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第2章 人魚姫の涙、因縁の対峙
第21話 英雄は遅れてやって来る
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《三人称視点》
「綺麗……」
少女は1人、その場で感嘆の息を漏らしていた。
ここはダンジョン28階層、光の墓場。
蛍飛び交うがごとき絶景の中、唄う少女の姿が映える。
いや、少女と言っていいかはわからない。
上半身は確かに人間の女の子だが、下半身は魚のそれだ。光を照り返す青緑色の鱗は、光の当たり加減に応じて玉虫色に輝いてる。
透き通るように白い肌と、水を想起させる水色の長い髪を持つ、まさに神話の世界から降り立ったような美しさと可憐さを併せ持っている。
まっさいく、人魚姫と呼ぶに相応しい少女だった。
その人魚姫こと、ミリーは今、親の目を盗んでこの場所へやって来ていた。
ちょくちょく外の世界へ連れ出してくれる親友のシャルが、以前ここに連れてきてから、この場所はミリーのお気に入りなのだ。
この場所は、ミリーの他には“ライト・バグ”しかいない。
まさに、彼女のためのライブ会場と言っても過言では内、比較的安全な場所だった。
だからこそ――彼女は油断していた。
カラン、と乾いた音がその場に響く。
「?」
不思議に思ったミリーが音のした方を見ると、なんの変哲もない小石が転がっていた。
そのことで、ミリーは更に首を傾げる。
――その瞬間だった。
「油断したなバカめ!」
反対方向の岩陰から男の声が聞こえると同時に、ミリーの身体は強い力で拘束された。
彼女を襲った正体は、言わずもがな剣砥だ。
「だ、誰か助けて――むぐっ!」
「おっと、ちゃんと喋れるモンスターなんだな! 黙ってくれなきゃ困るぜ?」
そう言って、剣砥はミリーの口を塞ぐ。
「っ! ~~~~っ!」
「ちっ、身体強化のスキルを全開にしてるのに、押さえ込めねぇ……相当大物だな、おい!」
ミリーとて“最強種”だ。
せめて水の中にいればなんとかなったが、陸地にいる今、暴れるだけで精一杯だった。
「へへっ、人魚のモンスターか。殺したらどんなレアアイテムをゲットできるんだろうなぁ!?」
「ん~~っ!」
その言葉に、ミリーは涙を浮かべる。
彼女はまだ幼い。シャルよりも少しばかり年上ではあるが、小さい頃から冒険ばかりしていたシャルに比べ、彼女は外の世界へ出てきた経験が圧倒的に少ないのだ。
だから、悪意になれていない。
だから、人魚の固有スキルを成長させる経験を積めなかった。
(い、いや! 誰か助けて……! 助けてッ!)
目に涙を浮かべ、ミリーは暴れる。
それと同時に、なんとか起動はできる《|蠱惑之美声ローレライ》を我武者羅に放った。
同時に、彼女に魅了された“ライト・バグ”の群れが、地面に落ちていく。
――が。
「強力な状態異常のスキルか……アブねぇ。昨日レアアイテム見つけてて良かったぜ」
(っ! 嘘、効いてない!)
不幸にも、剣砥の左腕には『状態異常無効化の腕輪』が嵌められていた。
それが、ミリーの焦りを更に加速させる。
「へっ、それじゃあいただくとするか!」
嗜虐的な笑みを浮かべ、剣砥は短剣を振りかざす。
(助けて、誰か――ッ!)
ミリーはぎゅっと硬く目を瞑り――その瞬間。
なぜか拘束が離れた。
ドンッ!
