異世界転移ノ魔術師々

両翼視前

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第二襲 災炎嵐龍編

仮面を割れ ――マスクド・ブレイク――

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 息が出来ないほど熱い。苦しい。
 視界がだんだんぼやけていく。

 仮面の女からの右手に顔を掴まれながら、静寂の森へ突っ込んでいた。
 紅い右手から炎の魔力を感じるから熱く感じる。
 魔力を持たない人間であれば、速攻で顔が焼き焦げただろう。

 しかし、最悪にして最高のチャンスだった。

「どうしたの、――マナ・リアで会った時と随分違うじゃない?」

 至近距離で彼女の魔力オーラを見ることが出来る。
 ぼやけた視界から溢れ出るオーラは赤く熱く迸っていて――邪魔するように黒がほんのりと差していた。
 太陽のような暖かさは何処に行ったんだ……?
 そう疑問に思いながらも、顔に魔力をひたすら送っていた。少しでも熱さを和らげるためだ。

「その顔は恐怖? 畏怖? 恐々? ――どちらにしろ今日、焼き殺されるのよッ!」

 声色を聞いてまずいと判断する。事実、右手の熱が徐々に徐々に熱くなっていた。
 旋風刃に魔力を送らせて、自然に溶かすように風にする。

(――行け……! かぜやいば……!)

 キリエは喋れないからそう心の中で念じるように呟く。

 風の刃1本が姿を現し、仮面の女の右手を襲って、つむじ風のように右腕を切りつけた。

「ッ――――!」

 直後、右手を離されて――。

 ――ッグハァッ……!

 離された勢いで背後の大樹に衝突してしまう。
 徐々に合ってくる視界と口から湧き出てくる自分の血の味。
 ぺっ……と土に向かって吐くと、やはりというべきか血だった。

 ふと、隣を見ると遺体がある。
 白骨化が進んでいて、綺麗に首が真っ二つに切り落とされていた。
 目からウジ虫がうじうじとこんにちはと現れる。
 きっと彼なりの挨拶なんだろう。こんにちは。


 それに、――この奥で血が乾いたかのような匂いがする。


「そんな魔力じゃ――私の右腕、切り落とせないわよ」
 仮面の女は不敵に笑いながらこちらに向かってくる。
 切りつけた右手は血がポトリポトリと落としている。しかし、切り落とすわけにはいかなかった。

「死体の処理、下手くそなんだな……! 炎魔術使う癖に……っ!」
 キリエは不敵に笑いながら彼女に言うと、不満足そうな口になって、
「炎魔術――【フレイン】」
 彼女は麗しい右手を前に伸ばすと、フレインを遺体のほうへ発動させて燃やした。

 目の前で轟轟と紅く燃える炎の音。

「あら、忘れてたわ――次は、貴方よ」
 バチバチとキリエの目の前で火花が飛び散っている。
「残念だが、仲間と交わした約束がある。だから、死ねない」

「そぉ……――貴方、質問があるわ」

 彼女はそう言いながら、こちらに歩いて向かってくる。

「貴方は異世界から来た人間よね……? ――『魔勇伝~異世界からやってきた俺がなんでもできて最強だった件~』では、異世界から来た人間はこの世界で最強チートになったと書いてあるわ」

 そんなタイトルは聞いたことがないし、見たこともない。
 ムシャノ村にそんな名前の書物なんてなかったはず。

「そして、英雄になって――正義を振りかざした」

 徐々に徐々に迫ってくる仮面の女を見て、チャンスを伺う。

「やがて、正義は暴走しマナ・リア全土が絶望した――だから、総力を上げて封印しようとした。そして……」

 ――今だ……!
「風魔術! 【ウインデ】!」

 左手から魔力をほんの少しだけだそうと、腕を前に出す。
 流れ出た魔力は風となりて、――仮面の女の顔に向かって行った。

 すると、女は悠然と顔を傾けるようにして避けた。

「話をしている最中なのに酷いわ――」
「――発動! 行けッ! 風の刃ッ!」
 残りの7本の風の刃が姿を現すと、女の仮面を目掛けて向かって行った。

「――――ッ!」

 直撃――作戦通り!

「はぁ……、はぁ……キリエは……昔話なんて分からない……」

 私は息を切らしながら体制を立て直そうと立ち上がりながら言う。
 真っ二つになるように――と願った風の刃は仮面をひたすら切り続け、ついに切り落とされた。

「なぁ……、ホムラ姉ェなのか……?」

 左側の仮面がポトリと落ちたのを顔を上げて見た時――炎を纏った斬撃がキリエの方へ飛んでくる。

 間一髪――だった。
 私は反射神経がいいから避けられたが、背後の大樹が焼き切られてしまう。

「その名で――呼ばないでッ!」
 女は左手で残っている仮面を抑えながら、右手で永炎刃を強く振りかざしていた。
 その半分の顔を見て、絶句した。

「ホムラ……姉ェ……!」

 やはり。
 仮面の女の正体――ヤシャノ村で一番大好きだった義姉のホムラ・トモエだった。
 受け入れがたい現実を直視して脳は拒否反応を起こす。

 それでも、今は仲間と生きて帰るという約束を果たすために戦うしかない。
 キリエの旋風刃に刃が戻ってくると、即座に中段の構えを取る。

「呼ぶなッ! 呼ぶな呼ぶなッ! その名を呼ぶなッ! ――私が狂う! 狂ってしまう!」

 ヤシャノ村にいた時とは違うホムラ姉ェの声色は別の人物が混ざったかのようだった。

 左目から彼女が持っていない魔力オーラが溢れ出ている。

 昔、彼女は水のように透き通った綺麗な瞳で村一番の美人だと言われていた。

 しかし、今の瞳はどろっとした血の色が差した感じでおかしくて――彼女は左目から一滴、綺麗な雫が流れ出ていた。

 直後、こちらに目がギロっと向くと、


 ――炎を纏った紅い斬撃がキリエの方へ飛んでくる。


 必死の思いで旋風刃で受け止めたはいいが、明らかにさっき飛んできた斬撃の魔力量が違う――熱いし重い。

 炎と風は互いに共鳴するかのように熱風となり、魔力を持たないものを吹き飛ばす。

 紅色に黒を差したような斬撃の魔力オーラを感じて、心がキュッと絞められるほど苦しくなる。

 今、ホムラ姉ェは苦しんでいる。
 ならば、私は――――。

 重い腕に魔力を込めて、安全だと思う方へ弾き飛ばす。
 紅い斬撃は紅蓮の柱となって森を燃やし尽くした。

 自分が考えた作戦の為に血が乾いたような匂いがするほうへ走り出す。

「逃げても無駄よ――今日、この場で殺して――」

 仮面の女は私の方へ追いかけてくる。

 きっとその先はだろうから――そこで決着けりをつける!
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