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第三章 乗り越えろ! 期末試験編
第157話 模擬戦、勝敗の行方
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《三人称視点》
「はぁ……、はぁ……やった?」
これ以上ない最高のタイミングで攻撃を放ったサリィは、肩で息をしながら状況の確認に努める。
水の大砲は地面を大きくえぐり取り、立ち上る土煙と水蒸気で、辺りは曇って視界が悪い。
蜃気楼で不意を突いてからの、真正面かつ意識外から最大威力の魔法をたたき付けた。
しかし――
「まだ、油断はできませんわね」
サリィは、ゆっくりと晴れていく視界の中、目を皿のようにして警戒する。
相手は、王国最高の勇者であるエルザを越えるのではないかとすら噂されるリクスだ。
至近距離から上級魔法をぶっ放そうと、余裕で耐えているのではないかとすら思えてくる。
しかも、極めつけは固有魔法である“俺之世界”を持っていることだ。
あの権能の前では、超級魔法すら児戯に等しい。
破れるとすれば、人を越える力を使うしかないのだ。
あれを使われれば、渾身の一撃も意味を成さない。
「リクスさんは……」
半ば祈るような気持ちで、晴れていく景色の先を見据える。
目の前に――リクスはいない。
つまり、“俺之世界”で防いだわけではないということになる。
十中八九、自分の魔法で吹き飛ばしたと見ていいはずだ。
「や、やった……」
サリィは、思わず気を緩める。
しかし――次の瞬間、眉をひそめることとなった。
「あれ……でも、誰もいない」
そう。
もしリクスを吹き飛ばしていたのなら、魔法が直撃した先に彼が倒れていて然るべきはずなのだ。
しかし、えぐれた地面の先には誰もいない。
まさか――
「避けた!?」
ゾクリと、サリィの背筋に悪寒が走る。
そうとしか考えられない。しかし、どうやって? ゼロ距離で放った攻撃を一瞬で避けるなんて、そんなふざけた芸当を、魔剣や聖魔剣を使わずにできるものなのか。
いやでも、リクスならば、あるいは――
「ご明察」
「っ!」
急に後ろから声をかけられて、サリィは振り返りつつ飛び退いた。
そして、同時に愕然とする。
いつの間にか後ろに立っていたリクスの周りに、大量の光球が浮かんでいたのだ。
赤・青・緑・黄に輝くそれらは、それぞれ初級魔法の“ファイア・バレット”、“ウォーター・バレット”、“ウィンド・バレット”、“サンド・バレット”であるが、量と魔力の密度が桁違いだ。
総数100を越えるそれらが、サリィを狙い定めるように浮いていたのだ。
「どうして……どうやって。まさか、“俺之世界”で防いだあと、“居留守之番人《イレース・ガ―ド》”で気配を消して背後に回り込んだんですの?」
「あー、それも打つ手の一つだけど、今回は使ってない」
手加減するつもりはないけど、この固有魔法も俺の得意技だし、封印した方がいいかなって思ったから。などと言いつつ苦笑したリクスは、種明かしを始めた。
「“身体強化ブースト”と“ラピッド・ムーヴ”だけだとギリ避けられない気がしたから、咄嗟に“ファイア・ボール”と“アイス・ロック”を起動したんだ」
「炎属性と水属性の初級魔法ですわね。でも、それで加速できるんですの?」
「ああ。炎と氷を衝突させて水蒸気爆発を起こして、その爆風の反動を利用したんだ」
「そ、そんなピーキーなことを……流石ですわね。勝ったと思いましたが、今回もワタクシの負けのようですわね。参りましたわ」
サリィは、リクスの行った行為に舌を巻きつつ、降参を示すように両手を挙げた。
あの状況で、複数の魔法を同時に起動できる頭の柔らかさと繊細さに、驚嘆せざるを得なかった。
「確かに、そうすれば一瞬で離脱してワタクシの死角に回り込むこともできますけれど……そんな複雑なこと、ワタクシにはとてもできませんわ」
「できるさ。特に、炎と氷を使った即席の加速は、一撃離脱を得意とするサリィとは相性が良い。ちょっとだけコツはいるけど、すぐに習得できると思うよ」
リクスは、サリィの降参に伴い、空中に浮かせた魔法の弾丸を解除した。
4色の光の弾が、たちまち魔力の残滓となって霧散していく。
「そうですか。是非とも習得しておきたいところですわね」
サリィにとっても、この加速法は知っておいて損はない。
特に、波乱待ち受ける今回の期末試験では。
「じゃあ、これから特訓するか」
「はい。お願いしますわ」
サリィは、リクスに頭を下げる。
彼には恥ずかしくて言い出せないが、これ以上彼の足を引っ張るわけにはいかない。
この平穏な学校生活は、自分自身の手で守るのだ。