鈍い音が間近で聞こえ、しかし自身を襲う痛みはやってこない。
「ぐっ! いでぇえええええええええええええ!」
代わりに絶叫を上げたのは、剣砥の方だった。
「……え?」
ミリーは、恐る恐る目を開ける。
すると、ついさっきまで自身を虐げていたはずの男が、壁に激突している。
そして――その反対方向に、3人いた。
1人は、最近遊んでいるシャル。
もう1人は、顔を青くしている母親。
そして、最後の1人は知らない男の子だった。
けれど、その人が一番前に立ち、脚を上げて何かを蹴り飛ばした後の格好をしていた。
「間に合った」
少年――絆は、心の底から安堵したような表情で、そう呟いていた。
「綺麗……」
少女は1人、その場で感嘆の息を漏らしていた。
ここはダンジョン28階層、光の墓場。
蛍飛び交うがごとき絶景の中、唄う少女の姿が映える。
いや、少女と言っていいかはわからない。
上半身は確かに人間の女の子だが、下半身は魚のそれだ。光を照り返す青緑色の鱗は、光の当たり加減に応じて玉虫色に輝いてる。
透き通るように白い肌と、水を想起させる水色の長い髪を持つ、まさに神話の世界から降り立ったような美しさと可憐さを併せ持っている。
まっさいく、人魚姫と呼ぶに相応しい少女だった。
その人魚姫こと、ミリーは今、親の目を盗んでこの場所へやって来ていた。
ちょくちょく外の世界へ連れ出してくれる親友のシャルが、以前ここに連れてきてから、この場所はミリーのお気に入りなのだ。
この場所は、ミリーの他には“ライト・バグ”しかいない。
まさに、彼女のためのライブ会場と言っても過言では内、比較的安全な場所だった。
だからこそ――彼女は油断していた。
カラン、と乾いた音がその場に響く。
「?」
不思議に思ったミリーが音のした方を見ると、なんの変哲もない小石が転がっていた。
そのことで、ミリーは更に首を傾げる。
――その瞬間だった。
「油断したなバカめ!」
反対方向の岩陰から男の声が聞こえると同時に、ミリーの身体は強い力で拘束された。
彼女を襲った正体は、言わずもがな剣砥だ。
「だ、誰か助けて――むぐっ!」
「おっと、ちゃんと喋れるモンスターなんだな! 黙ってくれなきゃ困るぜ?」
そう言って、剣砥はミリーの口を塞ぐ。
「っ! ~~~~っ!」
「ちっ、身体強化のスキルを全開にしてるのに、押さえ込めねぇ……相当大物だな、おい!」
ミリーとて“最強種”だ。
せめて水の中にいればなんとかなったが、陸地にいる今、暴れるだけで精一杯だった。
「へへっ、人魚のモンスターか。殺したらどんなレアアイテムをゲットできるんだろうなぁ!?」
「ん~~っ!」
その言葉に、ミリーは涙を浮かべる。
彼女はまだ幼い。シャルよりも少しばかり年上ではあるが、小さい頃から冒険ばかりしていたシャルに比べ、彼女は外の世界へ出てきた経験が圧倒的に少ないのだ。
だから、悪意になれていない。
だから、人魚の固有スキルを成長させる経験を積めなかった。
(い、いや! 誰か助けて……! 助けてッ!)
目に涙を浮かべ、ミリーは暴れる。
それと同時に、なんとか起動はできる《|蠱惑之美声ローレライ》を我武者羅に放った。
同時に、彼女に魅了された“ライト・バグ”の群れが、地面に落ちていく。
――が。
「強力な状態異常のスキルか……アブねぇ。昨日レアアイテム見つけてて良かったぜ」
(っ! 嘘、効いてない!)
不幸にも、剣砥の左腕には『状態異常無効化の腕輪』が嵌められていた。
それが、ミリーの焦りを更に加速させる。
「へっ、それじゃあいただくとするか!」
嗜虐的な笑みを浮かべ、剣砥は短剣を振りかざす。
(助けて、誰か――ッ!)
ミリーはぎゅっと硬く目を瞑り――その瞬間。
なぜか拘束が離れた。
ドンッ!
鈍い音が間近で聞こえ、しかし自身を襲う痛みはやってこない。
「ぐっ! いでぇえええええええええええええ!」
代わりに絶叫を上げたのは、剣砥の方だった。
「……え?」
ミリーは、恐る恐る目を開ける。
すると、ついさっきまで自身を虐げていたはずの男が、壁に激突している。
そして――その反対方向に、3人いた。
1人は、最近遊んでいるシャル。
もう1人は、顔を青くしている母親。
そして、最後の1人は知らない男の子だった。
けれど、その人が一番前に立ち、脚を上げて何かを蹴り飛ばした後の格好をしていた。
「間に合った」
少年――絆は、心の底から安堵したような表情で、そう呟いていた。
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