姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一

文字の大きさ
69 / 153
第二章 《選抜魔剣術大会》編

第69話 エキシビション・マッチ

しおりを挟む
 え? 何?

 英雄になってもまだ、期待外れと思わせて退学できないか画策してたのか? だって?

 当たり前だ。俺のニート生活は、何者にも縛られないことを信条とする。

 当然、学校になど束縛されてはならないのだ。



 が、戦々恐々とする俺とは裏腹にヨウとクレメアは不敵に笑い、「逃げるなよ」と言って、先に会場へ向かった。



 噂、というのはものすごい勢いで伝播するものらしい。

 食堂にいた数百人がこの話を聞いていたが、やがて興奮したように騒ぎながら大移動を開始した。



 間もなく学校中に噂が広がるだろう。

 その流れから抜けだし、俺はゆっくりと闘技場へ向かう。



 考えるのは、今後の動きだ。



 序列3位と4位か。

 考えてみれば、《選抜魔剣術大会》に出場する候補者だった2人だ。

 それなりに強い人間だろうとは思っていたが、少なくともあの台風女リーシス先輩より実力は上ということだろう。



 そんな相手を2人同時に相手して、勝ってしまったら後々面倒くさい。

 かといって……



「わざと負けたら、手を抜いたって思われるもんなぁ」



 勲章を得てしまったことで、俺に対する期待は「勇者の弟」という今までのものよりも、格段に跳ね上がっているんだろう。

 それは予測ではなく、実際に肌で感じていることだ。



 知らない生徒に避けられたりしているからな、うん。

 別に悲しくなんかないぞ? ほんとだぞ? ほんとだからな??



 とにかく、皆が俺=強いと、皆が知ってしまっている状態なのだ。

 下手に手を抜いたらすぐにバレる。



 しかし――負けて得られるであろう利益の高さが、俺の目の前でちらついている。

 勝って得られる恩恵は、あの先輩方に今後付きまとわれないことだけ。



 しかし、上手く負ければ、「なあんだ。勇者の実力ってそんなものか。まあでも、序列上位を二人も相手にしてるからね、無理もないか」的な感じで、期待を僅かに下げることには繋がる。



 もちろん、それだけで退学に繋がるとは思えないから、雀の涙ほどの効果でしかないが、塵も積もれば山となる。ゲームのレベル上げと同じで、地道な努力が大事なのだ。



 そして、最大の効果は、俺が《選抜魔剣術大会》に出ることに疑問と疑惑を持つ人を生み出せることだ。

 元々の候補者に負けたとなれば、俺が出場を辞退するための口実になり得る。



 元々「ロータス勲章」を持っているから突っぱねられる可能性もあるが、出たくもない大会に出なくて済むチャンスは、今後そう巡ってこない。

 ならば、ここで仕掛けるとしよう。



 そう思いつつ、俺は円形闘技場へ赴いた。



――



 午後一時半。

 プログラムにある、昼食後の空白の時間。

 その内容を知った観客席が盛り上がっているのが、まだステージへ向かう通路にいるのに、ビリビリと伝わってくる。



「間もなく開始します、本第二闘技場で行われるエキシビション・マッチ! 今回の特別試合はビッグな挑戦者達がぶつかりあいます! Aサイドからは三年Sクラス所属、学内序列3位! 《狂戦士》の異名を持つ剛剣の使い手、ヨウ=バーサク&序列4位! 絶え間ない斬撃を放つ《流星》のクレメア=サテライト!」



 おぉおおおおおお! という歓声が、通路の先から響いてくる。

 うわぁ……盛り上がってんなぁ。

 まったく、何がそんなに楽しみなんだか。エキシビション・マッチなんてご大層なものじゃない。

 これはただのくだらない喧嘩だというのに。



「続いてBサイドからは、本校における超新星! 勇者の弟ということで、当初から話題になっていましたが、編入試験の一件で三年の間ではちょっとした人気者。さらにテロを鎮圧した先の一件で、《英雄》と呼ぶに相応しい活躍を見せてくれた、一年Sクラス、リクス=サーマル!」



 うぉおおおおお! という歓声が上がり、俺はしずしずと舞台へ上がる。

 ステージに上がった俺は、思わず「げぇ~」と呟いた。

 周囲の客席は、満員。

 それどころか、座りきれない人達が階段の辺りで立って応援している始末。

 なんなら、ステージ下に溢れている観客までいる。

 

 

「うぉおおい。明らかに定員オーバーなんですが」



 もう一度言うけど、これただの喧嘩だよ? 定食代500円+αのための。

 それなのにこんな観客が集まるって、なんなんだよ。



 俺ははぁ、とため息をつきつつ、どう立ち回ろうか煮詰めていく。



「嬉しいぜ。大観衆の中でテメェをぶっ潰せるなんてよぉ」

「……(う~ん、負けるにしても、手を抜いたのがバレちゃいけないよな)」

「速攻でテメェをミンチにして、片付けてやるぜ」

「……(とりあえず、防戦一方で、戦いをギリギリまで引き伸ばすか。その上で負ければ文句も出ないだろ)」

「テメェなんぞ、一ひねりで……っておい! さっきから無視してんじゃねぇぞコラァ!!」

「あん?」



 いきなりヨウが大声を上げたので、俺は思わずそっちを見た。

 そういえば何か言っていた気もするが、考え事していて聞いてない。



「あ、ごめん聞いてなかった。もっかい言って」

「て、テメェ……いい性格してんじゃねぇか」

「ちっ。ほんっとにムカつくんだけど、コイツ」



 ヨウとクレメアの眉が、ひくひくと動く。

 目が血走っている辺り、最初から本気で飛ばしてくるようだ。



「さてと。じゃあ……やるか」



 俺は、少しばかり気を引き締める。

 客観的に実力を推し量って、俺の方が二人より強い……と思う。

 俺の考えでは、序列1位の姉さんと、2位のエレン先輩の間には開きがあり、エレン先輩とこの2人の間にはさらに大きな開きがある。



 かといって、舐めてかかるつもりはない。

 格下とわかりきっていたバルダも、なんかよくわかんない薬でパワーアップしたのだ。

 切り札は、相手に隠しているからこその切り札。

 ジャイアント・キリングなんて話は、この世界では珍しくもないらしい。

 だから……負けるために、そこそこ10%くらいの本気で挑むことにしよう、うん。



 舐めてかかるつもりはないと言いながら、頑張るつもりもない俺であった。



 そんな中、遂に。



「それでは――エキシビション・マッチ開幕。試合開始です!」



 実況の女子生徒の高らかな宣言と共に、観客席から洪水のような歓声が沸いた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...