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四章 二つ目の国
出発
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「それにしてもアランは良く食べるよね」
夕食を囲み、僕はアランを見ながらそう言った。
毎回僕の食べる量の倍以上は食べてる気がするんだよね。育ち盛りなのかもしれないけど、どこに収まっているのか不思議で仕方ない。
「俺からすりゃあ、メルタが食べてないと思うんだけどなぁ」
僕の食欲は普通だと思う。今日の夕食もライ麦のパンにジャガイモと干し肉の和え物、キャベツの付合せ、鶏肉のソテーにコーンスープ程度だ。これでも女の子にしては食べてる方だと正直思う。体を動かしてるからそれだけ必要なんだと割り切るようにはしているけども、明らかに前世より食べている量は多い。
それが太る元になっていないのは嬉しいんだけど、代わりにどこにもあんまり肉がついていない様に感じるのはちょっと悲しい。
「タニヤだって俺と同じくらい食べてたぞ」
あの子は別格だろう。だって僕とトントンくらいの体の細さで僕より力あるんだよ。あれは別!
「そういっても僕はこれだけ食べれば本当にお腹一杯だしねぇ」
アランが食べているのはトカゲ肉のステーキにパン、スープと種類は少ないものの、その量が山盛りだ。見てると胸焼けしそうなくらい。
「まぁ下手に食いすぎると次の日に動きづらかったりするからな。俺はこれでも抑えてるほうだぜ」
いや、もっと食べられるんかーい。思わずツッコミを入れてしまった。一体どんな胃袋しているんだろう。前世なら確実に大盛りチャレンジとかで食べ切れそうな勢いなんだけど。
「それはそうと、明日は動けそうか?」
食事を終え、食後のお茶を飲みながらアランが切り出した。
「うん、ほとんど一日寝てたから大丈夫。港方向の仕事なんかいいのあった?」
「うんや、ねぇからさっさと港に行っちまったほうが仕事あるかなって思ってな。メルタの体調が良いなら明日からまたしばらく野営しながら移動だな」
女の子の体調気遣えるのは彼のいいところだけど、肝心のところが抜けてるよね。それも含めてその、付き合ってるわけだから僕からはもう何も言うことは無いや。
翌日になり、日が高くなった頃に起き出して朝食兼昼食を取った後、街道を西に向かって歩き始めた。
一日しっかり休んだからその足取りは軽やかだ。
昨日が雨だったからか、地面はいたるところが泥濘んでいる。
ちょっと湿気が鬱陶しいけど、少し水が残っているおかげか、涼しい風が心地よい。
アランはそんな道の悪さにも動じず軽快に進む。
この辺りの道は馬車が通るためある程度整備されているらしい。それでもたまにあるぬかるみには足を取られそうになる。
「雨の後はスライムとかが水溜りに残ってることがあるから気をつけろよー」
お、スライムなんてやっぱりいるんだ。どうしても僕の頭にはドラゴンなクエストのスライムが浮かんでくるけど、水溜りに潜めるってことはたぶんバブルな感じなのかな?
