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四章 二つ目の国
狩り
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「今日は何をしようかね」
「リーナはお肉が食べたいのです」
「そうだねぇ」
僕達ができるのはせいぜいが普通の獣の討伐か、ランクの低い魔獣の討伐だ。
確かに倒した獣の肉を解体して宿に持っていけば調理してもらえる。
何度かそうやって食事代を節約したこともあるしね。
問題はいま掲示されている仕事の中で、お肉になりそうな仕事が軒並み高ランクだということだ。
この間のトロルみたいな失態は犯したくないから、どうしても尻込みしてしまう。
さりとてお金も欲しい。どうしたものだろうか……
「まぁちょっと冒険するくらいは大丈夫だろ」
後ろから伸びたアランの手が一枚の紙を取る。
記されているのは魔獣『セリアドネ』の討伐依頼だった。
描かれている絵姿としては体高が人間の高さほどで翼をもったトカゲといった感じだ。
それじゃあドラゴンじゃないのかって? 僕の知りうるドラゴンに比べたら小さいし、手足の配置が違うからドラゴンとはまた別だと思うんだ。
注意点はしっぽの叩き付けと噛みつきだそうで、そこそこ厄介そうだ。
ランク的にはトロルと同等のものらしく。それでも報酬金額欄には魅力的な数字が並んでいる。
「前回のトロルは突発的な遭遇戦ってのもあったからな。準備してこっちから先に仕掛けられたらもっとましなはずだ」
アランが言うのもごもっとも。これはちょっと気合いれないといけないね。
「じゃあ今日はこれで行こうか」
受付に行って手続きをする。
場所はここから二時間ほどの距離にある平原だ。この辺りで目撃情報があるらしく、街に近いからという理由で討伐依頼がでている。
目的の奴はすぐにみつかった。
なんというか、雨でぬかるんだ火山灰土で泥浴びでもしているのか、大きな音を立てて地面を転がっている。
こちらに気づいた気配はない。
そっと音を立てないように武器の用意をする。今回は遮るものもないからハルバードを思いっきり振りまわせる。
実物を見てみれば、やはりドラゴンとは程遠い。あえて言うならでっかくて長いウーパールーパーに翼を付けた感じだろうか。
ウーパールーパーみたいにかわいくないけどね。
とにかく戦闘方針は、まず突っ込まないと!
「行くよっ!」
ハルバードを掲げて駆ける。まずは毒のある尻尾を切断できれば御の字だ。
背後に気をやればアランが弓をつがえ、リーナが攻撃の準備をしているんのがわかる。
まずは、一撃!
起き上がり、こちらに顔を向けたセリアドネの真横を駆け抜け、尻尾に向けて振り下ろす。
太さが結構あるために一撃で両断することはできなかった。しかし、結構な傷をつけることができたらしく、血がほとばしる。
同時に攻撃をした僕に向けて、その長い尻尾が振るわれる。
これは予想できていたから一歩さがってハルバードの柄でガード、思った以上の衝撃に後ずさるが、トロルにぶん殴られた時ほどじゃあない。
そうこうしているうちに後方からアランが矢を放ち、セリアドネの顔に何本かが突き刺さる。その痛みに悶えているうちに追撃にリーナが走る。
僕も当然尻尾を先に切断してしまいたいので、先程攻撃した場所に足を向ける。
「氷の矢!」
リーナが唱えた魔法で尻尾の先が地面に縫い留められる。
「よいしょお!」
あとは思いっきり振りかぶって尻尾の傷口に振り下ろせば、一気に切断完了だ。
その痛みにセリアドネが叫び声を上げながら暴れまわる。
尻尾さえ切ってしまえば後は怖いのは噛みつかれることだ。
出血量だけで乗り切れるかもしれないけど、それまで逃げ回るのも億劫だし、なんとか止めを指したいところ。
そんな事を考えているうちに、アランが両手剣を手に暴れまわるセリアドネの顔に飛び乗ると、その目に一気に剣を差し込んでいく。
何度もそれが繰り返されるうちに、呆気なくセリアドネはぬかるみに横たわった。
「なんの問題もなかったね」
「ただのでっかいトカゲだったのです」
トロルと同ランクの割にあっさり倒すことができてしまった。
もうちょっと暴れたり尻尾を振り回してきたり飛んで攻撃とかあるのかと思いきや、終始地面にいたし、そこまでの暴れ具合でもなかった。
「話によればこの見た目のは幼体らしいからな。成体になって鱗がつくようになるとそこそこやっかいらしい」
「へぇ」
ハルバードについた血糊を流して解体の準備を始める。
これだけの巨体だから色々取れそうだね。皮も肉も素材として優秀だそうだし。
さすがに全身を引きずってもっていくわけにはいかないから、使えるところだけ持っていく形になるけど。
うーん、これも魚と同じ要領での解体でいいんだろうか。迷っているうちにアランとリーナがどんどんと解体を進めてしまう。
二人とも手馴れてるなぁ。僕もせめて翼の皮膜とりぐらいはしておこうかな。
腰に下げている解体用のナイフで翼に刃をいれる。ちょっとぶよぶよしたそれは触っていると中々に心地よい。
しばらく作業に没頭しているといつの間にかアランが近くにいて驚いた。
どうやら僕が集中しすぎて気づかない間に、他の部分もある程度終わらせてくれたようだ。
「すまんな。こっちも終わったからそろそろ移動するぞ」
「そんな急ぐもの?」
「あっち、見てみろよ」
アランが指さした先にはまた別のセリアドネが地面を這いまわっていた。
また寄ってこられてもう一戦っていうのは確かに勘弁願いたい。
