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待ち望む景色
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君の見たい風景に、僕は映ってないのだろう
耳障りの良い言葉を並べるも、結局の所僕は彼女に振られただけだ。そこにドラマティックな理由はない。ただ、僕は彼女を愛していた。
貴女の為なら天使にも悪魔にもなれる
そんな思いも所詮は独りよがりに過ぎない。最初は彼女も僕のことを愛していてくれたのかもしれない。しかし、季節を重ねていく程に、僕らの関係は悪くなっていった。
[いつから間違えていたんだろうな...]
月明かりが照らす窓辺で頬杖をつく。あの日以降、彼女に別れを告げられたあの日から、僕は眠れなくなっていた。私生活には勿論影響が出た。仕事場でも抜け殻のように力が入っておらず、今までしてこなかったようなミスを数えきれない程した。アルコールを摂取し、無理矢理にでも睡魔を呼び寄せないと、僕は眠れなくなっていた。僕の体は更にボロボロになっていった。
いつまでも耽っていても仕方が無い。冷蔵庫に詰められた缶ビールを取りに行こうとしたその時だった。
ーー
僕の携帯の通知が鳴った。仕事用の携帯とは違う音色だった。それはつまり僕の私用の携帯の通知音ということを表している。誰かから連絡が来るのは久しぶりだった。それこそ、最後に僕の携帯が鳴ったのは彼女に別れを告げられたあの日なのだから。僕は少し早まる心臓を抑えながら携帯を手に取り画面を確認した。
-吉乃香織-
そこには今でも愛している彼女の名前があった。期待していた事と全く同じ事が起こり、僕の体は鼓動をどんどん早まっていた。メッセージの内容を見る為、パスワードをそそくさと打ち込み、LINEのアイコンを何回も押した。
香織からは長い一文が送られていた。
-突然の連絡でごめんね。それとこの前は、急に別れようなんて言って...本当に謝る事ばっかだよ。とにかくごめんね。今日連絡をしたのは、翔と復縁したいとか、そういったことではありません。ただ、翔に本当の事を伝えたいと思ったからです。翔も知っていると思うけど、私は心臓に病気を患っています。翔には死ぬような病気じゃないと伝えましたが、あれは嘘です。実はここ一年で急に悪化してしまったのです。翔がせっかくデートに誘ってくれたのに、行けたなかったのはそう言う理由があったからです、ごめんなさい。ここからが本題なのですが、私は手術を受けることになりました。その為に私は海外に行きます。日本よりも高度な医療を受ける為です。成功するか失敗するかは分かりません。ですが、失敗した時は、私の命が終わる時です。もしも失敗したら、私はいきなり翔の前からいなくなることになってしまうので、私はあの日翔に別れを告げました。自分勝手でごめんなさい。手術が成功したとしても、リハビリに時間がかかるらしいです。だから、もしも。もしも、私の手術が成功して、日本に帰ってきた時...翔がまだ私のことを愛してくれていたら、また会ってください。これで最後になるかもしれないので、一応挨拶をしようと思います。さようなら。そして、また会いましょう。私の大好きなあなたへ...
P.Sこの文は私が頼んで家族に打ってもらったものなので、返信しても私は返せません。家族にも、この文を送ったら携帯の電源は落としてくれと頼んでおきました。最後まで自分勝手でごめんなさい-
...
そういうことだったのか。僕は[待ってるよ]とまで打った文字を消した。香織は、僕に心配をかけないように、僕の前から姿を消したんだ。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。様々な思考が、彼女への想いが交差した。僕にできることは香織の手術が成功するように祈ることだけだ。リハビリに何年かかろうとも、僕は香織を待ってみようと思う。香織が僕を愛してくれているように、僕も彼女を愛し続けようと思う。
その日僕は久しぶりに熟睡ができた。数え切れない程の涙を流して、疲れてしまったのだろう。僕は香織を待ち続けた。桜が咲き、散った。雨が降り、止んだ。花火が上がった、紅葉が街を紅く染めた、そして雪が街を白で埋め尽くした。また、桜が咲いた。僕は彼女を待ち続けた...
.....
....
...
..
.
仕事はそこそこ順調だ。以前に比べれば見違えるようにやる気が出た。僕は今でもあの日の夜を思い出す。
[僕は待ち続けたんだ...]
