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四章 二つ目の国
死線2
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「ごほっごふっ」
意識を取り戻したのは、どうやら宿に戻ってきてかららしい。
ベッドに寝かされ、傍には水野入った桶と、恐らく僕の血を拭ったであろう布が散乱していた。
なんというか、全身が痺れるように痛い。そして抑え込むようにしているけれども、強烈な吐き気だ。
これは確実に、毒もらっちゃったかなあ。
「メルタ、起きたのです?」
声の方を見ると、心配そうに見つめるリーナがいた。
その手には水差しがあり、僕の為に水を汲んでくれたようだ。
「ありが……とう……」
何とか絞り出すような声でお礼を言うと、彼女は安心したのかほぅっと息を吐き出す。
「アランは毒抜きの草を取りに走っているのです。ただ、一応伝えるのですが、メルタはすごく危険なのです」
それは毒的な意味だろうか、それとも一人で突っ走り気味に攻撃をしたことだろうか。
「今メルタが思ってること全部なのです。毒については回復用の魔法をかけ続けてやっと保ってるぐらいなのです」
それは、なかなか面白くない状況だ。いずれにせよリーナはあれから僕について魔法をかけていてくれたのだろう。
「ごめんね……」
「メンバーは協力しあうものなのです。たまたまメルタが狙われて偶々毒を浴びちゃっただけなのです」
そういうと僕の口に水を含ませてくれる。
口の中のぬるりとした鉄の味がすこし抜けてさっぱりする。
ただ、喉の奥まで爛れているのか、それとも大量に毒を浴びたのかわからないけれどまだむせてしまう。
それでもなんとか少しずつ飲み込んでいく。
それを何度か繰り返しているうちに大分楽になった気がする。
「とりあえず、少し休むといいのです」
毒抜きって魔法はないの、かな。
「万能な毒消しの魔法はないのです。しかも今回はスキルの毒なので薬草ぐらいしか対処ができないのです」
なるほどね、多分蛇の毒とか蜘蛛の毒とか個別の毒はなんとかできるのだろう。今回は運が悪すぎたということか。
なんか毎回強敵に出会う旅に痛い目に合ってるような気がするのは僕の気のせいだろうか。
まぁ、いいや。今はとにかく休もう。
目を閉じればすぐに眠りに落ちていく。
そのまましばらく眠っていたのだろうか。
目を開けると部屋の中はまだ薄暗かった。
窓の外を見てみると日が昇ってきたばかりなのか空がまだ白み始めたばかりだった。
「起きたですか? もう少しで薬が出来るみたいなので待っていて欲しいのです」
いつの間に帰ってきていたのか、隣の椅子に座っていたリーナに声をかけられる。
彼女は寝ずに僕の様子を見てくれていたのだろう。その白い顔にはクマが目立つようになってしまっていた。
そんな彼女をみて僕は大丈夫だと伝えようと体を起こそうとするも、途端に走る激痛に思わずうずくまる。
全身を有刺鉄線で巻かれているかのような痛みに脂汗が流れた。
正直かなりまずい状態なのは自分でもよくわかる。
リーナはそれを察してくれたのか、再び横になるように促してくれる。
それに甘えて体を横にすると、先程よりはかなり楽になった。
でもやはり動くことはできそうもない。
こんな時にも自分の弱さを実感させられるとは思わなかったよ……。
思えば病気らしい病気のような状態になったのも、この世界にきて初めてだ。
あの絶対疫病になりそうな牛小屋でも無事に生き延びられたのに、まさか毒でダウンだなんて思いもしなかったよ。
そんなことを考えながらうつらうつらとしていると、ドアをノックする音が聞こえる。
「入るぞ」
アランの声だった。
入ってきた彼は手に小瓶を持っていた。
そしてそれを僕に差し出してくる。
「解毒剤だ。飲めば多少動けるようになるはずだ」
「ありがとう」
中には緑色の液体が入っていた。それを一気に口に含む。
苦っ! これめちゃくちゃ苦いんですけど!? ︎
慌てて水差しを口に運んで、一気に流し込む。
そんな僕を見て少し安心したのか、アランが僕の横のベッドに座り込む。
「今回は焦ったぜ…… これでリーナが居なかったら本気でまずかった」
きっと薬のために東奔西走してくれたのだろう。
アランの顔には疲れの色が濃い。
申し訳ないことをしたと思うと同時に、彼のおかげで助かったことを改めて認識させられた。
「ほんとに、ありがとう」
「気にすんなって。それよりリーナ、メルタはどうだ?」
リーナは心配げに僕の顔を覗き込むと、ほっとしたように胸を撫で下ろす。
「大丈夫だと思うのです。毒の力さえ弱まれば、回復魔法でゴリ押しできるのです」
そういって再び僕に魔法をかけてくれる。
先程までの痺れの様な痛みが少しづつ引いていく。
「後は大人しくしていればなんとかなるのです」
「わかった。俺らはギルドに行って報告してこよう」
リーナは僕に布団をかけると、アランと共に部屋を出て行った。