そのために、もっと強くならなければ。
そんな思いを胸に、サリィは新たな技の習得に勤しむのであった。
「はぁ……、はぁ……やった?」
これ以上ない最高のタイミングで攻撃を放ったサリィは、肩で息をしながら状況の確認に努める。
水の大砲は地面を大きくえぐり取り、立ち上る土煙と水蒸気で、辺りは曇って視界が悪い。
蜃気楼で不意を突いてからの、真正面かつ意識外から最大威力の魔法をたたき付けた。
しかし――
「まだ、油断はできませんわね」
サリィは、ゆっくりと晴れていく視界の中、目を皿のようにして警戒する。
相手は、王国最高の勇者であるエルザを越えるのではないかとすら噂されるリクスだ。
至近距離から上級魔法をぶっ放そうと、余裕で耐えているのではないかとすら思えてくる。
しかも、極めつけは固有魔法である“俺之世界”を持っていることだ。
あの権能の前では、超級魔法すら児戯に等しい。
破れるとすれば、人を越える力を使うしかないのだ。
あれを使われれば、渾身の一撃も意味を成さない。
「リクスさんは……」
半ば祈るような気持ちで、晴れていく景色の先を見据える。
目の前に――リクスはいない。
つまり、“俺之世界”で防いだわけではないということになる。
十中八九、自分の魔法で吹き飛ばしたと見ていいはずだ。
「や、やった……」
サリィは、思わず気を緩める。
しかし――次の瞬間、眉をひそめることとなった。
「あれ……でも、誰もいない」
そう。
もしリクスを吹き飛ばしていたのなら、魔法が直撃した先に彼が倒れていて然るべきはずなのだ。
しかし、えぐれた地面の先には誰もいない。
まさか――
「避けた!?」
ゾクリと、サリィの背筋に悪寒が走る。
そうとしか考えられない。しかし、どうやって? ゼロ距離で放った攻撃を一瞬で避けるなんて、そんなふざけた芸当を、魔剣や聖魔剣を使わずにできるものなのか。
いやでも、リクスならば、あるいは――
「ご明察」
「っ!」
急に後ろから声をかけられて、サリィは振り返りつつ飛び退いた。
そして、同時に愕然とする。
いつの間にか後ろに立っていたリクスの周りに、大量の光球が浮かんでいたのだ。
赤・青・緑・黄に輝くそれらは、それぞれ初級魔法の“ファイア・バレット”、“ウォーター・バレット”、“ウィンド・バレット”、“サンド・バレット”であるが、量と魔力の密度が桁違いだ。
総数100を越えるそれらが、サリィを狙い定めるように浮いていたのだ。
「どうして……どうやって。まさか、“俺之世界”で防いだあと、“居留守之番人《イレース・ガ―ド》”で気配を消して背後に回り込んだんですの?」
「あー、それも打つ手の一つだけど、今回は使ってない」
手加減するつもりはないけど、この固有魔法も俺の得意技だし、封印した方がいいかなって思ったから。などと言いつつ苦笑したリクスは、種明かしを始めた。
「“身体強化ブースト”と“ラピッド・ムーヴ”だけだとギリ避けられない気がしたから、咄嗟に“ファイア・ボール”と“アイス・ロック”を起動したんだ」
「炎属性と水属性の初級魔法ですわね。でも、それで加速できるんですの?」
「ああ。炎と氷を衝突させて水蒸気爆発を起こして、その爆風の反動を利用したんだ」
「そ、そんなピーキーなことを……流石ですわね。勝ったと思いましたが、今回もワタクシの負けのようですわね。参りましたわ」
サリィは、リクスの行った行為に舌を巻きつつ、降参を示すように両手を挙げた。
あの状況で、複数の魔法を同時に起動できる頭の柔らかさと繊細さに、驚嘆せざるを得なかった。
「確かに、そうすれば一瞬で離脱してワタクシの死角に回り込むこともできますけれど……そんな複雑なこと、ワタクシにはとてもできませんわ」
「できるさ。特に、炎と氷を使った即席の加速は、一撃離脱を得意とするサリィとは相性が良い。ちょっとだけコツはいるけど、すぐに習得できると思うよ」
リクスは、サリィの降参に伴い、空中に浮かせた魔法の弾丸を解除した。
4色の光の弾が、たちまち魔力の残滓となって霧散していく。
「そうですか。是非とも習得しておきたいところですわね」
サリィにとっても、この加速法は知っておいて損はない。
特に、波乱待ち受ける今回の期末試験では。
「じゃあ、これから特訓するか」
「はい。お願いしますわ」
サリィは、リクスに頭を下げる。
彼には恥ずかしくて言い出せないが、これ以上彼の足を引っ張るわけにはいかない。
この平穏な学校生活は、自分自身の手で守るのだ。
そのために、もっと強くならなければ。
そんな思いを胸に、サリィは新たな技の習得に勤しむのであった。
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