そう言葉を溢し、僕は隣にいる彼女を抱きしめた。
耳障りの良い言葉を並べるも、結局の所僕は彼女に振られただけだ。そこにドラマティックな理由はない。ただ、僕は彼女を愛していた。
貴女の為なら天使にも悪魔にもなれる
そんな思いも所詮は独りよがりに過ぎない。最初は彼女も僕のことを愛していてくれたのかもしれない。しかし、季節を重ねていく程に、僕らの関係は悪くなっていった。
[いつから間違えていたんだろうな...]
月明かりが照らす窓辺で頬杖をつく。あの日以降、彼女に別れを告げられたあの日から、僕は眠れなくなっていた。私生活には勿論影響が出た。仕事場でも抜け殻のように力が入っておらず、今までしてこなかったようなミスを数えきれない程した。アルコールを摂取し、無理矢理にでも睡魔を呼び寄せないと、僕は眠れなくなっていた。僕の体は更にボロボロになっていった。
いつまでも耽っていても仕方が無い。冷蔵庫に詰められた缶ビールを取りに行こうとしたその時だった。
ーー
僕の携帯の通知が鳴った。仕事用の携帯とは違う音色だった。それはつまり僕の私用の携帯の通知音ということを表している。誰かから連絡が来るのは久しぶりだった。それこそ、最後に僕の携帯が鳴ったのは彼女に別れを告げられたあの日なのだから。僕は少し早まる心臓を抑えながら携帯を手に取り画面を確認した。
-吉乃香織-
そこには今でも愛している彼女の名前があった。期待していた事と全く同じ事が起こり、僕の体は鼓動をどんどん早まっていた。メッセージの内容を見る為、パスワードをそそくさと打ち込み、LINEのアイコンを何回も押した。
香織からは長い一文が送られていた。
-突然の連絡でごめんね。それとこの前は、急に別れようなんて言って...本当に謝る事ばっかだよ。とにかくごめんね。今日連絡をしたのは、翔と復縁したいとか、そういったことではありません。ただ、翔に本当の事を伝えたいと思ったからです。翔も知っていると思うけど、私は心臓に病気を患っています。翔には死ぬような病気じゃないと伝えましたが、あれは嘘です。実はここ一年で急に悪化してしまったのです。翔がせっかくデートに誘ってくれたのに、行けたなかったのはそう言う理由があったからです、ごめんなさい。ここからが本題なのですが、私は手術を受けることになりました。その為に私は海外に行きます。日本よりも高度な医療を受ける為です。成功するか失敗するかは分かりません。ですが、失敗した時は、私の命が終わる時です。もしも失敗したら、私はいきなり翔の前からいなくなることになってしまうので、私はあの日翔に別れを告げました。自分勝手でごめんなさい。手術が成功したとしても、リハビリに時間がかかるらしいです。だから、もしも。もしも、私の手術が成功して、日本に帰ってきた時...翔がまだ私のことを愛してくれていたら、また会ってください。これで最後になるかもしれないので、一応挨拶をしようと思います。さようなら。そして、また会いましょう。私の大好きなあなたへ...
P.Sこの文は私が頼んで家族に打ってもらったものなので、返信しても私は返せません。家族にも、この文を送ったら携帯の電源は落としてくれと頼んでおきました。最後まで自分勝手でごめんなさい-
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そういうことだったのか。僕は[待ってるよ]とまで打った文字を消した。香織は、僕に心配をかけないように、僕の前から姿を消したんだ。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。様々な思考が、彼女への想いが交差した。僕にできることは香織の手術が成功するように祈ることだけだ。リハビリに何年かかろうとも、僕は香織を待ってみようと思う。香織が僕を愛してくれているように、僕も彼女を愛し続けようと思う。
その日僕は久しぶりに熟睡ができた。数え切れない程の涙を流して、疲れてしまったのだろう。僕は香織を待ち続けた。桜が咲き、散った。雨が降り、止んだ。花火が上がった、紅葉が街を紅く染めた、そして雪が街を白で埋め尽くした。また、桜が咲いた。僕は彼女を待ち続けた...
.....
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仕事はそこそこ順調だ。以前に比べれば見違えるようにやる気が出た。僕は今でもあの日の夜を思い出す。
[僕は待ち続けたんだ...]
そう言葉を溢し、僕は隣にいる彼女を抱きしめた。
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