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四章 二つ目の国
夕食を囲む
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「めるふぁさんふぁもごふはへふはあふふぉふ?」
「ちゃんと口の中のもの飲み込んでからしゃべろうねー」
あれから僕たちは無事に仕事を終えて、宿で夕食を取っている。
しかしこの子はどこか天真爛漫というかなんというか、自由な子だ。
「メルタさんはなんで教国にいくのです?」
「どう答えていいのかわからないけど、今のところヤボ用に近いかなぁ」
まさか神さまに愚痴った結果を聞きに行くとは言えない。
多分豊穣神さまが一番の常識神なんだろうなぁ。きっと苦労してるに違いない。
とはいえ、神さまの都合を僕が汲んでやる必要まではないと思うんだ。
人に色々おっかぶせてるんだから優遇ぐらいしてほしいよね。
「それより、本当に3人同室でいいの?」
「大丈夫なのです!」
「たまにアランが覗いたりするけど?」
「おい」
「見られて困るものはないのです!」
うーん、まぁ本人が良いっていうならいいか。アランからの苦情は受付けませーん。
だって事実だし。これを機に反省してほしいよね。
僕たちは食事を終え、食器を下げてから自分の部屋に戻ると明日に備えてさっさと寝る準備を始めた。
「おやすみなさいなのです……ぐぅ」
「早いよ!?」
そんな中、あまり荷物を持っていなかったエヴェリーナが一足先に布団に潜り込むと、すぐに寝息を立てていた。
まさかの早業だ。ちなみに彼女が寝ているのは一番窓側。アランからは一応距離を取ってある。
これはまぁなんというか、僕のわずかな嫉妬心の表れかもしれないけど。
「アランは今後気を付けてね。僕だけならまだいいけど」
「あぁいや、そうだな。気を付ける」
僕だって見られていいわけじゃないけどね。まぁでもその、付き合って? いるわけだし?
ただこう、見られるにしてもそこまで色気がないのが申し訳ない。
あ、自分で言っててなんか悲しくなってきた。
「何一人で落ち込んでんだよ」
「いやー、僕って成長してないなって思って」
「?」
うん、彼はほとんど鎧の恰好しかみてないから気づいてないだろうね。
鎧を買った時からほとんど中身が変化していないことに!
うう、二重で悲しくなる……
豊穣神さまにお願いでもすればよかったんだろうか。あの人もばいーんだったしなぁ。
「ねぇアラン」
「ん?」
「ちょっとこっち」
手招きをして彼を呼び寄せる。ちょっと恥ずかしいけど、たまにはこういう時間も必要だよね。
不思議そうに寄ってきた彼の体を抱きしめる。
ちょっとゴツゴツして大きい体。
「ごめんね、本当はもっと色々できたら、アラン的にはいいのかもしれないけど」
「どっ、ちょっえあっ」
おっと、なんか混乱してる。うん、分かってはいるんだ。一応前世の知識くらいあるからね。だけど、やっぱりそこまではなかなか踏み切れない。だって知識はあっても経験はないんだから。やっぱり怖いんだよ。その分これで我慢してくれればいいんだけど。
しばらく戸惑ったあとに、彼の手が僕の腰に回る。
こうしてみると彼の体格は、はっきりいってかなり良い部類なんだろう。手だって僕よりもかなり大きい。身長も今でこそ近いけどもそう遠くない内に見上げるようになるのだろう。
いやはや、こうしているだけでも正直恥ずかしさが頂点を超えそうだ。
そっと手を戻して彼を押し退ける。サービスタイムは終了だ。
それに従って彼の手も離れていく。
「おやすみ、アラン」
「お、おう」
アランはこう、なんかどぎまぎしているくらいがちょうど良い気がする。初めて出会った時の少年っぽいイメージがそう思わせるのだろうか。実際の彼はもう大分青年に近いというのに。
そんなことを考えながら僕は赤くなった顔を隠すかのように布団へ潜った。
翌日
「メルタとアランはラブラブなのです?」
「ぶっ」
朝食時の一発目からエヴェリーナからぶっこまれた。
思わず口にしていた水を吹き出してしまう。
寝てたんじゃなかったの? この子!
寝息もしてたから油断してたよ。
「いや、まぁその、うん……」
アランはもうそっぽ向いてしまっている。こういう時こそ男気だしてほしかったな。
「それなら私は別の部屋の方が良いのです?」
「いやいやいや、そんな気遣いはいいから! 大丈夫!」
この子大人しそうな顔して微妙に察してる! まだそんなつもりはないし、それに金銭的にも二部屋とるより3人同室の方が安いんだよ。
というか二部屋とるなら男部屋と女部屋にするよ。
「甘い空気はせめて寝てからにしてほしいのです……」
寝てたと思ってたんだってば! エヴェリーナ、もう長いから略してリーナって呼ぶけど、結構言葉遣いの割に毒舌なのかもしれない。
「口の中が甘さでじゃりじゃりになりそうだったのです」
ほらー! 結構打ち込んでくるじゃん! 悪かったね!
「うん、まぁ今後は気をつけるよ……」
「それか銀貨一枚くれたらしばらく外でうろうろしてくるのです」
「そんな気遣いはまだいらないよ!」
「まだ、なのです?」
ぐいぐいくるねこの子!
