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四章 二つ目の国
厄介ごと
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「3日連続で君たちの姿を見ることになるとは、思わなかったな」
「僕達もそんなことは想定していませんでしたよ」
ギルドの別室、そこで僕達はことのあらましをギルドマスターに説明していた。
なんなんだろうね、本当に僕は厄介ごとの星の下にでも生まれたんだろうか。
「で、それが例の首飾りか」
テーブルには僕達があのオークから回収した首飾りが載っている。
「オークが暴れていた、か。オークの村に使者をやって近辺を再度調査してみるが、その結果については何もいえんぞ」
まぁ仮に分からなかったらそれはそれでいいんだけど、それよりもそのオークがなぜあんなところにいて、暴れていたのかを知りたい。
「オークが暴れるとはあまり聞いたことはないが…… ゴブリンの野営地が想定よりも大きかったのも、それと関連性があるのかもしれんな。何れにせよ、調査にはそれなりに時間がかかる」
そりゃ今日明日での解決とはこちらも考えてはいない。問題は僕達の船の時間までに解決するかどうかだ。
「わかりました。もし進展があれば教えてください」
「ああ、あまり期待しないほうがいいと思うぞ」
そう言ってギルマスは部屋から出ていった。
「さて、これからどうしようかな」
あの後一帯にゴブリンが残っていないのを確認して戻ってきたので、依頼は達成されたといっていい。その代わりにこの厄介ごとを抱え込んでしまったわけだけれども。
「言って何かできるわけでもねぇしな。大人しく飯食って寝ようぜ」
アランの言葉に従ってギルドを出れば、空はすでに真っ黒だ。
「それにしてもリーナは咄嗟の判断がすごいね」
「リーナはブロルから、迷いは命取りだって教わったのです」
それは確かに正しい。あの場でもしアランと二人だったら、僕は迷って何の判断も下せずにトロルのときの二の舞いになっていたかもしれない。
それにしてもセリアドネの件にしても昨日の黒い変なのにしても今日のゴブリンキングにしても、連日厄介ごとに巻き込まれてるきがする。
この街自体がきな臭いのか、僕が原因なのかはわからないけどもただ事じゃあない。
明日から依頼の内容は今まで以上に精査していかないと、それこそ命取りになるかもしれない。
そうこうしている内に宿にたどり着けば早々にご飯だ。
「メルタは食べないから細っこいのです」
ご飯中にリーナから辛辣な一言が飛ぶ。
そんな事言われても僕の胃の容量的にはこれで精一杯なんだよね。
絶対アランとリーナが食べすぎなだけだと思う。
「オスはメスの目立つところに目がいくのです。ボン・キュッ・ボンは正義なのです」
「えぇ…… 今日は一体どうしたのリーナは」
「アランとメルタの距離がもう見ててあっまあまなのに何も無いのがもどかしいのです」
いやいやいや、そんな事言われても困る。
大体そんな事してたらリーナは部屋にいられないんじゃないの?
「きっとメルタの体が細っこくて物足りないのが原因なのでーーーーあいたたた」
余計な一言を言いかけたリーナのほっぺたを摘み上げる。えぇい好きで細っこい訳じゃないんだっての。僕だって見栄えがするっていう意味でもボン・キュッ・ボンに憧れはするけど、前世も今もそうならないんだから仕方ないじゃないか。
それにおっきいと動きにくいとも聞くから、きっと今の僕は最適化された結果なんだ。そう信じたい。
ちらりと視線をアランにやると、彼は何も聞こえていないとばかりにご飯に目線を落としていた。
「アランもいってやるのです。もうちょっともみーーーーあいたたたた」
更にいらないことを言い続けるリーナを今度は両手で頬を摘む。ええい自分が持ってるからって偉そうにー!
「俺は、別に、今のままでいいと思う」
ほーらみろ、僕にだって需要はあるんだい。
言ってて若干悲しくはなるけど、アランがそういうんだから問題ない!
