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四章 二つ目の国
新しい仲間
しおりを挟む「というわけで、エヴェリーナちゃんです」
「あの、エヴェリーナです。よろしくお願いします、です。」
「いや、急に『というわけで』とか言われても俺は全然わからんのだが……」
戻ってきた彼に紹介すれば、何やらあきれ顔だ。さっき以心伝心で通じたんだからここも通じてほしかったな。
「まぁメルタが決めたなら俺は文句ねぇけどよ。そいつはそいつで大丈夫なのか?」
「はい! どんな仕事もがんばるのです!」
「いや、それもそうだけど、宿は金の都合で3人で一部屋とかだぞ」
「大丈夫なのです!」
アランがどこか助けを求めるような顔で僕を見る。本人が納得してるんだからいいと思うんだけど。
「エヴェリーナちゃんは人探し中でここの国を出たいんだって。でも魔法使い一人で旅は厳しいから仲間を探してたんだけど、断られ三昧だったところで、僕が声をかけたってわけ」
「んで、その探してる人ってどこにいるんだよ」
「わからないのです!」
ゎーぉ、そっちは僕も初耳だ。目的地も何もなしでとなるとそりゃ断られても当然かぁ。まぁ僕たちは結局ほとんど世界中歩き回ることになるから問題ないっちゃないけど。この子元気さで押し切ってるけど、結構抜けてるのかもしれない。
「リーナに名づけして育ててくれた人なのです! お礼を言わないとダメなのです!」
うーん、どこかの誰かと状況が被ってる! それ聞いちゃうと余計に僕は断りにくいなぁ。なにせ僕に至ってはお礼どころか喧嘩別れだ。
「せめてその人の名前とかはわかるよね?」
「はい! ブロル・パーシュランドって名乗ってました」
ありゃ、家名持ちか。となると僕らとちがって出自がしっかりした人か。アランは名乗りたがらないし、僕はいない子でスティーグからもらった名前だけだしね。
しかしわかってるのは名前だけで、詳しい情報はなしかぁ。
僕たちの渋い表情をみて取ったのか、彼女の耳がペタンと寝てしまう。
「僕たちは船を待って帝国に行くんだ。そのあとはフラデア教国に向かう予定。君の探し人がいるかはわからない道のりになるけど、いい?」
「あの人は旅をするって言っていたのです! どこにいるかはわからないけど、旅を続ければどこかで会えるはずなのです!」
彼女の思いは固いらしい。これは声を掛けてしまった手前、断りづらい。しかも僕と境遇が若干被ってるのが猶更同情を誘ってしまう。
「ねぇ、アラン」
「はいはい、みなまで言わなくてもわかったよ。とりあえず魔法は得意なんだろ? 船が出るまでの仕事ぶりで考えたらいいだろ」
再びエヴェリーナの顔があがり耳としっぽが立つ。わかりやすくていいなぁ、あれ。
「がんばるのです!」
こうして僕のパーティーメンバーに新たに獣人の女の子が加わることになった。
そして軽めの討伐の仕事に出てわかったこと。
彼女魔法が得意と言っていたけど、武器はそれ以上に得意なようだった。
軽装なのは身軽にするためで、魔法とナイフでの戦いは知性を持った野生動物を思わせるほどだった。
というか単に走るだけでも、アランをぶっちぎる速度で走り抜けるし、飛び掛かるにも一体どうやってと思うほどの距離を一気に詰めていく。
それでも彼女はその名づけ親から教えてもらった魔法を大事にしたいらしく、魔法使いとして一緒に旅をしてくれる人を探していたのだとか。
戦闘スタイル的にはどっちかというと魔法剣士って感じに近いきがするけども、それを伝えると彼女はとても喜んでいた。
そのブロルさんとやらも魔法を使いながら剣で戦うスタイルだったらしく、少しでも近づけたことが彼女にとってはとても喜ばしいことのようだ。
僕はさすがに魔法使いながら立ち回るだなんて複雑なことは到底できない。魔法に集中しちゃうとどうしても足回りも適当になってしまうし、攻撃に集中すると魔法が発動しない。彼女の頭の中はいったいどうなっているのか知りたいところだ。
さてそんなこんなで仲間に加わったエヴェリーナだが、見た目はかなり可愛い。耳としっぽがある以外は人間と同じ姿形をしているし、くりくりとした目はどこか子猫を思わせる。そしてばいーんだ。ここでも胸囲の格差社会だなんてひどすぎる! しかも、身長は僕より低いし、年齢もおそらく僕よりも下だろう。なんだろう、魔法も武器も使えてばいーんだなんて、まるで僕の上位互換みたいじゃないか。
ぐぬぬ、これが嫉妬心というものなのだろうか。そのばいーんの秘訣を何としても知らねばなるまい。
しかもなんとなく許せないのが、彼女がかなりの薄着なことだ。早く動く為なのかもしれないけど、簡単な胸当てと手袋、ブーツのみであとはちょっとぴっちりとした服を着ているのだ。おへそも太ももも全開である。野暮ったい皮鎧で全身を覆っている僕とは大違いの露出度だ。しかもそれがいやらしさがなく健康的なイメージを演出するのに役立っている。
さすがにここは僕は真似する勇気はでないけども、アランの視線がちらちらとそちらに寄っているのは若干腹立たしい。
人の着替え覗いておいてそれはないんじゃないかな! って思うけど、男の本能だと思って我慢しよう。
まぁ彼女を誘い入れたのは僕自身だしね。こうしてメンバーを増やした僕らは仕事をこなして街へと戻った。
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