姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一

文字の大きさ
18 / 153
第一章 《英雄(不本意)の誕生編》

第18話 リクスVSバルダ

しおりを挟む
《三人称視点》



 剣に魔力を纏わせたバルダが、瞬く間にリクスへと肉薄する。

 大きく振るわれる剣が、リクスの胴を薙ぐ軌道で横から襲いかかった。

 が、リクスは剣を縦に構えて刃を傾け、その剣を受け流して威力を削ぐ。

 間髪入れずにバルダの刀が返される。



 それを同じように剣で受け流すリクス。

 更にバルダは振るう剣速を早め、何度も何度も斬りかかる。

 バルダとリクスの間で、甲高い金属音が絶え間なく響き、剣閃が乱れ咲く。



 しかし、バルダの剣の悉くを、リクスは剣の角度を変えて弾き落とした。

 

 鋭角に襲いかかるバルダの剣を剛の剣とするなら、リクスのそれは柔の剣。

 バルダの攻撃を的確に捌き、最適な角度で緻密に捌いていく。

 故に――



(ちっ! 手応えのねぇ!)

 

 バルダは苛立った。

 全身全霊を込めて放った斬撃が、リクスの剣に難なくいなされているのだ。

 いや、相手も剣に魔力を通しているのだから、防御を破れないのは当然かもしれない。

 しかし、それにしたって手応えがなさすぎる。



 バルダは休みなく何度も何度も斬撃を放っているのだが、リクスは最小限の動きでそれを弾いている。

 端から見れば、バルダが一方的に攻め立てているように見えるが――それはバルダしか攻撃していないからだ。



 リクスは防御に徹しているが、余裕がある。

 それが証拠に、リクスの息は上がっていない。



(こいつ! 俺の攻撃に怯まないだと!?)



 いや、そんなわけがない。

 自分の実力は、Cクラスの中でもトップクラス。

 本当ならBクラス、果てはAクラスにも入れる実力を持っていると、バルダ自身自負している。



 だからこそ焦る。

 確かにリクスは、編入試験で上位ランカー二人を葬った。

 そのことばかり取り立てられて、リクスはもてはやされているが、それがどうにも気がかりなのだ。



 彼は勇者エルザの弟。

 上位ランカーを沈めたのは、予め仕組まれていた、期待を煽るための演出だったのではないかと思ったのだ。



 でなければ、身体能力強化を得意とする《速撃》の異名を持つエナが、魔力すら通していない刃折れの剣を投げられただけであっさり負けるはずが無い。

 何かしらのイカサマとパフォーマンスだと考えるのが自然だった。



 実際、この男からは強者特有の燃えるようなオーラを感じない。

 無気力、怠惰。

 そんな空気しか放っていないのだ。



 そして、だからこそ。

 バルダはこの現状に焦燥を感じていた。



(この男は、まさか本当に……とんでもない実力を!?)



 確信を持ち始めていたそのとき、踊る刃の向こうでリクスが呟いた。



「……マズいな」



 苦々しげに歪められたリクスの顔を見て、バルダはほくそ笑む。

 自分の攻撃はちゃんと通っている。そう確信したからこそ、余裕が生まれた。



「へっへへ……そうかよ。やっぱ堪えてんじゃねぇか!」



 バルダは自信を取り戻し、剣撃を更に速めていく――



△▼△▼△▼



《リクス視点》



「……マズいな」



 バルダの攻撃を捌きながら、俺はそう呟いた。

 そう呟いた理由は、たった一つ。

 ――こんなひ弱な攻撃で、どうやって敗北しろと!?



 剣に纏う魔力の操作も雑。

 刃を通すイメージをまるで考えていない力任せの剣なのに、その力さえも全く強くない。

 この程度、魔力を通していない剣でも余裕で受け流せるのだが、流石にそれをやってしまうと、周りに手を抜いたと思われる。

 

 勇者の弟だから期待していたのにこの程度かよ。と思わせたい俺としては、形だけでも本気と思わせなければならない。



 だから防戦一方になっているように見せて、「なかなかやるな、俺も本気を見せてやろう……」的な感じで、バルダの強さが一段階上がるのを待っていたのだが……全然そんな気配が無い。



 まさか、これが本気じゃ無いよな?

 そう思い、敗北するイメージがまるで浮かばず、焦り始めていたのだ。



「へっへへ……そうかよ。やっぱ堪えてんじゃねぇか!」



 と、バルダが何かよくわからないことを言った。

 そして、斬撃の速度が数パーセント上昇する。

 だが、本当に毛が生えた程度だ。

 これでどうやって戦闘不能になればいいのかわからない。わざと斬られたとしても、みんなに手を抜いたとバレてしまう。



 かくなる上は――っ!

 俺が覚悟を決めた瞬間、バルダが大きく剣を引き、突きのポーズをする。



「しまいだぁああああああああ!」



 全身全霊の力を込めているらしく、叫びながらその遅い一撃が俺の方へ迫ってきて――

 今だ!!



「“ウィンド・ブロウ”」



 剣先が迫るのに合わせて、俺は風属性の魔法を起動した。

 剣が狙う先――俺のお腹から、突風が吹き荒れ、俺の身体は後方に吹っ飛ばされた。



 決まった!

 秘儀、「相手の攻撃で吹っ飛んだように見せる作戦」が!



 端から見れば、バルダの突きで吹き飛ばされたように見えるだろう。

 完璧なタイミングで突風を放ったから、たぶん俺の敗北に仕組まれたカラクリに、誰も気付くことはあるまい。

 

「くっ……ふ、不覚。まさか、強力な一撃をモロに喰らうとは……!」



 ゴロゴロとステージ上を転がった俺は、俯せの状態でそれっぽく演技する。

 両腕をついて、立ち上がろうとするも、再び崩れ落ちる。俺はもう戦える状態じゃないというアピールだ。



 よし、これで俺の敗北は必至――



「そこまで! 勝者、リクス=サーマル!」

「……はぁ!?」



 不意にヒュリー先生が放った言葉に、俺は演技も忘れて飛び起きてしまった。



「ちょ、ちょっと待ってください! なんで俺の勝ちなんですか! 俺はバルダの攻撃を喰らって倒れたのに!!」



 周りからの拍手も無視し、俺はヒュリー先生に抗議する。

 が、ヒュリー先生はどこまでも爽やかな表情で言った。



「ええ、確かにそうですね。でも、彼はその強力な打突攻撃に自分自身も耐えられなかったようです。見なさい」



 ヒュリー先生が指さした先に――泡を吹いて気絶しているバルダがいた。



「……あ」



 たぶん、俺が至近距離で突風を放ったから、バルダも後ろに吹き飛ばされたのだろう。

 俺と違って攻撃のために隙を見せていたから防御が間に合わず、風魔法をノーガードで喰らったのだ。



 そして――この試合の勝利条件は、相手が戦闘不能になるか、敗北を認めるか。

 つまり、重傷を負った(ように見える)俺はまだ動けているが、気絶したバルダは既に戦闘不能判定というわけで――



「だから、あなたの勝ちってことですよ」

「そ、そんなぁああああああああああああああああああああああああああっ!!」



 俺の悲しみに満ちた絶叫が、辺りに木霊するのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...