いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、ラスボスを葬ってやります!

果 一

文字の大きさ
5 / 59
第一章 反逆への序章編

第5話 邂逅、悲運の少女

しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆



 名前:カイム=ローウェン

 年齢:17

 性別:男

 職業:《黒の皚鳥》戦闘員



 レベル:32→55

 体力:8500→11000

 魔力:13850→18700

 魔法適正:火・土・風+無属性

 

 スキル:《鑑定眼》 《索敵》 《火球フレア・ボール》 《土形変化ソイル・チェンジ》 《石弾ロック・バレット》 《風刃エア・カッター

 固有スキル:《魔法創作者スキル・クリエイター

 

◆◆◆◆◆◆



「うわっ! 一晩で20以上もレベルが上昇してるし」



 そりゃ、いきなり魔法の威力も上がるわけだ。

 ただでさえ俺は、保有魔力量も多いというのに。



「このまま上げてくと……少しマズいかもな」



 いつ、今回みたいなミスをしでかすかわからない。

 それに次ミスをすれば、今度こそレイズの耳に入る。



「あと、いつまでこの膨大な魔力や体力を隠せておけるか、だな」



 今は一般人を装いつつ、目立たないことで自分がとんでもない魔力を有していることを隠しているが、それもいつまで持つか。



 高位の者が見れば、その者の魔力の保有量は看破できてしまうし、膨大な魔力を持つようになれば、一般人でも気付くほどのオーラを全身から放出してしまう。

 

「主人公……王国の勇者アリスがダンジョンでの修行を終えて出てきたとき、放たれる強烈なオーラで、周囲の人間が驚いてたからな」



 なんとか、ステータスを隠蔽する方法を考えなければ。

 

 何かなかったか?

 俺は、ゲームの知識を総動員して思案に耽る。

 

「ステータスを隠蔽する方法……他の目から欺く……魔力を隠蔽する魔法が作れれば……!」



 俺は一瞬、《魔法創作者スキル・クリエイター》のスキルを思い浮かべる。

 が、すぐに頭を横に振った。



「ダメだ。魔力を隠蔽する魔法は作れるけど……俺じゃ使えない!」



 唐突だが、この世界には魔法の属性が六つ+一つ存在する。



 火・水・土・風の基本四属性に加え、光・闇。そして回復や身体強化などの無属性。

 その中で、魔力を隠蔽する魔法など、状態異常や五感を欺く魔法スキルは、闇属性のものだ。



 しかし、俺の所有している魔法適正は、火、土、風、無属性の四つだけ。

 闇属性の魔法は、使えないのである。



 俺は、落胆で肩を落とし――



「――いや、待てよ」



 ふと、とあることを思い出す。

 あった。

 俺のゲーム攻略知識の中に、闇魔法を使えるようになる方法が。



「そうだ! あのアイテムをゲットできれば、俺も闇魔法が使えるようになる。そうしたら、ステータスの隠蔽もできるじゃないか!」



 ゲームの序盤。

 物理攻撃の効かない相手に苦戦した勇者アリスは、自身が使えない闇魔法を使えるようにするため、そのアイテムを手に入れた。

 俺もそれをゲットするしかない。

 

 幸い、今はまだ物語開始前。

 ゲットする余裕は十分あるし、これ以降レベルをガンガン上げても差し支えないだろう。



「とりあえず、例の場所へ行く準備を整えるか」



 俺は訓練場を出て、アジト内の廊下を歩く。

 周囲は冷たい石で固められ、窓は小さくくり抜かれたものしかないため、昼間だというのに薄暗い。



 こんなんじゃ、足下もおぼつかないな。

 そう思いながら歩いていると、曲がり角で誰かにぶつかった。



「うわっ!」



 俺はびっくりして声を上げる。

 が、相手は特に声を上げることなく、代わりにドサッという尻餅をつく音が聞こえてきた。



「す、すいません! お怪我は――」

「おいっ! テメェ!」



 謝罪を遮られ、男の罵声が飛んできた。



「ご、ごめんなさい!」



 反射的に頭を下げる。

 ――が、男が怒鳴った相手は、俺じゃなかった。



「テメェ、人にぶつかったくらいで何転んでやがる! マヌケが!」

「も、申し訳ありません」



 尻餅をついた女の子は、弱々しくそう答える。

 暗くて気付かなかったが、隷属の首輪をはめられていた。



 奴隷か……

 少女の背後にいる、怒鳴りつけた男に聞こえない大きさで、舌打ちをする。



 《黒の皚鳥》は、公国内にいる身寄りの無い子どもを拾って、無理矢理奴隷にしている。

 もちろん、その指示を出しているのはレイズだ。

 隷属の首輪という、主人に逆らったら死ぬ呪いがかけられた首輪をはめられ、本人の意志に関係なく働かされる。



 それに、原作ではほぼ全員の奴隷が女の子なんだよな。

 それが意味することとは、無論“そういうこと”だ。

 組織上層部の連中の、情欲の吐き溜め。

 そんな奴等に夜を蹂躙され、昼間もこき使われる。



 そして厄介なことに――奴隷に憐憫れんびんの情を抱いて手を差し伸べた者にも、罰が与えられる。



 可哀想だが、ここは見て見ぬふりをするしかない。

 俺は、少女の顔もろくに見ず、その場を去ろうとする。



 だがそのとき――俺はふと、少女に違和感を覚えた。



 なんだ、この異様なオーラは。

 目を合わせないことで、より際立つ違和感。

 滲み出るオーラは、濃い魔力のアカシ。

 おそらく、この少女は……俺と同じか、それ以上の魔力を内に秘めている。



 俺は反射的に振り返る。

 少女は既に立ち上がり、男によって乱暴に手を引かれながら、去って行くところだった。



 その後ろ姿を見て俺は目を見開く。

 白く長い髪は、先端だけ桃色に色づいている。

 左腕には、ミサンガのような紐を巻き付けていて、一目で大切なお守りだとわかった。



 そして――そんな特徴的な髪とチャームポイントを持つ少女に、俺の記憶が反応した。



 間違い無い。

 彼女の名は、フロル=シルベニア。

 

 『国家大戦・クライシス』に登場する、いわゆるネームドキャラクターだ。

 そして――時系列でいけば、レイズの最初の犠牲者になる少女である。



 より簡単に説明しよう。

 彼女は物語開始前に、死ぬ運命だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...