いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、ラスボスを葬ってやります!

果 一

文字の大きさ
55 / 59
第二章 《友好舞踏会》の騒乱編

第55話 凱旋、そして一悶着

しおりを挟む
 《友好舞踏会エクセレント・パーティー》は、王国の“友好関係を構築する”という目的も、公国の“戦争への引き金とする”という目的も果たせぬまま、終結した。

 もちろん――関わった全ての組織に大きなしこりを残したのは、言うまでもない。



 これから、王国と公国、《黒の皚鳥》、そして俺達の組織が、睨み合う形となるだろう。

 だが今は、束の間の勝利を噛みしめ、次の騒乱に備えて力を蓄える事が先決だった。



△▼△▼△▼



 《友好舞踏会エクセレント・パーティー》の後、俺は少しの間会場に残った。

 本当はすぐにでもアジトに帰って寝たかったが、何しろ俺は秘密結社のリーダーという立場だ。



 殊更に、俺達が暴れたことで組織の特定や不都合につながる痕跡は、残していくわけにはいかない。「大丈夫だろう」という油断が、命取りになったりするのだ。

 俺は、他のメンバーの命も預かる身。

 終わったから「はい、しゅーりょー」と言ってそそくさと帰るわけにもいかない。



「特に、見つかったらマズそうな痕跡はないな」



 そう判断を下す頃には、夜もすっかり更けていた。



 ――。



 《空間転移ワープ》を起動して、アジトのある《解放の試練》の近くまで移動する。

 すると、《解放の試練》の入り口の前に、見覚えのある少女が立っていた。



 月光に照らされたシルクのような白髪は、先端だけ赤く色づいている。

 大きな瞳は、何かを心配するように暗闇を見据えていた。

 言うまでもなく、俺の右腕であるフロルである。



 どうやら、仲間達と共に先にアジトへ戻っていたようだ。



「よう、フロル」



 俺が声をかけると、フロルは俺の方を振り向いてパッと太陽のような笑みを浮かべる。



「お疲れ、カイムさん! 待ってたよ!」



 フロルは、嬉々としてそう言いながら俺の方へ駆け寄ってくる。



「もしかして、ずっと外で待ってたのか? 寒いだろうに……」

「平気。カイムさんを出迎えるためなら、真冬の夜だろうが一晩中待っていられ――」



 そのとき、フロルの足が俺の手前で止まった。

 

「ねぇ、カイムさん。その人って……まさか」



 フロルは、俺の後ろを指さす。



「ん? ああ、たぶんお前の予想通りだよ」



 俺は背中に背負った人物を振り返りつつ答える。

 彼女の指摘通り、未だ気を失ったままの勇者アリスを背負って帰って来たのだった。



「戦いでいろいろあって気を失ったみたいだから、放置するのも忍びなくて連れてくることにした。王国の内情もちゃんと確認しておきたいし――って、おーい、フロルさん?」



 俺は、アリスを睨みつつ硬直していたフロルに声をかける。



「っ! な、なに?」

「いや……なんか、急に怖い顔になって、どうしたのかなと思って」

「な、なんでもないよ! 気にしないで」



 フロルは、愛想笑いを浮かべつつブンブンと手を横に振る。

 それから、後ろを向いて――



「なんなの? 主様マスターに斬りかかった阿婆擦れの分際で、おんぶされてその上気持ちよさそうに寝てるなんて。ホント、世の中舐めてるんじゃないの? 勇者だからって馴れ馴れしく主様マスターに近づいて現金なヤツ、許せない! おんぶなんて、肌と肌の濃厚な接触、つまりキスと変わらないじゃない! ていうか、そこは本来私のポジションで――」



 ……。

 何というか……うん。

 なんか、もの凄い早口で愚痴みたいなことを言っている気がするが、俺は何も聞いていない。

 ああ、断じて何も。



 だから、おんぶとキスが一緒なわけあるか! とかいうツッコミも、胸の中にしまっておこう。

 そう、俺は何も聞いていないから、そんな感想が浮かぶはずがないのだ。



「じゃ、じゃあ俺は先に戻ってるから……」



 俺は、独り言をぶつぶつと呟きまくっているフロルの横を通り過ぎ、そそくさと逃げるように《解放の試練》の入り口へと向かった。



 なんてことはない。

 俺の腹心は、たまに理性が暴走してしまうから、巻き込まれるのが怖かったのである。



 ――その後。

 フロルから逃げるようにしてアジトに戻った俺は、配下から無事、誰一人失うことなく帰還したことを知らされる。

 レーネ王女が丁重に保護されていることも、伝聞ではあるが確認した。



 紛う事なき、俺達の完全勝利である。



 それを噛みしめて、宴うたげの一つでも開きたい気分だが――それは一旦後回し。

 何よりも優先しておきたいことがあって、俺はアリスを背負ったまま真っ先にリーナの元へ向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...