僕たちはそうして解体したセリアドネを持てるだけ持ってその場を脱した。
「リーナはお肉が食べたいのです」
「そうだねぇ」
僕達ができるのはせいぜいが普通の獣の討伐か、ランクの低い魔獣の討伐だ。
確かに倒した獣の肉を解体して宿に持っていけば調理してもらえる。
何度かそうやって食事代を節約したこともあるしね。
問題はいま掲示されている仕事の中で、お肉になりそうな仕事が軒並み高ランクだということだ。
この間のトロルみたいな失態は犯したくないから、どうしても尻込みしてしまう。
さりとてお金も欲しい。どうしたものだろうか……
「まぁちょっと冒険するくらいは大丈夫だろ」
後ろから伸びたアランの手が一枚の紙を取る。
記されているのは魔獣『セリアドネ』の討伐依頼だった。
描かれている絵姿としては体高が人間の高さほどで翼をもったトカゲといった感じだ。
それじゃあドラゴンじゃないのかって? 僕の知りうるドラゴンに比べたら小さいし、手足の配置が違うからドラゴンとはまた別だと思うんだ。
注意点はしっぽの叩き付けと噛みつきだそうで、そこそこ厄介そうだ。
ランク的にはトロルと同等のものらしく。それでも報酬金額欄には魅力的な数字が並んでいる。
「前回のトロルは突発的な遭遇戦ってのもあったからな。準備してこっちから先に仕掛けられたらもっとましなはずだ」
アランが言うのもごもっとも。これはちょっと気合いれないといけないね。
「じゃあ今日はこれで行こうか」
受付に行って手続きをする。
場所はここから二時間ほどの距離にある平原だ。この辺りで目撃情報があるらしく、街に近いからという理由で討伐依頼がでている。
目的の奴はすぐにみつかった。
なんというか、雨でぬかるんだ火山灰土で泥浴びでもしているのか、大きな音を立てて地面を転がっている。
こちらに気づいた気配はない。
そっと音を立てないように武器の用意をする。今回は遮るものもないからハルバードを思いっきり振りまわせる。
実物を見てみれば、やはりドラゴンとは程遠い。あえて言うならでっかくて長いウーパールーパーに翼を付けた感じだろうか。
ウーパールーパーみたいにかわいくないけどね。
とにかく戦闘方針は、まず突っ込まないと!
「行くよっ!」
ハルバードを掲げて駆ける。まずは毒のある尻尾を切断できれば御の字だ。
背後に気をやればアランが弓をつがえ、リーナが攻撃の準備をしているんのがわかる。
まずは、一撃!
起き上がり、こちらに顔を向けたセリアドネの真横を駆け抜け、尻尾に向けて振り下ろす。
太さが結構あるために一撃で両断することはできなかった。しかし、結構な傷をつけることができたらしく、血がほとばしる。
同時に攻撃をした僕に向けて、その長い尻尾が振るわれる。
これは予想できていたから一歩さがってハルバードの柄でガード、思った以上の衝撃に後ずさるが、トロルにぶん殴られた時ほどじゃあない。
そうこうしているうちに後方からアランが矢を放ち、セリアドネの顔に何本かが突き刺さる。その痛みに悶えているうちに追撃にリーナが走る。
僕も当然尻尾を先に切断してしまいたいので、先程攻撃した場所に足を向ける。
「氷の矢!」
リーナが唱えた魔法で尻尾の先が地面に縫い留められる。
「よいしょお!」
あとは思いっきり振りかぶって尻尾の傷口に振り下ろせば、一気に切断完了だ。
その痛みにセリアドネが叫び声を上げながら暴れまわる。
尻尾さえ切ってしまえば後は怖いのは噛みつかれることだ。
出血量だけで乗り切れるかもしれないけど、それまで逃げ回るのも億劫だし、なんとか止めを指したいところ。
そんな事を考えているうちに、アランが両手剣を手に暴れまわるセリアドネの顔に飛び乗ると、その目に一気に剣を差し込んでいく。
何度もそれが繰り返されるうちに、呆気なくセリアドネはぬかるみに横たわった。
「なんの問題もなかったね」
「ただのでっかいトカゲだったのです」
トロルと同ランクの割にあっさり倒すことができてしまった。
もうちょっと暴れたり尻尾を振り回してきたり飛んで攻撃とかあるのかと思いきや、終始地面にいたし、そこまでの暴れ具合でもなかった。
「話によればこの見た目のは幼体らしいからな。成体になって鱗がつくようになるとそこそこやっかいらしい」
「へぇ」
ハルバードについた血糊を流して解体の準備を始める。
これだけの巨体だから色々取れそうだね。皮も肉も素材として優秀だそうだし。
さすがに全身を引きずってもっていくわけにはいかないから、使えるところだけ持っていく形になるけど。
うーん、これも魚と同じ要領での解体でいいんだろうか。迷っているうちにアランとリーナがどんどんと解体を進めてしまう。
二人とも手馴れてるなぁ。僕もせめて翼の皮膜とりぐらいはしておこうかな。
腰に下げている解体用のナイフで翼に刃をいれる。ちょっとぶよぶよしたそれは触っていると中々に心地よい。
しばらく作業に没頭しているといつの間にかアランが近くにいて驚いた。
どうやら僕が集中しすぎて気づかない間に、他の部分もある程度終わらせてくれたようだ。
「すまんな。こっちも終わったからそろそろ移動するぞ」
「そんな急ぐもの?」
「あっち、見てみろよ」
アランが指さした先にはまた別のセリアドネが地面を這いまわっていた。
また寄ってこられてもう一戦っていうのは確かに勘弁願いたい。
僕たちはそうして解体したセリアドネを持てるだけ持ってその場を脱した。
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