20 / 61
第2章 人魚姫の涙、因縁の対峙
第20話 悪意
しおりを挟む
《三人称視点》
――ダンジョン中層、28階層。
別名、光の墓場と呼ばれるその場所は、蛍のような光で満ちていた。
光の正体は、自ら発光するCランクモンスター、“ライト・バグ”。攻撃性が低く、温厚な性格であるため刺激しなければ、ただの綺麗な蛍だ。
しかし、ただ綺麗なだけの温厚なモンスターがダンジョンの中層に存在できるはずもない。
生き残っているのには、ちゃんとした理由がある。
この“ライト・バグ”。命の危険を感じたときは発光器を灼熱化して自爆する。その威力は見た目に反して高く、さらに群れでいることが多いため、周りに爆発が連鎖するととんでもない規模になるのだ。
そういった理由から、ランクはCに設定されている。
そんな“ライト・バグ”の群れが洞窟内を照らす、幻想的な光景の中を1人の少年が進んでいた。
「ちっ、ろくなモンスターがいやしねぇじゃねぇかよ!」
悪態をつきつつ、足下の小石を蹴飛ばしたのは誰あろう川端剣砥である。
荒れている理由は単純明確。
今日、いけ好かないザコだとしか思っていなかった絆が、いつの間にか英雄になっていたからだ。
(許せねぇ。チヤホヤされていい気になりやがって。その場所は、俺のポジションのはずなのに!!)
どんな手品を使ったのか知らないが、絆はレベル1からレベル20に一晩で成り上がったらしい。
そんな話、ダンジョン攻略を始めて2年になる剣砥をして、聞いたこともないようなことだった。
何か絶対裏がある、とは思っているのだが絆はボロを出さない。
そればかりか、剣砥の方が非難されてしまう始末である。
(このままでいてなるものか! アイツに奪われた株を、全て取り返してやる!)
激情に駆られて、剣砥はこの28階層まで進んできた。
目的は、絆を見返して、周りの人気を取り戻す材料を探すため。
昨日攻略中に見つけた、状態異常無効化のレアアイテムでは、とても話のインパクトが足りない。
道中で見つけたグリーンバレットの種もそう。宝箱に入っていた剣もそう。
絆のエピソードに負けている。
もっと成果がいる。
一晩でレベル20に上がってしまうような話に釣り合うような、荒唐無稽とも言えるスケールの話題が。
普通の冒険者が運良く手に入れられるアイテム程度の話題性じゃダメだ。
そんな風に考えながら、ダンジョン攻略を進めていたとき。
不意に、歌が響いてきた。
それも、人間が歌う声とは思えないほど、澄み切っていて、冷たくて、ある種不気味な歌声が。
「……なんだ?」
28階層でも大分奥の方。
だからだろうか、随分前から剣砥の周囲には冒険者はいない。
だというのに、さらに奥から歌が聞こえてくると言うのは、どういう事情だろうか?
ここで普段の剣砥なら、気味悪がって近づかないだろう。
しかし、少しでも話題を探している剣砥は、その人間離れした歌声に導かれるように、さらに一歩奥へと踏み込んでしまった。
視界が、開ける。
運命の歯車が、切り替わる。
28階層の最奥。ちょろちょろと水が流れる小川の畔に座っている、下半身が魚の少女の姿があった。
「……あは」
自然と、剣砥は笑いを零していた。
人目に付かないところで唄う、見たこともないモンスター。
そして――物語でよく聞く伝説上の生き物。すなわち、人魚。
「話題、みぃっけ」
剣砥は、舌舐めずりをしつつそう呟いた。
――ダンジョン中層、28階層。
別名、光の墓場と呼ばれるその場所は、蛍のような光で満ちていた。
光の正体は、自ら発光するCランクモンスター、“ライト・バグ”。攻撃性が低く、温厚な性格であるため刺激しなければ、ただの綺麗な蛍だ。
しかし、ただ綺麗なだけの温厚なモンスターがダンジョンの中層に存在できるはずもない。
生き残っているのには、ちゃんとした理由がある。
この“ライト・バグ”。命の危険を感じたときは発光器を灼熱化して自爆する。その威力は見た目に反して高く、さらに群れでいることが多いため、周りに爆発が連鎖するととんでもない規模になるのだ。
そういった理由から、ランクはCに設定されている。
そんな“ライト・バグ”の群れが洞窟内を照らす、幻想的な光景の中を1人の少年が進んでいた。
「ちっ、ろくなモンスターがいやしねぇじゃねぇかよ!」
悪態をつきつつ、足下の小石を蹴飛ばしたのは誰あろう川端剣砥である。
荒れている理由は単純明確。
今日、いけ好かないザコだとしか思っていなかった絆が、いつの間にか英雄になっていたからだ。
(許せねぇ。チヤホヤされていい気になりやがって。その場所は、俺のポジションのはずなのに!!)
どんな手品を使ったのか知らないが、絆はレベル1からレベル20に一晩で成り上がったらしい。
そんな話、ダンジョン攻略を始めて2年になる剣砥をして、聞いたこともないようなことだった。
何か絶対裏がある、とは思っているのだが絆はボロを出さない。
そればかりか、剣砥の方が非難されてしまう始末である。
(このままでいてなるものか! アイツに奪われた株を、全て取り返してやる!)
激情に駆られて、剣砥はこの28階層まで進んできた。
目的は、絆を見返して、周りの人気を取り戻す材料を探すため。
昨日攻略中に見つけた、状態異常無効化のレアアイテムでは、とても話のインパクトが足りない。
道中で見つけたグリーンバレットの種もそう。宝箱に入っていた剣もそう。
絆のエピソードに負けている。
もっと成果がいる。
一晩でレベル20に上がってしまうような話に釣り合うような、荒唐無稽とも言えるスケールの話題が。
普通の冒険者が運良く手に入れられるアイテム程度の話題性じゃダメだ。
そんな風に考えながら、ダンジョン攻略を進めていたとき。
不意に、歌が響いてきた。
それも、人間が歌う声とは思えないほど、澄み切っていて、冷たくて、ある種不気味な歌声が。
「……なんだ?」
28階層でも大分奥の方。
だからだろうか、随分前から剣砥の周囲には冒険者はいない。
だというのに、さらに奥から歌が聞こえてくると言うのは、どういう事情だろうか?
ここで普段の剣砥なら、気味悪がって近づかないだろう。
しかし、少しでも話題を探している剣砥は、その人間離れした歌声に導かれるように、さらに一歩奥へと踏み込んでしまった。
視界が、開ける。
運命の歯車が、切り替わる。
28階層の最奥。ちょろちょろと水が流れる小川の畔に座っている、下半身が魚の少女の姿があった。
「……あは」
自然と、剣砥は笑いを零していた。
人目に付かないところで唄う、見たこともないモンスター。
そして――物語でよく聞く伝説上の生き物。すなわち、人魚。
「話題、みぃっけ」
剣砥は、舌舐めずりをしつつそう呟いた。
10
あなたにおすすめの小説
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる