異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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四章 二つ目の国

しばしの休息

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「今回のトロル戦でスキルの大事さもよくわかったよ」
「まぁ特に身体能力あげてくれるやつは、覚えりゃだいぶん違うだろうよ」
 
 アランはタニヤ同様3段目も取得しているらしく、色々教えてくれた。
 彼は狩猟神さまの加護だから内容は全然違うけど、僕の場合は色々な神様の力を受けてるわけだから取得できるかもしれない。
 それに、今はまだ魔獣とかが相手なことが多いけど、いつかは人間だって相手にしなきゃいけない時が来る可能性だってある。
 なにせこの世界の治安は推して知るべし。日が落ち切った後は一人で行動なんてできないぐらいだ。
 知っておくにこしたことはない、特に僕はこの世界の知識なんてまだほとんどないんだから。
 とにかくスキルと魔法はそれぞれ完全に独立しているらしいのは解った。多分知恵の神さまの系統のスキルなら魔法にかかわるのかもしれないけど、今のところ僕は物理に全振りだ。なにせ魔法については例の本があればだいたいなんとかできるからね。
 目下の目的はもうちょっと盾をうまく使えるようにすることとハルバードの扱いをもっと上達させることだ。
 ここらでまたお金稼ぎも兼ねて色々仕事を受けてみるべきかなぁ。
 
「とにかく、次の行先はフラデア教国で神託の巫女さんとやらに会えってさ」
「そりゃまた…… 行きにくいとこを指してきたな」
 
 そう、このフラデア教国は、王国か帝国を西に横切った先にある山脈のど真ん中にあるのだ。
 どっちのルートを通るにしても、陸路で結構な距離を歩かないといけない。
 道中に他の神さまの場所もあるから寄り歩きながら動いたとして、いったいどれくらいかかることやら。
 
「まぁ次の船が出るまではお金稼ぎしながらアランに色々教わろうかな」
「おう! 任せておけ!」
 
 とりあえず、今日は疲れたし宿に取ってさっさと寝よう。
 翌日、結局あのまま宿の部屋に引き籠っていたんだけど、朝になってもまだ身体がダルかった。
 
「体がおもーい」
「そりゃそうだろ、魔法での回復つったって体力まで戻るわけじゃねぇしな。あんだけの大けがした後に休まず移動してりゃ疲れも相当だろ」
 外の天気が雨な所為もあるのかもしれないけど、起きなきゃいけないってわかっているのにベッドから起き上がることができない。
 
「ねぇ、アラン。今日一日休みじゃだめかな」
「いや、別にいいぜ。休んどけよ。俺は用意と港町方向の仕事ないか見てくる」
 
 アランはそう言うと部屋を出て行った。
 はぁ、やっぱり旅慣れている人はこういう時に頼りになるよね。
 それにしても一人きりになるのはなんだか久々だ。
 この世界にきてからは牛小屋時代を除いて殆ど誰かと一緒にいた気がする。
 でもこうしてみるとこの世界には本当にいろんな人がいて、僕の知らないことがまだまだたくさんありそうなんだよなぁ。
 フィリーネさんから色々教わりはしたけども、やっぱり世界全体の歴史とか成り立ちとかをもっと勉強したほうがいいのだろうか。
 でも勉強は正直あまり好きじゃないんだよねぇ。
 そんなことを考えながらうつらうつらしていたら、いつの間にかぐっすり眠ってしまっていた。
 気がつけば外の太陽が黄色い。
 
「すっごい寝てたなぁ」
 
 外の光をみてひとりごちる。ぐーっと伸びをすれば体からはぺきぺきと音が聞こえてくる。
 
「アランは…… まだもどってきてないっと」
 
 部屋の中に彼の姿はない。今のうちに汗を拭いて着替えておこうかな。
 贅沢に魔法で水を生み出してそれで体を拭く。ちょっぴり冷たいけどそれが目覚まし代わりになって、頭の中がはっきりしてくる。
 この世界、水が魔法でなんとかなるのはありがたいよね。その代わりお風呂とかはお金かかるし、サウナは混浴なことが多いのが難点だけど。
 でもまぁこうやった体を清潔に保てるのもーーーー
 
「まだ寝てるかー? って悪い!!」
 
 扉が音を立てて開けられ、一瞬後に閉じられる。
 やってくれたなアラン……
 なんで毎回毎回こうやって僕が彼にサービスシーンを演じないといけないんだ。なんか配役間違ってない!?
 ちょっとその辺りも神さまに文句つけたい気分だ。
 だが、それよりもまず問い詰めるべき人物がいる。
 
「ア~ラ~ン~」
 
 服を着て声をかければ恐る恐るといった感じで扉が開く。
 
「なんかいう事あるよね?」
「いや、ほんとごめんって……」
 
 頭を下げながら謝ってくるアラン。今までは結構ちゃんとノックしてから入ってきたのに、なんでまたこういう時に限ってそれを省略しちゃうかな。
 
「ちゃんと入る前はノックしてよね」
「寝てると思ってたんだよ……」
 
 それでもきちんとノックはすべきだよ。特に男女で同室にしてるんだからそこはきちんと気を使ってくれないと。僕はちゃんと毎回ノックしてるよ。まぁ男の体みても僕は嬉しくもなんともないけどね。
 
「さすがに今回は反省してほしいかも」
「悪かったよ…… 本当に」
 
 まぁアランだって僕みたいな乾電池ボディ見ても嬉しくないとは思うよ。胸囲の格差社会って恐ろしいね。今の所タニヤ意外みーんなそれなりにばいーんなんだもの。勝利を知りたいよ。
 改めて自分の体を見下ろしてみるも、あまり成長した気配はない。
 まぁアランも悪気があったわけじゃないから取り敢えずは良しとしておこう。
 
「見たものは忘れてよね」
「お、おう……」
 
 覚えてたところで僕には確認しようがないけど。それでも念は押しておきたい。
 
「晩ごはん、早めだけど食べにいこう」
 
 頭を下げたまま固まっている彼の手をとって宿の中を歩く。
 せめて今日の夕食代を彼に全部持ってもらうくらいは許されるだろう。
 
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