「もう、そういう話はおしまい。朝ごはん食べて仕事さがそうよ」
なんで僕だけ恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ。彼女を無視して食事を始める。アランはというと、いつのまにか無言で食べ始めていた。この裏切り者め。
こうしてしっちゃかめっちゃかな朝食を終えると、僕達はその日の仕事を探しにギルドへと赴いた。
「ちゃんと口の中のもの飲み込んでからしゃべろうねー」
あれから僕たちは無事に仕事を終えて、宿で夕食を取っている。
しかしこの子はどこか天真爛漫というかなんというか、自由な子だ。
「メルタさんはなんで教国にいくのです?」
「どう答えていいのかわからないけど、今のところヤボ用に近いかなぁ」
まさか神さまに愚痴った結果を聞きに行くとは言えない。
多分豊穣神さまが一番の常識神なんだろうなぁ。きっと苦労してるに違いない。
とはいえ、神さまの都合を僕が汲んでやる必要まではないと思うんだ。
人に色々おっかぶせてるんだから優遇ぐらいしてほしいよね。
「それより、本当に3人同室でいいの?」
「大丈夫なのです!」
「たまにアランが覗いたりするけど?」
「おい」
「見られて困るものはないのです!」
うーん、まぁ本人が良いっていうならいいか。アランからの苦情は受付けませーん。
だって事実だし。これを機に反省してほしいよね。
僕たちは食事を終え、食器を下げてから自分の部屋に戻ると明日に備えてさっさと寝る準備を始めた。
「おやすみなさいなのです……ぐぅ」
「早いよ!?」
そんな中、あまり荷物を持っていなかったエヴェリーナが一足先に布団に潜り込むと、すぐに寝息を立てていた。
まさかの早業だ。ちなみに彼女が寝ているのは一番窓側。アランからは一応距離を取ってある。
これはまぁなんというか、僕のわずかな嫉妬心の表れかもしれないけど。
「アランは今後気を付けてね。僕だけならまだいいけど」
「あぁいや、そうだな。気を付ける」
僕だって見られていいわけじゃないけどね。まぁでもその、付き合って? いるわけだし?
ただこう、見られるにしてもそこまで色気がないのが申し訳ない。
あ、自分で言っててなんか悲しくなってきた。
「何一人で落ち込んでんだよ」
「いやー、僕って成長してないなって思って」
「?」
うん、彼はほとんど鎧の恰好しかみてないから気づいてないだろうね。
鎧を買った時からほとんど中身が変化していないことに!
うう、二重で悲しくなる……
豊穣神さまにお願いでもすればよかったんだろうか。あの人もばいーんだったしなぁ。
「ねぇアラン」
「ん?」
「ちょっとこっち」
手招きをして彼を呼び寄せる。ちょっと恥ずかしいけど、たまにはこういう時間も必要だよね。
不思議そうに寄ってきた彼の体を抱きしめる。
ちょっとゴツゴツして大きい体。
「ごめんね、本当はもっと色々できたら、アラン的にはいいのかもしれないけど」
「どっ、ちょっえあっ」
おっと、なんか混乱してる。うん、分かってはいるんだ。一応前世の知識くらいあるからね。だけど、やっぱりそこまではなかなか踏み切れない。だって知識はあっても経験はないんだから。やっぱり怖いんだよ。その分これで我慢してくれればいいんだけど。
しばらく戸惑ったあとに、彼の手が僕の腰に回る。
こうしてみると彼の体格は、はっきりいってかなり良い部類なんだろう。手だって僕よりもかなり大きい。身長も今でこそ近いけどもそう遠くない内に見上げるようになるのだろう。
いやはや、こうしているだけでも正直恥ずかしさが頂点を超えそうだ。
そっと手を戻して彼を押し退ける。サービスタイムは終了だ。
それに従って彼の手も離れていく。
「おやすみ、アラン」
「お、おう」
アランはこう、なんかどぎまぎしているくらいがちょうど良い気がする。初めて出会った時の少年っぽいイメージがそう思わせるのだろうか。実際の彼はもう大分青年に近いというのに。
そんなことを考えながら僕は赤くなった顔を隠すかのように布団へ潜った。
翌日
「メルタとアランはラブラブなのです?」
「ぶっ」
朝食時の一発目からエヴェリーナからぶっこまれた。
思わず口にしていた水を吹き出してしまう。
寝てたんじゃなかったの? この子!
寝息もしてたから油断してたよ。
「いや、まぁその、うん……」
アランはもうそっぽ向いてしまっている。こういう時こそ男気だしてほしかったな。
「それなら私は別の部屋の方が良いのです?」
「いやいやいや、そんな気遣いはいいから! 大丈夫!」
この子大人しそうな顔して微妙に察してる! まだそんなつもりはないし、それに金銭的にも二部屋とるより3人同室の方が安いんだよ。
というか二部屋とるなら男部屋と女部屋にするよ。
「甘い空気はせめて寝てからにしてほしいのです……」
寝てたと思ってたんだってば! エヴェリーナ、もう長いから略してリーナって呼ぶけど、結構言葉遣いの割に毒舌なのかもしれない。
「口の中が甘さでじゃりじゃりになりそうだったのです」
ほらー! 結構打ち込んでくるじゃん! 悪かったね!
「うん、まぁ今後は気をつけるよ……」
「それか銀貨一枚くれたらしばらく外でうろうろしてくるのです」
「そんな気遣いはまだいらないよ!」
「まだ、なのです?」
ぐいぐいくるねこの子!
「もう、そういう話はおしまい。朝ごはん食べて仕事さがそうよ」
なんで僕だけ恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ。彼女を無視して食事を始める。アランはというと、いつのまにか無言で食べ始めていた。この裏切り者め。
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