「まだヒリヒリするのです…… でも油断してるといつか横からボン・キュッ・ボンにさらわれるのですよ……」
油断っていったってねぇ。できることは少ないし、どうしたらアラン的に良いのかなんてわからないから致し方ない。
まぁかといってガツガツ来られたら僕はドン引きしそうな気がするし。
「そういうリーナはどうなのさ」
「リーナはブロルにぞっこんなのです」
あぁ、助けてくれた人に惚れた系なのか。でも結構小さいときから育ててくれたっていうからそこそこ良い年の人なんじゃなかろうか。
「出会ったらすぐに交わうのです」
「ぶふっ」
思いっきりエールを吹いてしまった。
ちょっとあまりにも直球すぎる。
「メルタ、ばっちぃのです……」
真正面にいたリーナにそれなりに飛んでしまったらしい。
「ごめんごめん、でももうちょっと言葉をぼやかしてね……」
「? やることやらないと子孫繁栄にならないのです」
そりゃそうだけれども、TPOというものがあるじゃないか。
アランなんて顔真っ赤だよ。
「メルタは違うのですか?」
「え、あ、その……」
「……ま、ゆっくりでいいんじゃないか、そういうのは」
なんとかアランの絞り出した言葉はそれだけだった。
「ん、そだね」
気まずくなってしまった空気を誤魔化すように食事に集中する。
リーナは相変わらず不思議そうな顔をしている。
「メルタに目的があるのはしっているのです。だから子孫がまだいらないなら海綿でもーーーー」
「ストップストーップ! そういうのはせめてアランのいないところで話そう」
明け透けというかなんというか、リーナの感性はちょっと不思議だ。普通こういうのは恥ずかしかったり照れたりするもんだと思うんだけど。
「わかったのです」
素直なのは良いことだけども、少しくらい恥じらいというものを持って欲しい。
というか話に巻き込まれた僕が一方的に恥ずかしい思いをしてるんじゃないだろうか。
「じゃあそろそろ寝ようかな」
食べ終わった僕は席を立つ。
「おう、おやすみ」
こうして今日もまた慌ただしい一日が終わっていくのだった。
「僕達もそんなことは想定していませんでしたよ」
ギルドの別室、そこで僕達はことのあらましをギルドマスターに説明していた。
なんなんだろうね、本当に僕は厄介ごとの星の下にでも生まれたんだろうか。
「で、それが例の首飾りか」
テーブルには僕達があのオークから回収した首飾りが載っている。
「オークが暴れていた、か。オークの村に使者をやって近辺を再度調査してみるが、その結果については何もいえんぞ」
まぁ仮に分からなかったらそれはそれでいいんだけど、それよりもそのオークがなぜあんなところにいて、暴れていたのかを知りたい。
「オークが暴れるとはあまり聞いたことはないが…… ゴブリンの野営地が想定よりも大きかったのも、それと関連性があるのかもしれんな。何れにせよ、調査にはそれなりに時間がかかる」
そりゃ今日明日での解決とはこちらも考えてはいない。問題は僕達の船の時間までに解決するかどうかだ。
「わかりました。もし進展があれば教えてください」
「ああ、あまり期待しないほうがいいと思うぞ」
そう言ってギルマスは部屋から出ていった。
「さて、これからどうしようかな」
あの後一帯にゴブリンが残っていないのを確認して戻ってきたので、依頼は達成されたといっていい。その代わりにこの厄介ごとを抱え込んでしまったわけだけれども。
「言って何かできるわけでもねぇしな。大人しく飯食って寝ようぜ」
アランの言葉に従ってギルドを出れば、空はすでに真っ黒だ。
「それにしてもリーナは咄嗟の判断がすごいね」
「リーナはブロルから、迷いは命取りだって教わったのです」
それは確かに正しい。あの場でもしアランと二人だったら、僕は迷って何の判断も下せずにトロルのときの二の舞いになっていたかもしれない。
それにしてもセリアドネの件にしても昨日の黒い変なのにしても今日のゴブリンキングにしても、連日厄介ごとに巻き込まれてるきがする。
この街自体がきな臭いのか、僕が原因なのかはわからないけどもただ事じゃあない。
明日から依頼の内容は今まで以上に精査していかないと、それこそ命取りになるかもしれない。
そうこうしている内に宿にたどり着けば早々にご飯だ。
「メルタは食べないから細っこいのです」
ご飯中にリーナから辛辣な一言が飛ぶ。
そんな事言われても僕の胃の容量的にはこれで精一杯なんだよね。
絶対アランとリーナが食べすぎなだけだと思う。
「オスはメスの目立つところに目がいくのです。ボン・キュッ・ボンは正義なのです」
「えぇ…… 今日は一体どうしたのリーナは」
「アランとメルタの距離がもう見ててあっまあまなのに何も無いのがもどかしいのです」
いやいやいや、そんな事言われても困る。
大体そんな事してたらリーナは部屋にいられないんじゃないの?
「きっとメルタの体が細っこくて物足りないのが原因なのでーーーーあいたたた」
余計な一言を言いかけたリーナのほっぺたを摘み上げる。えぇい好きで細っこい訳じゃないんだっての。僕だって見栄えがするっていう意味でもボン・キュッ・ボンに憧れはするけど、前世も今もそうならないんだから仕方ないじゃないか。
それにおっきいと動きにくいとも聞くから、きっと今の僕は最適化された結果なんだ。そう信じたい。
ちらりと視線をアランにやると、彼は何も聞こえていないとばかりにご飯に目線を落としていた。
「アランもいってやるのです。もうちょっともみーーーーあいたたたた」
更にいらないことを言い続けるリーナを今度は両手で頬を摘む。ええい自分が持ってるからって偉そうにー!
「俺は、別に、今のままでいいと思う」
ほーらみろ、僕にだって需要はあるんだい。
言ってて若干悲しくはなるけど、アランがそういうんだから問題ない!
「まだヒリヒリするのです…… でも油断してるといつか横からボン・キュッ・ボンにさらわれるのですよ……」
油断っていったってねぇ。できることは少ないし、どうしたらアラン的に良いのかなんてわからないから致し方ない。
まぁかといってガツガツ来られたら僕はドン引きしそうな気がするし。
「そういうリーナはどうなのさ」
「リーナはブロルにぞっこんなのです」
あぁ、助けてくれた人に惚れた系なのか。でも結構小さいときから育ててくれたっていうからそこそこ良い年の人なんじゃなかろうか。
「出会ったらすぐに交わうのです」
「ぶふっ」
思いっきりエールを吹いてしまった。
ちょっとあまりにも直球すぎる。
「メルタ、ばっちぃのです……」
真正面にいたリーナにそれなりに飛んでしまったらしい。
「ごめんごめん、でももうちょっと言葉をぼやかしてね……」
「? やることやらないと子孫繁栄にならないのです」
そりゃそうだけれども、TPOというものがあるじゃないか。
アランなんて顔真っ赤だよ。
「メルタは違うのですか?」
「え、あ、その……」
「……ま、ゆっくりでいいんじゃないか、そういうのは」
なんとかアランの絞り出した言葉はそれだけだった。
「ん、そだね」
気まずくなってしまった空気を誤魔化すように食事に集中する。
リーナは相変わらず不思議そうな顔をしている。
「メルタに目的があるのはしっているのです。だから子孫がまだいらないなら海綿でもーーーー」
「ストップストーップ! そういうのはせめてアランのいないところで話そう」
明け透けというかなんというか、リーナの感性はちょっと不思議だ。普通こういうのは恥ずかしかったり照れたりするもんだと思うんだけど。
「わかったのです」
素直なのは良いことだけども、少しくらい恥じらいというものを持って欲しい。
というか話に巻き込まれた僕が一方的に恥ずかしい思いをしてるんじゃないだろうか。
「じゃあそろそろ寝ようかな」
食べ終わった僕は席を立つ。
「おう、おやすみ」
こうして今日もまた慌ただしい一日が終わっていくのだった。
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