姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!

文字の大きさ
45 / 156
第一章 《英雄(不本意)の誕生編》

第45話 天使召喚

《三人称視点》



「ここは……?」



 エルザは、周囲の真っ白な空間を見渡す。

 学校内のどの施設にも、こんな空間はない。まるで、実験用の隔離室とでも言ったところか。



 いくつか鉄で出来た頑丈そうな扉が見られるくらいで、あとは目立ったものはない。



「驚きましたかな? 学校の地下にこんな空間があったことに」



 ふと声をかけられて、エルザは後ろを振り返る。

 一緒に転移したニムルスが、得意げな表情で立っていた。



「学校の地下? 何を目的に作られた施設なのぉ?」

「そうですな。一言で言うなら、我々 《神命の理》が、研究を完成させるための地下施設と言ったところでしょうか」

「ふぅん、《神命の理》ねぇ……あなたのことは前々から胡散臭いと思っていたけれど、まさかそこまで外道だったなんて。王国最高峰の学校が、外道組織の温床になっていたなんて、笑えないわねぇ」



 エルザは、呆れたように呟く。



 確かに前々からこのラマンダルス王立英雄学校は怪しいと思っていたが、決定的な悪事は確認されなかった。



 それこそ、学校のルールが極端だったり、彼女の嫌いな、元師匠であるヒュリーが赴任していることくらいだ。

 もう少し決定的な証拠があれば、尻尾を掴むことが出来たのだろうが……



(言い訳をしても虚しいだけねぇ。私がいながら、このような施設の存在を許してしまった。私のミスだわぁ)



 エルザは、そう思いつつ歯噛みする。

 そんな彼女の心を読んだかのように、ニムルスは続けた。



「まあ、悲観することもありませんよ。なにせ、我々はずっと息をひそめていたのですからな。そもそもこの施設は、あなたを手に入れてから稼働することを前提に作られている。それ以前に本格稼働させる必要もない」

「私を手に入れる? 一体、何が目的なのぉ?」

「あなたの魔力が欲しいですよ。世界中にたった7人しか扱える者がいない聖剣を100%扱えるようになった、完璧なる勇者のあなたの魔力が」



 自慢するかのように話をするニムルス。

 

「そう。確かに私は実験サンプルとしては有益だものねぇ。でも、肝心なことを忘れていないかしらぁ」

「と、言いますと?」

「あなたに倒せるの? この私が」



 エルザの発言はもっともだ。

 別に、自分の方が強いという優越感に浸っているわけではない。

 王国最高峰の学校の副学校長と、最前線で戦う最強の勇者。

 どちらが強いかなど、客観的に見ればすぐにわかる。

 

 ニムルスは、辛うじて戦いを演じることはできるが、エルザには勝てない。

 それが純然たる事実。

 だが――ニムルスは嗤っていた。どこまでも暗く、深い、闇を湛えた笑みを浮かべて。



「クックック。倒せる算段があるから、私は今ここにいるのです。あなたは既に私達の罠に嵌まっている。逃れることなどできまいよ。それに……あなたと戦うのは、私ではない」

「なんですってぇ?」



 訝しむエルザの前で、ニムルスは地面に手を突き、朗々と呪文を紡いだ。



「光を統べる聖界の天使よ、我が命ず、大いなる力を貸し与え給え、天の意志よ、ただ大いなる翼をはためかせて、現世に顕現せよ――“エンジェル”」



 瞬間、真っ白な魔法陣が床を縦横無尽に走り回る。



「それは……無属性魔法の天使召喚!」



 エルザの顔が、僅かに揺らいだ。

 ニムルスが超級魔法を使ったからだ。



 召喚魔法は、無属性魔法に分類される。

 回復魔法と同じく、同じ“召喚魔法”という部類で初級~超級まで幅広く存在する魔法だ。



 初級の召喚魔法では、召喚できる生物はネズミや小鳥などの小動物。

 中級では、大型動物と、ゴーレムなどの魔法生物。

 上級では、ドラゴンやグリフィンなどの伝説級動物と、精霊。

 そして、超級は天使・悪魔の二種属だ。



 といっても、天使や悪魔は人間より遙かに高次元の存在。

 超級であっても、召喚できるのはせいぜい中位階級の者達。いわゆる、雑兵の類いだ。

 仮に上位や最上位の者達を召喚できる者がいたとしたら――その魔法は既に、固有魔法の域に至っている。



(天使召喚……超級魔法を使ってくるなんて少し驚いたけれど、このゲスは副学校長。有り得ない話ではないわねぇ)



 エルザは、光り輝く魔法陣を見据えた。



 眩い光の中から現れたのは、二対の白い翼を持つ、女性の姿をした中位階級の天使。

 神々しい光を放っているが、その光はエルザの持つ聖剣の輝きに劣っている。



 それもある意味当然と言えた。

 エルザの使う聖剣 《火天使剣ミカエル》は、最上位天使が与えた力。

 根本的に格が違う。



「ゲホッ、ゴホッ……さあ行け、私の可愛い下僕よ」



 ニムルスは、口から血を吐きながら名も無き天使に命令を下す。

 切り札とも言える超級魔法を使ったことで、魔力欠乏状態に陥っているのだ。

 もはや、ニムルス本人に戦う力は残されていない。



 名も無き天使は命じられるがまま、白い翼をはためかせて、エルザへと肉薄する。

 対し、エルザは最上位天使の力の片鱗である聖剣を抜いた。

 眩いばかりの光が放たれ、同時に聖剣を聖なる炎が纏う。



 エルザは腰を低く落とし、中位天使の突進にカウンターを合わせるようにして、すれ違いざまに一閃。

 鋭い斬撃が天使の胴を薙ぎ、切り口から発火して眩い炎に包まれる。

 そのまま、全身を焼かれて、炭となって消滅――しなかった。



 全身を覆う炎を払い、天使が感情の読めない表情のまま振り返る。

 その身体は――無傷。

 火傷ひとつ負っていないばかりか、切り裂いたはずの胴の傷も塞がっている。



 エルザの聖剣の方が格上であるはずなのに、目の前の天使にはダメージが通っていなかったのだ。

 あまりにも、信じられない光景。



「ちっ……思った通り、



 エルザは忌々しげに吐き捨てる。

 いち早く状況と、その裏に潜むカラクリを理解した彼女の額には、脂汗が浮かんでいた。
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)