に掃除されているらしく、埃の匂いとかそういうのは一切しない。紙の匂いだ。
背表紙をなぞりながら目的の本を探せば、それはすぐに見つけることができた。
タニヤが以前やっていたように該当のページ上部の円に手を置いてみれば、以前と違って光の線がのびて一つの円につながった。
描かれている文字は『剛力』。なるほど取得条件が決死の一撃だから今回当てはまったわけだ。
「お、どうだった?」
「剛力を取れたみたい。死にかけないと取得できないって中々怖いね」
「それでも剛力はまだマシだと思うけどな。模擬戦でも取得できるっちゃできるし」
新たな円からつながる線をなぞり、派生しているスキルを確認する。
剛力からは城塞と豪打が一番近いらしい。城塞は防御系、豪打は剛力のさらに強化型のようだ。
どっちも抑えておきたいところだね。城塞はアランも持っているのだろう。だからこそトロルにあんだけ殴られても耐えられたわけだ。
しかし、城塞の取得条件は一定以上の打撃を耐え続けることで取得というドのつくマゾかっていう条件だ。
対して豪打は重量系の武具での戦闘が条件なので、このままハルバードを使っていれば取得もできるだろう。
だが、できれば両方欲しいのでなんとかしてこの二つのどちらかは取りに行きたいものだ。
「とりあえず今日はもういいかな。また明日色々と試してから考えることにする」
「そうかい。んじゃ戻るか」
来た道を戻り外に出ればすっかり日が暮れていた。
「えーと、それは私に言われても困るのですが……」
僕は今、どこまでも続くような草原の真っ只中で一人の女性と対峙している。
腰まで伸びた純白の髪にゆるやかなローブの様な服をきた人、彼女こそ今回の僕が出会うべき豊穣神、オーベリ様だ。
あれから、平原をなんとか進んで街にたどり着いた僕らは、到着早々に教会に足を運んだ。
そして、僕は絶賛彼女に管巻き中というわけ。
「まだほとんど説明なしで放り出されたことについてはいいですよ? その後の対応がひどいんですよ対応が」
目を閉じたまま困ったような表情で固まる彼女にどんどん追撃する。
「力の神さまは最後に投げっぱなしジャーマンするし、狩猟神さまは脳みそまで筋肉かってくらい好戦的だし、知恵の神さまは他のことは知らんって。知恵の神さまなら知ってろよ! 他の神さまのことも! ってなりません?」
「まぁこちらの対応に不備があったのは判っておりますが、私に言われましてもどうしようもないのですよ。何せ私達は基本お互い不干渉というのが原則ですので」
「せめて他の神さまの場所くらいはわかりますよね?」
「いいえ、私達も別段どこと定めているわけではありませんので…… 運とめぐり合わせでしょうか」
「そんなんで全部の神さまに出会えって無理があるでしょー! もうちょっとなんか統一してよー」
なんでもかんでも僕にぶん投げすぎだ。せめてなんらかの統一見解くらいは出してほしい。主に居場所とかもうちょっと世界に関しての知識とか。
「善処致しましょう。とはいえ、私もそう強く言えるような性格ではございませんので、聞いていただけるかどうかは……」
なんだろうこのオーベリ様は神さまの割に腰が低いというかなんというか。見た目はTHE女神な感じなのに非常にしゃべりやすい。
その分僕は今までの神さまへの苦情を彼女に吐き倒したのだ。
「まぁ私も、元は人間ですので…… 兎に角、力をお渡しいたしますね」
彼女の言葉とともに勝手に光の剣が浮かぶ。
注がれる光の奔流とともにまたわずかに剣が実体に近づく。
「豊穣の光といいます。その名の通り私の力は戦いには役立ちません。あなたの望むようなちいとな能力でもありません。精々あなたが思い描いた植物を一時的に生えさせる程度のものです。」
なんだそっかー。ってそれはそれで結構なチートなのでは? だって稲を思い浮かべれば生えるってことだよね?
「そうですね。範囲に限度はありますが、植物本体は消えても収穫物は消えませんので、いざというときの食料は賄えますよ」
いやいや、それどころか毎食ご飯を食べれるかもしれないってことだ。その他にもこの世界にあるかわからない植物も作り出せるとなれば、食糧事情は一気に解決だ。
これは今後の野営の時が楽しみになるね。
「喜んでいただけたなら何よりです。他の神につきましては善処いたしますが、あまりご期待なさらないでくださいね。結果につきましては…… 神託の巫女にお会いになったことはありますか?」
「んやー、そういう人には出会ってないですね」
「あなたの目指すべき国の一つにフラデア教国がございます。そこの中央教会に神託の巫女がおりますので、次はそこを目指してください。それまでには他の神に話をつけるようにしておきますので」
おっと、そうなると目的地変更か。あとで地図で場所を確認しておかないと。
「あなたの旅路が良きものとなることを祈っておりますよ」
あ、まだ言い足りないことがーーーー
無慈悲に鐘がごおんとなり、意識が引き戻される。
あれだけ話やすい神さまは初めてだというのに、お金払うから延長させろー!
なんか微妙な気分になりつつ聖堂に戻ればアランがぼやーっと天井を眺めて待っていた。
「お待たせ。何見てるの?」
「いや、なーんも」
天井を僕も見てみるが…… 確かになにもない。
「あ、そうそう。ここの書庫にスキルの本あるってよ」
それは有り難い、そうそう見せてもらって確認しよう。
書庫に案内されるがままに入る。
そこは四方に棚がありぎっしりと本が詰まっている。
丁寧に掃除されているらしく、埃の匂いとかそういうのは一切しない。紙の匂いだ。
背表紙をなぞりながら目的の本を探せば、それはすぐに見つけることができた。
タニヤが以前やっていたように該当のページ上部の円に手を置いてみれば、以前と違って光の線がのびて一つの円につながった。
描かれている文字は『剛力』。なるほど取得条件が決死の一撃だから今回当てはまったわけだ。
「お、どうだった?」
「剛力を取れたみたい。死にかけないと取得できないって中々怖いね」
「それでも剛力はまだマシだと思うけどな。模擬戦でも取得できるっちゃできるし」
新たな円からつながる線をなぞり、派生しているスキルを確認する。
剛力からは城塞と豪打が一番近いらしい。城塞は防御系、豪打は剛力のさらに強化型のようだ。
どっちも抑えておきたいところだね。城塞はアランも持っているのだろう。だからこそトロルにあんだけ殴られても耐えられたわけだ。
しかし、城塞の取得条件は一定以上の打撃を耐え続けることで取得というドのつくマゾかっていう条件だ。
対して豪打は重量系の武具での戦闘が条件なので、このままハルバードを使っていれば取得もできるだろう。
だが、できれば両方欲しいのでなんとかしてこの二つのどちらかは取りに行きたいものだ。
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