異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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四章 二つ目の国

反省会と新しい鎧

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「反省その1、僕が回避とか考えずに突っ込みすぎた」
 
 今ボクたちは大まかに夕食を終えて、つまみとエールと共に今回の一件の反省会をしていた。まぁ悪いのは主に僕だけど。
 
「反省その2、敵の脅威判定が遅かった」
 
 これはアランだ。でもあんな見分けが付きづらいのを後からでも気づけたほうがすごいと思う。
 
「反省その3、魔法の選定がうまくできなかったのです」
 
 こっちはリーナだ。確かに魔法はその時その場に合わせた魔法をとっさに思い浮かべて使わないといけない。これはどちらかというと知識量とかそういう話になってくるのかもね。
 
「反省その4、毒持ちって分かってるのに接近戦」
 
 言わずもがな僕だ。咄嗟に距離をとって魔法戦に変更しておけば今回みたいなことはおこらなかった。ハルバードぐらいの重量なら鱗くらいなんとかなると軽く考えた報いだね。
 
「反省その5、こういう事態を想定してのアイテムの用意ができてなかった」
 
 これは確かにその通りだ。傷薬や道中の万が一食事に当たった時の薬などは用意していたが、汎用的な毒抜きの薬がすっぽぬけていた。これは僕達の経験不足の所為とも言えるだろう。
 
「総評、もうちょっと準備は万全に、全員とも戦況を俯瞰視できるようにする」
 
 最後にまとめたアランの声にみんなで頷く。
 
「まぁいろんな原因があったとはいえ、最終的に全員無事になってホッとしたぜ」
「メルタの一件で一番慌ててたのはアランなのです」
 
 その状態が目に浮かぶよ。それでも体に鞭打って毒抜きの薬を用意しに走り回ってくれたんだから、感謝しかないね。
 
「何にせよ、みんなありがとう。おかげで無事こうして生きてられるよ」
 
 二人のジョッキに僕のジョッキを合わせる。
 
「とりあえず金銭的にはプラスだし、成体の素材が手に入ったから、武具屋のおっちゃんに頭さげて素材変更で作ってもらってる。あと魔獣化してたからな、当然スキル石もあったわけで」
 
 そう言いながらアランが腰袋から一握りほどの石を取り出す。紫のきれいに透き通った石だ。
 
「毒吐きの石だ。かなりの高額になるぞ、これは」
 
 本来毒系統のスキルをもつ魔獣はかなり少ない。何故なら大体が毒そのものを生来持ち合わせている事が多いからだ。その時点で希少さから値が張る上に、このスキル石にはもう一つ特徴がある。それは毒を吐くという特性上持つ、毒を防ぐという効能だ。しかもその範囲はかなり幅広い。小爪程度の大きさでも器一杯の毒を消し得るのだから、それが拳大の大きさなのだから金銭的にはかなりのものになるだろう。
 
「で、使い道の相談なんだが、俺としては一部を砕いて新しい鎧に埋め込んでもらって毒耐性をもたせた鎧にするのはどうかなって思うんだが、どうよ」
 
 スキル石は砕いてもその効能は失わないらしい。回数が変わる程度で機能は遜色ないとなれば、今回みたいないざという時のための備えとしてアランの考えはありだと思う。
 
「僕は賛成かな、毒食らった本人だからっていうのもあるけど、なかなか辛かったし」
「リーナも賛成なのです。一応薬を準備するといってもいつでも確実に用意できるかはわからないのです」
 
 当然というか全員意見は一致していた。
 
「そんじゃあこの石は明日武具屋のおっちゃんに砕いてもらって、残りはどうするよ」
「僕は一旦持っておく方が良いかな、売れるっていっても誰を相手に売るかで値段が大きくかわりそうな気がするし、それなら帝国に行ってからでもいいと思うんだ」
「リーナもそう思うのです。売るにしてもいくつか残しておけばとっておきになるのです」
「んーじゃあ当面は俺が保管しておくことにしてっと……後は今後の方針だが、お前らは何かあるか?」
 
 今後の方針ねぇ……。正直今は頭が回らないというのが本音だったりするんだけど、それは言えないよね。
 
「とりあえず鎧を受け取って、慣らしに仕事して…… って感じかなぁ」
「特に思い浮かぶものがないのです」
「んだな。船が出るまでまだまだあるしゆっくりできるっちゃできるし気長に仕事でもするか」
「そうだね。僕たちもお金はあるとはいえ、そんなに余裕がある訳じゃないもんね」
 
 結局はそういう結論になった。何せこの世界は何かとお金がかかる。前世の金銭事情と照らし合わせても割がおかしいって思うくらいには色々と高価なのだ。お金はあるに越したことはない。
 
「んじゃそういうことで、今日はこの辺にしとくか」
「うん。また明日から頑張ろう」
「なのですよ」
 
 こうして反省会は終わり、その後はいつものように雑談しながらの飲み会となった。
 翌日、朝早くに目覚めた僕たちは早速鎧を受け取りに行くことにした。
 
「おはようございます」
 
 相変わらずの店番のおっちゃんに声をかけると、奥から先日と同じ人が顔を出した。
 
「おう、来たか。こっちだ」
 
 案内された部屋に入るとすでに鎧はできていた。
 ずらりと並べられた三つの鎧はそれだけで壮観だ。
 金属の補強具に囲まれた鱗が薄紫に輝く。
 なんとも見事な逸品だった。
 
「先に受けてた方の鎧はこっちで売り出す用つーことで素材含め全部買取りしてやらぁ、他に何かあるか?」
「このスキル石砕いて埋め込みとかはできますか?」
 
 アランが腰袋から出したスキル石をおじさんに見せる。
 
「毒吐きか。そうだな…… また1日貰うが問題ない。ただこんだけデカイとそれなりの金になりそうだが、本当に砕いていいんだな?」
「お願いします」
「おう、そんならまた1日預かるぜ」 
 
 再び奥に戻っていくおじさんを後目に新しい鎧をながめる。
 所々に金属で補強された鎧は、外からの光でキラキラと瞬いている。
 デザインも今の革鎧の時と特に変わって、僕の分は膝までのスカートの様な形になっていた。全体の見た目も鱗の部分と革の部分、そして金属部のバランスが絶妙でトルソーに飾られているのを見ているとまるで騎士の鎧のようだ。
 特にアランの鎧は重厚そうにみえて、これで兜を被れば歴戦の戦士のように見えもするだろう。
 リーナの分は軽装を重視しているらしく、本当に大事な所だけを鱗と金属で覆ったような形だ。中に着る服を選ばないと大変な事になりそうだけど。
 
「いつまでもここにいたら邪魔になるし、一旦戻ろうぜ」
 
 見惚れている僕に入り口から声がかかる。
 アランの言うことも尤もだ。
 後ろ髪を引かれながら武具屋を去り、僕達はギルドへと足を運んだ。
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