異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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四章 二つ目の国

何事だったのか

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 翌日、ギルドに仕事を探しに行った僕らは受付嬢に呼び止められた。
 どうやら昨日の件で話があるらしく、ギルマスが直接会って話がしたいとのこと。
 
「連日君たちを呼び出すことになるとは、なかなか君たちも巡り合わせが良いのか悪いのか」
「今までの出来事的に悪い方だと思いますよ」
 
 厄介事には関わりたく無いのに向こうから異世界転生のトラックばりに突っ込んでくるんだから致し方がない。
 今日だって出来れば何事も無かったかの様に仕事を受けておしまいにしたかったのにこれだ。
 この世界に運の神さまとかいたら絶対部屋の隅っこに追い詰めて問い詰めたいね。
 
「で、昨日のアレがなんだかわかるかね」
「ギルドのお偉いさんにわからないものが一介の冒険者に解ると思います?」
「いやなに、件の奴は君を狙っていたそうだし、倒したのも君らしいじゃないか。しかも見た事のない魔法を使ってだ」
 
 そこまで伝わってしまっているのか。まぁあれだけ人が集まってしまっていたら噂になってしまっても仕方ない。
 とはいえ、ここはどう誤魔化したもんだろうか。
 
「言いたくなければそれはそれで構わない。何せ本来冒険者には詮索はご法度だからな。ただ、今後同様のモノが現れた時の対策をしなければならん立場上、出来れば教えてほしい」
 
 これは悩ましい。僕の光の剣が未確認の魔法になっている点はまだいいけど、問題はおそらく再現性がないことだ。
 もし似ている魔法があれば良いのだけど……
 
「何故僕が狙われたのかは、わかりません。あの魔法については、神さまに加護を頂く際に一緒に頂いたもので、恐らく再現ができません。もし他に光に関わる魔法があればそれで対処ができるかもしれませんが」
 
 ウソは言っていない。本当の事も話てはいないけどね。
 
「成程、光となると光明神の魔法であれば可能かもしれんな。協力感謝する」
「深くは、聞かないんですか?」
「さっきも言っただろう。冒険者に詮索はご法度だ。君は答えられる情報の中で真摯に答えてくれた。それで十分だ」
 
 見た目は顔も傷だらけで怖いおっちゃんだが、中身はそうでもないらしい。
 なんというかこう、粋? みたいなものを感じる。
 
「ありがとうございます」
「構わんよ。では本題に入ろう。まずはこの度の魔獣、いや魔物と呼ぼうか。それの討伐に関しての報酬金についてだ。突発的な出来事とはいえ、正体不明の敵を退けた功績と情報には報いねばならん」
 
 言葉と共に小さな革袋が差し出される。 
 
「金貨2枚だ、半ばお互いの口封じに近いものだがね」
 
 つまり、僕の知り得ている事もそこらで喋るなということだ。ギルドが何処かから得た情報ということにして、上手いこと僕の存在を隠してくれるつもりらしい。
 
「僕達からは、何も。ありがたくいただきます。あと此方が件のスキル石です。ご確認ください」
 
 僕が渡した革袋の中身を見てマスターが鷹揚に頷く。
 
「それから、前回の件も合わせて君たちには銀級への昇格を認めよう。後ほど下の受付で受け取るが良い。銀級の証なら大体の街や国境で時間を取られる事はなかろう」
 
 その発言に僕は邪推してしまう。
 この人は何かを知っているのではないか、と。
 
「君たちの移動の経歴位は知っているからな。短期間で彼方此方へ移動しているのなら、態々検問で時間を取られるのも煩わしかろう」
 
 ただの親切心、なのだろうか。どこまで信じていいのやら掴みかねる。
 
「また、今後何かあれば頼ってくれると嬉しい。こちらからお願いする事もあるかもしれんしな」
 
 こうして僕はまた一つ厄介事を片付けた訳なのだが、正直面倒事は勘弁してほしいところである。
 その日の夜。
 いつものように3人で食卓を囲む中、ふと思い出したかのようにリーナが疑問を口にした。
 
「メルタの旅の理由を教えてほしいのです」
「話せば長くなるんだけど……」
「リーナは話が長いと眠くなるのです」
 
 ホントこの子良い根性してるなぁ……
 とはいえ何時までも内情を話さないのも仲間内で揉める原因にもなるだろうし、これまでの事を掻い摘んで話す。
 
「メルタはもう厄介事の星の下に生まれてるとしか思えないのです」
 
 それは僕もそう思ってきてたところだよ。何か呪いにでもかかってるんじゃなかろうか。
 
「この先僕らと一緒に来るならその厄介事に巻き込まれることになるよ。それでも、一緒にくる?」
「世界を旅する方がブロルを見つけられるかもしれないのです。それにここまで足突っ込んで抜けたら後が気になって仕方なくなるのです」
 
 リーナが即答する。何だかんだで彼女も頼りになるから今抜けられるとまた困ってただろうから、その気持ちはとても有り難い。
 
「あと、メルタとアランの行く末も気になるので、ここで抜けたら夜も寝られなくなるのです」
 
 知ってた。そういうの大好きみたいだもんね、リーナ。
 これで仲間は3人。予定からまた変わっちゃったけど、これからの旅はきっと退屈しない事だろう。
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