とか考えていると、目の前の水溜りが蠢く。
……なんだろう想像してたのと違う。目玉もないし、体の中には組織みていなのがうごうごしてるし、どっちかというとアメーバをでっかくした感じだ。
とりあえず、ハルバードを振り下ろしてみればそれは呆気なく飛び散った。
「あれ、これだけ?」
「スライムはぶっ叩いて中の核みたいなの潰しゃそれで終わりだ。ただ気づかずに足突っ込んだりすると後が大変だけどな」
足からさっきのアメーバに絡まれるのを想像してみる。うん、たしかにめんどくさそうだ。
「それだけ気をつけておけばスライムなんて、何の足しにもならないヤツだよ」
魔獣っぽい感じだしておいて、魔獣ですらないらしい。つまり区分的には普通の生き物なわけで……
とりあえずでっかいプランクトンか何かだと思うようにしよう。
……一抱えほどもあるミジンコを想像しちゃった。普通に化け物じゃん。
その後は特に問題もなく進むことが出来た。
途中何度か休憩を挟みながらも三時間ほどで日が傾き始めてきた。
ここから近くには村も無いらしく、早めに野営の準備に取り掛かることになった。
といっても、アランが手慣れたものですぐに薪を集めて火を起こし、夕食の支度を始める。
アランの手伝いをするつもりだったんだけど、僕がやるより早く終わってしまったので、手持ち無沙汰になってしまった。
僕だって料理ができないわけじゃないけど、下手に手をだすとややこしくなるしね。
スープは干し肉とキャベツがメインで、そこに塩漬けのキノコが入っている程度だ。
メインのパンは硬い黒パンでスープに浸けて食べることになる。
正直言ってあまり美味しくはないけど、文句を言うのも憚られる。
「今日はこのままここで野営するぞ」
アランの言葉通り、スープとパンを食べ終えると、焚火の傍で横になることにした。
「アラン、僕が見張番しとくから先に寝ていいよ」
「そうか? じゃあ頼むわ」
この間は夜の間まるまる見張りしてもらちゃったからね。
焚火を挟んで反対側で横になるアランを確認して、僕は焚火に薪をいれながら火を見つめる。
一応周囲に気を使ってはいるけど、一人だと暇なんだ。
だからこうしてぼーっとしながら考え事をするのが癖になってたりするんだけど、今までの事とこれからのことを考える。
今までこうして旅をしてきたけれども、どこにも世界が滅びそうな要因っていうのは見当たらなかった。
確かに王国と帝国は半ば戦争状態かもしれないけど、それで世界が滅びるだなんて到底思えない。
それでもあの場で見かけた大樹は枯れかけていたし、神さまたちの言葉が正しいなら、何かが原因で滅びに向かっているはず。
僕が正しく神さまの思惑通りに機能したとしても、その原因を取り除かなければきっと滅びは回避できない。
この旅の最中にその原因が見つかればいいんだけど……
そうして色々考えにふける僕の顔を焚火はずっと明るく照らしていた。
夕食を囲み、僕はアランを見ながらそう言った。
毎回僕の食べる量の倍以上は食べてる気がするんだよね。育ち盛りなのかもしれないけど、どこに収まっているのか不思議で仕方ない。
「俺からすりゃあ、メルタが食べてないと思うんだけどなぁ」
僕の食欲は普通だと思う。今日の夕食もライ麦のパンにジャガイモと干し肉の和え物、キャベツの付合せ、鶏肉のソテーにコーンスープ程度だ。これでも女の子にしては食べてる方だと正直思う。体を動かしてるからそれだけ必要なんだと割り切るようにはしているけども、明らかに前世より食べている量は多い。
それが太る元になっていないのは嬉しいんだけど、代わりにどこにもあんまり肉がついていない様に感じるのはちょっと悲しい。
「タニヤだって俺と同じくらい食べてたぞ」
あの子は別格だろう。だって僕とトントンくらいの体の細さで僕より力あるんだよ。あれは別!
