姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一

文字の大きさ
7 / 153
第一章 《英雄(不本意)の誕生編》

第7話 実技試験の対戦相手は

しおりを挟む
「やっほ~。君が私の相手? よっろしっくね~!」



 円形闘技場に横一列に並ぶ受験生。その左端に並んだ俺の前に立ったのは、無駄にキャピキャピした半裸のお姉さんだった。



 胸を覆う黒い布と、白い短パンだけ。

 あとは肩にとりあえずといった感じで制服を羽織っている。



 腰まで伸びる朱色の髪は逆立っており、俺を見据える金色の瞳はまるで猛獣のよう。

 小柄だが引き締まった身体は肉付きがよく、鍛えられているのが一目瞭然だ。



 どうやらこの学校、実技試験は戦闘に長けた上級生が相手をするようだ。



「そうみたいですね。よろしくお願いします」

「きゃはは! よろ!」



 あー……このテンション苦手かも。

 さっさと負けて退場しよう、そうしよう。

 既に敗北モードに入っていた俺は、そういえばサルム君の対戦相手は誰だろう。と思い至る。



 さりげなくサルムくんの対戦相手を見ると――うわ、マジかよ。

 2メートルを超える身長。はち切れんばかりの胸筋で制服がむちむちと膨らんでいる、ゴリラ顔の巨漢だった。



「マジか、あの人。あの身体でまだ子どもって反則だろ」

「気になる? あの茶髪の地味な子も運がなかったわねぇ。相手がブロズじゃあ、勝ち目はないわ」



 キャピキャピお姉さんは、巨漢を見ながら楽しそうに笑う。



「はぁ、さいですか」

「アイツはウチの学校の序列38位。相当の手練れで手癖も悪いから、アイツと相対したヤツはみんな悲惨なことになるの。ちなみに私は56位! きゃははは! 君も運が悪かったね」

「はぁ……どうでもいいですけど、なんか微妙な順位ですね」

「んなっ!」



 俺の反応に対し、キャピキャピお姉さんは絶句した。

 俺、そんなマズいこと言ったか?

 序列38位と56位って、別に威張るほどの順位ではないのではなかろうか?

 

 あ、でもここはエリート校か。

 しかも生徒の人数が3800名を超すわけだし、二桁という意味では凄いのかも。

 けど、普段から姉さんというバケモノを見てるせいか、そんなに強そうには見えないんだよな。



 まあ、見かけで判断すべきじゃないか。

 ひょっとしたら、その順位に見合う圧倒的な実力を隠しているかもしれない。



「――随分、舐めたこと言ってくれるわね」

 

 どうやら、俺の発言が逆鱗に触れたらしい。

 キャピキャピお姉さんのまとう空気が変わった。鋭い目を、更に鋭くして俺を睨む。



 なにやら彼女を本気にさせてしまったようで――うん?

 これはチャンスでは?

 怒った彼女が、俺を圧倒し、俺は無様に退場する。



 よし、このパターンで行こう。

 計画を盤石にするために、俺は更に煽ることにした。



「実際、そんな強そうには見えないし」

「ここまでこけにされたのは初めて。いいわ、本気を見せたげる!」



 キャピキャピお姉さんは、抜き身の剣に魔力を纏わせる。

 魔力のオーラが身体から立ち上り、圧が一気に増していく。

 次の瞬間。彼女は、地面を踏み砕いて突進してきた。



「ハァアアアアアアアアッ!」



 彼我の距離を一瞬で詰め、彼女は剣を振り抜いた。

 魔力の光が刃の流れに沿って輝き、俺の身体を狙う。

 そんな一撃を、俺は剣の腹で受け止めた。



 ガギンという鈍い音が響く。

 見れば、俺の剣にヒビが入っていた。

 ふむ。思ったより強いかも――



「――きゃはっ! よっわ! 大口叩いておいてこの程度。剣に魔力を纏わすこともできないなんてねぇ!」



 お姉さんは、尖った犬歯をむき出しにして笑う。

 

 魔力を纏わせない剣は、ただの鉄の塊とすら言われる。

 魔力を通すことで、切れ味や硬度が格段に上昇するのだ。

 当然、魔力を通した剣とただの剣がぶつかり合えば、後者が負けるのは必定。



「君みたいな雑魚は、ママのお腹の中からやりなおして来て……ねっ!」

 

 言い終わると同時に彼女は、身体能力を強化した脚で回し蹴りを喰らわせてくる。

 咄嗟に剣でガードし、その剣にかかとが深く突き刺さる。

 バキィイインッ!

 涼やかな音を立てて、剣が砕け散った。



 旋風のような回し蹴りの威力は消えず、彼女の脚は俺の身体を後方へかっ飛ばす。

 俺は闘技場の床を何度もバウンドしながら転がり、外縁部でようやく止まった。

 

 蹴られた石ころの気分て、こんななのかな。

 そんなことを考えながら、仰向けに寝転んでいる俺は目を瞑った。青空の下、風が駆け抜ける。

 良い感じに吹っ飛ばされたから、このまま気絶判定で退場しよう。

 これで編入試験は不合格。



 ビバ! 引き篭もり生活!

 俺の夢を手助けしてくれてありがとう、キャピキャピお姉さん!

 俺は、半裸のお姉さんを思い浮かべて感謝する。



 当の本人は「きゃはははは! 口ほどにもない。散々煽っておいてあっけなく気絶とか。よっわ! ざっこ! そのまま死んで、来世はミジンコにでも生まれ変わったら?」などと言っている。



 なんか腹立つな。

 まあ、我慢あるのみだ。ここで起き上がったら、試験続行になってしまう。

 そんなことを考えていたそのときだった。



 鋭い衝撃が、横っ腹に弾けた。



「ッ!?」



 何が起きたのか理解できぬまま、俺は真横に吹っ飛ばされ、数メートル転がった。



「な、なんだ?」



 流石に想定外の出来事で、俺は起き上がる。

 そのまま、俺の身体にぶつかってきたものの正体を見て――絶句した。

 俺にぶつかってきたのは、全身傷だらけで血に染まったサルムくんだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...