異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

文字の大きさ
66 / 79
四章 二つ目の国

狩り

しおりを挟む
「今日は何をしようかね」
「リーナはお肉が食べたいのです」
「そうだねぇ」
 
 僕達ができるのはせいぜいが普通の獣の討伐か、ランクの低い魔獣の討伐だ。
 確かに倒した獣の肉を解体して宿に持っていけば調理してもらえる。
 何度かそうやって食事代を節約したこともあるしね。
 問題はいま掲示されている仕事の中で、お肉になりそうな仕事が軒並み高ランクだということだ。
 この間のトロルみたいな失態は犯したくないから、どうしても尻込みしてしまう。
 さりとてお金も欲しい。どうしたものだろうか……
 
「まぁちょっと冒険するくらいは大丈夫だろ」
 
 後ろから伸びたアランの手が一枚の紙を取る。
 記されているのは魔獣『セリアドネ』の討伐依頼だった。
 描かれている絵姿としては体高が人間の高さほどで翼をもったトカゲといった感じだ。
 それじゃあドラゴンじゃないのかって? 僕の知りうるドラゴンに比べたら小さいし、手足の配置が違うからドラゴンとはまた別だと思うんだ。
 注意点はしっぽの叩き付けと噛みつきだそうで、そこそこ厄介そうだ。
 ランク的にはトロルと同等のものらしく。それでも報酬金額欄には魅力的な数字が並んでいる。
 
「前回のトロルは突発的な遭遇戦ってのもあったからな。準備してこっちから先に仕掛けられたらもっとましなはずだ」
 
 アランが言うのもごもっとも。これはちょっと気合いれないといけないね。
 
「じゃあ今日はこれで行こうか」
 
 受付に行って手続きをする。
 場所はここから二時間ほどの距離にある平原だ。この辺りで目撃情報があるらしく、街に近いからという理由で討伐依頼がでている。
 目的の奴はすぐにみつかった。
 なんというか、雨でぬかるんだ火山灰土で泥浴びでもしているのか、大きな音を立てて地面を転がっている。
 こちらに気づいた気配はない。
 そっと音を立てないように武器の用意をする。今回は遮るものもないからハルバードを思いっきり振りまわせる。
 実物を見てみれば、やはりドラゴンとは程遠い。あえて言うならでっかくて長いウーパールーパーに翼を付けた感じだろうか。
 ウーパールーパーみたいにかわいくないけどね。
 とにかく戦闘方針は、まず突っ込まないと!
 
「行くよっ!」
 
 ハルバードを掲げて駆ける。まずは毒のある尻尾を切断できれば御の字だ。
 背後に気をやればアランが弓をつがえ、リーナが攻撃の準備をしているんのがわかる。
 まずは、一撃!
 起き上がり、こちらに顔を向けたセリアドネの真横を駆け抜け、尻尾に向けて振り下ろす。
 太さが結構あるために一撃で両断することはできなかった。しかし、結構な傷をつけることができたらしく、血がほとばしる。
 同時に攻撃をした僕に向けて、その長い尻尾が振るわれる。
 これは予想できていたから一歩さがってハルバードの柄でガード、思った以上の衝撃に後ずさるが、トロルにぶん殴られた時ほどじゃあない。
 そうこうしているうちに後方からアランが矢を放ち、セリアドネの顔に何本かが突き刺さる。その痛みに悶えているうちに追撃にリーナが走る。
 僕も当然尻尾を先に切断してしまいたいので、先程攻撃した場所に足を向ける。
 
「氷の矢!」
 
 リーナが唱えた魔法で尻尾の先が地面に縫い留められる。
 
「よいしょお!」
 
 あとは思いっきり振りかぶって尻尾の傷口に振り下ろせば、一気に切断完了だ。
 その痛みにセリアドネが叫び声を上げながら暴れまわる。
 尻尾さえ切ってしまえば後は怖いのは噛みつかれることだ。
 出血量だけで乗り切れるかもしれないけど、それまで逃げ回るのも億劫だし、なんとか止めを指したいところ。
 そんな事を考えているうちに、アランが両手剣を手に暴れまわるセリアドネの顔に飛び乗ると、その目に一気に剣を差し込んでいく。
 何度もそれが繰り返されるうちに、呆気なくセリアドネはぬかるみに横たわった。
 
「なんの問題もなかったね」
「ただのでっかいトカゲだったのです」
 
 トロルと同ランクの割にあっさり倒すことができてしまった。
 もうちょっと暴れたり尻尾を振り回してきたり飛んで攻撃とかあるのかと思いきや、終始地面にいたし、そこまでの暴れ具合でもなかった。
 
「話によればこの見た目のは幼体らしいからな。成体になって鱗がつくようになるとそこそこやっかいらしい」
「へぇ」
 
 ハルバードについた血糊を流して解体の準備を始める。
 これだけの巨体だから色々取れそうだね。皮も肉も素材として優秀だそうだし。
 さすがに全身を引きずってもっていくわけにはいかないから、使えるところだけ持っていく形になるけど。
 うーん、これも魚と同じ要領での解体でいいんだろうか。迷っているうちにアランとリーナがどんどんと解体を進めてしまう。
 二人とも手馴れてるなぁ。僕もせめて翼の皮膜とりぐらいはしておこうかな。
 腰に下げている解体用のナイフで翼に刃をいれる。ちょっとぶよぶよしたそれは触っていると中々に心地よい。
 しばらく作業に没頭しているといつの間にかアランが近くにいて驚いた。
 どうやら僕が集中しすぎて気づかない間に、他の部分もある程度終わらせてくれたようだ。
 
「すまんな。こっちも終わったからそろそろ移動するぞ」
「そんな急ぐもの?」
「あっち、見てみろよ」
 
 アランが指さした先にはまた別のセリアドネが地面を這いまわっていた。
 また寄ってこられてもう一戦っていうのは確かに勘弁願いたい。
 僕たちはそうして解体したセリアドネを持てるだけ持ってその場を脱した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

処理中です...