「そういっても僕はこれだけ食べれば本当にお腹一杯だしねぇ」
アランが食べているのはトカゲ肉のステーキにパン、スープと種類は少ないものの、その量が山盛りだ。見てると胸焼けしそうなくらい。
「まぁ下手に食いすぎると次の日に動きづらかったりするからな。俺はこれでも抑えてるほうだぜ」
いや、もっと食べられるんかーい。思わずツッコミを入れてしまった。一体どんな胃袋しているんだろう。前世なら確実に大盛りチャレンジとかで食べ切れそうな勢いなんだけど。
「それはそうと、明日は動けそうか?」
食事を終え、食後のお茶を飲みながらアランが切り出した。
「うん、ほとんど一日寝てたから大丈夫。港方向の仕事なんかいいのあった?」
「うんや、ねぇからさっさと港に行っちまったほうが仕事あるかなって思ってな。メルタの体調が良いなら明日からまたしばらく野営しながら移動だな」
女の子の体調気遣えるのは彼のいいところだけど、肝心のところが抜けてるよね。それも含めてその、付き合ってるわけだから僕からはもう何も言うことは無いや。
翌日になり、日が高くなった頃に起き出して朝食兼昼食を取った後、街道を西に向かって歩き始めた。
一日しっかり休んだからその足取りは軽やかだ。
昨日が雨だったからか、地面はいたるところが泥濘んでいる。
ちょっと湿気が鬱陶しいけど、少し水が残っているおかげか、涼しい風が心地よい。
アランはそんな道の悪さにも動じず軽快に進む。
この辺りの道は馬車が通るためある程度整備されているらしい。それでもたまにあるぬかるみには足を取られそうになる。
「雨の後はスライムとかが水溜りに残ってることがあるから気をつけろよー」
お、スライムなんてやっぱりいるんだ。どうしても僕の頭にはドラゴンなクエストのスライムが浮かんでくるけど、水溜りに潜めるってことはたぶんバブルな感じなのかな?
とか考えていると、目の前の水溜りが蠢く。
……なんだろう想像してたのと違う。目玉もないし、体の中には組織みていなのがうごうごしてるし、どっちかというとアメーバをでっかくした感じだ。
とりあえず、ハルバードを振り下ろしてみればそれは呆気なく飛び散った。
「あれ、これだけ?」
「スライムはぶっ叩いて中の核みたいなの潰しゃそれで終わりだ。ただ気づかずに足突っ込んだりすると後が大変だけどな」
足からさっきのアメーバに絡まれるのを想像してみる。うん、たしかにめんどくさそうだ。
「それだけ気をつけておけばスライムなんて、何の足しにもならないヤツだよ」
魔獣っぽい感じだしておいて、魔獣ですらないらしい。つまり区分的には普通の生き物なわけで……
とりあえずでっかいプランクトンか何かだと思うようにしよう。
……一抱えほどもあるミジンコを想像しちゃった。普通に化け物じゃん。
その後は特に問題もなく進むことが出来た。
途中何度か休憩を挟みながらも三時間ほどで日が傾き始めてきた。
ここから近くには村も無いらしく、早めに野営の準備に取り掛かることになった。
といっても、アランが手慣れたものですぐに薪を集めて火を起こし、夕食の支度を始める。
アランの手伝いをするつもりだったんだけど、僕がやるより早く終わってしまったので、手持ち無沙汰になってしまった。
僕だって料理ができないわけじゃないけど、下手に手をだすとややこしくなるしね。
スープは干し肉とキャベツがメインで、そこに塩漬けのキノコが入っている程度だ。
メインのパンは硬い黒パンでスープに浸けて食べることになる。
正直言ってあまり美味しくはないけど、文句を言うのも憚られる。
「今日はこのままここで野営するぞ」
アランの言葉通り、スープとパンを食べ終えると、焚火の傍で横になることにした。
「アラン、僕が見張番しとくから先に寝ていいよ」
「そうか? じゃあ頼むわ」
この間は夜の間まるまる見張りしてもらちゃったからね。
焚火を挟んで反対側で横になるアランを確認して、僕は焚火に薪をいれながら火を見つめる。
一応周囲に気を使ってはいるけど、一人だと暇なんだ。
だからこうしてぼーっとしながら考え事をするのが癖になってたりするんだけど、今までの事とこれからのことを考える。
今までこうして旅をしてきたけれども、どこにも世界が滅びそうな要因っていうのは見当たらなかった。
確かに王国と帝国は半ば戦争状態かもしれないけど、それで世界が滅びるだなんて到底思えない。
それでもあの場で見かけた大樹は枯れかけていたし、神さまたちの言葉が正しいなら、何かが原因で滅びに向かっているはず。
僕が正しく神さまの思惑通りに機能したとしても、その原因を取り除かなければきっと滅びは回避できない。
この旅の最中にその原因が見つかればいいんだけど……
そうして色々考えにふける僕の顔を焚火はずっと明るく照らしていた。
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