二人を見送ってから再びベッドに身を預けると、全身の脱力感とともに鉛のような眠りがやってきた。
意識を取り戻したのは、どうやら宿に戻ってきてかららしい。
ベッドに寝かされ、傍には水野入った桶と、恐らく僕の血を拭ったであろう布が散乱していた。
なんというか、全身が痺れるように痛い。そして抑え込むようにしているけれども、強烈な吐き気だ。
これは確実に、毒もらっちゃったかなあ。
「メルタ、起きたのです?」
声の方を見ると、心配そうに見つめるリーナがいた。
その手には水差しがあり、僕の為に水を汲んでくれたようだ。
「ありが……とう……」
何とか絞り出すような声でお礼を言うと、彼女は安心したのかほぅっと息を吐き出す。
「アランは毒抜きの草を取りに走っているのです。ただ、一応伝えるのですが、メルタはすごく危険なのです」
それは毒的な意味だろうか、それとも一人で突っ走り気味に攻撃をしたことだろうか。
「今メルタが思ってること全部なのです。毒については回復用の魔法をかけ続けてやっと保ってるぐらいなのです」
それは、なかなか面白くない状況だ。いずれにせよリーナはあれから僕について魔法をかけていてくれたのだろう。
「ごめんね……」
「メンバーは協力しあうものなのです。たまたまメルタが狙われて偶々毒を浴びちゃっただけなのです」
そういうと僕の口に水を含ませてくれる。
口の中のぬるりとした鉄の味がすこし抜けてさっぱりする。
ただ、喉の奥まで爛れているのか、それとも大量に毒を浴びたのかわからないけれどまだむせてしまう。
それでもなんとか少しずつ飲み込んでいく。
それを何度か繰り返しているうちに大分楽になった気がする。
「とりあえず、少し休むといいのです」
毒抜きって魔法はないの、かな。
「万能な毒消しの魔法はないのです。しかも今回はスキルの毒なので薬草ぐらいしか対処ができないのです」
なるほどね、多分蛇の毒とか蜘蛛の毒とか個別の毒はなんとかできるのだろう。今回は運が悪すぎたということか。
なんか毎回強敵に出会う旅に痛い目に合ってるような気がするのは僕の気のせいだろうか。
まぁ、いいや。今はとにかく休もう。
目を閉じればすぐに眠りに落ちていく。
そのまましばらく眠っていたのだろうか。
目を開けると部屋の中はまだ薄暗かった。
窓の外を見てみると日が昇ってきたばかりなのか空がまだ白み始めたばかりだった。
「起きたですか? もう少しで薬が出来るみたいなので待っていて欲しいのです」
いつの間に帰ってきていたのか、隣の椅子に座っていたリーナに声をかけられる。
彼女は寝ずに僕の様子を見てくれていたのだろう。その白い顔にはクマが目立つようになってしまっていた。
そんな彼女をみて僕は大丈夫だと伝えようと体を起こそうとするも、途端に走る激痛に思わずうずくまる。
全身を有刺鉄線で巻かれているかのような痛みに脂汗が流れた。
正直かなりまずい状態なのは自分でもよくわかる。
リーナはそれを察してくれたのか、再び横になるように促してくれる。
それに甘えて体を横にすると、先程よりはかなり楽になった。
でもやはり動くことはできそうもない。
こんな時にも自分の弱さを実感させられるとは思わなかったよ……。
思えば病気らしい病気のような状態になったのも、この世界にきて初めてだ。
あの絶対疫病になりそうな牛小屋でも無事に生き延びられたのに、まさか毒でダウンだなんて思いもしなかったよ。
そんなことを考えながらうつらうつらとしていると、ドアをノックする音が聞こえる。
「入るぞ」
アランの声だった。
入ってきた彼は手に小瓶を持っていた。
そしてそれを僕に差し出してくる。
「解毒剤だ。飲めば多少動けるようになるはずだ」
「ありがとう」
中には緑色の液体が入っていた。それを一気に口に含む。
苦っ! これめちゃくちゃ苦いんですけど!? ︎
慌てて水差しを口に運んで、一気に流し込む。
そんな僕を見て少し安心したのか、アランが僕の横のベッドに座り込む。
「今回は焦ったぜ…… これでリーナが居なかったら本気でまずかった」
きっと薬のために東奔西走してくれたのだろう。
アランの顔には疲れの色が濃い。
申し訳ないことをしたと思うと同時に、彼のおかげで助かったことを改めて認識させられた。
「ほんとに、ありがとう」
「気にすんなって。それよりリーナ、メルタはどうだ?」
リーナは心配げに僕の顔を覗き込むと、ほっとしたように胸を撫で下ろす。
「大丈夫だと思うのです。毒の力さえ弱まれば、回復魔法でゴリ押しできるのです」
そういって再び僕に魔法をかけてくれる。
先程までの痺れの様な痛みが少しづつ引いていく。
「後は大人しくしていればなんとかなるのです」
「わかった。俺らはギルドに行って報告してこよう」
リーナは僕に布団をかけると、アランと共に部屋を出て行った。
二人を見送ってから再びベッドに身を預けると、全身の脱力感とともに鉛のような眠りがやってきた。
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