あの頃

瑠菜

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ドキドキする

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6章

────次の日
ゆまと一緒に登校する。だけど、今日の私たちはいつもとは違う。なぜかって?
私「ゆま!早くしないと遅刻だよー」
ゆま「ま、待ってよー」
このとおり、遅刻ギリギリで走っているのだ!
(ま、私のせいだけどね?)

下駄箱につく。急いで上靴を出す。
私の「痛っ!」
手から熱いなにかが流れる。
(血だ!)
ゆま「瑠菜?って、どうしたのその指!」
ゆまはすぐさま上履きのなかを見る。
ゆま「これ、画鋲じゃない?」
ゆまの顔が真っ青になる。
(痛っ、深く切りすぎたな。)

ゆまがどんどん怒りの顔に変わってく。
ゆま「ねぇー瑠菜?もしかしていじめられてんじゃないの?」
(や、ヤバい!)
私「あはは、そんなことないよー!たまたま画鋲が入ってだけだよ!」
ゆま「そんなことなっ………」
私「そういうことにしといて!お願い、だから………」
廊下で叫んでいた私たちは職員室の前だと気づいて静かにする。
ゆま「とにかく、瑠菜は保健室へ行って?先生には私が伝えとく。」
私「うん、ありがとー」

─────保健室

ガラッ
私「すみませーん、先生いますか?」
中に入る
保険の先生「あら?櫻井さん。今日はどうしたの?朝の会始まっちゃうわよ?」
私「あの、手を切っちゃって………」
先生に手を見せた。
先生「すごく深く切ってるじゃない!早く手当てしましょう!」
先生は手際よく手当てをしてくれた。

先生「櫻井さん。この傷は普通に切ったものではないですよね?何かあったんですか?」
先生は真剣な顔でこちらを見つめた。
先生のその瞳に負け、「実は……」と話始めた。
私「────────という訳なんです。」
下を向いた。
先生「櫻井さん。それは大変でしたね。親御さんに相談しましょうか?」
私は焦った。
(これ以上いじめられるのは嫌だ!)
私「大丈夫です!まだそんなにやられてないので。誰にも言わない下さい。」
きっと私は泣きそうな顔をしていたんだと思う。

ため息が聞こえた。
先生「わかったわ。櫻井さんがそこまで言うなら。でも、その彼氏には絶対に伝えること!」
先生の怖い顔がそこにはあった。
(あの優しい先生が、珍しく怒ってらっしゃる!)
私はしぶしぶ「分かりました……」と答えた。

────廊下
(どうしよう。湊斗に話すのは嫌だなー。)
私はどうすればばれないかを頑張って考えた。
(そうだ!言わなければいいんだ!)
いい考えだと思い、そうすることにした。
だって、あんな事件が起きるなんて予測もしてなかったから。

────教室
ガラッ
教室のドアを開けた。
私「えっと、遅れました。」
みんなが一斉にこちらを向く。
(うっ、あんまり見ないで!)
顔を赤くしながら席に座った。

───1時間目終わり
湊斗「おい、瑠菜?どうしたんだよ。」
終わった直後、湊斗は心配そうにこちらを見てた。
(あー、心配してるなー)
私は必死に作り笑いした。
私「ん?なんでもないよ!ただ、少し手を切っただけ」
『ほら!』といわんばかりに湊斗の顔に近づけた。
湊斗「なんだ、それだけか。」
湊斗は安心した表情をした。
だけど私は、『それだけか』の言葉が心に刺さった。自分で決めたくせに。
(ダメダメ!弱気になっちゃ!)
そのあとの授業は頭に入ってこなくて、あっという間に放課後になった。
(ダメだなー、全然分からなかった。どうしよう………)
悩んでいると目の前に人影ができた。
(誰だろ?)

ガン!

何かで殴られた。
私「いっ!」
視界が歪む。何も見えない。

ドサッ

倒れた。

私「ん、」
(頭がガンガンする。てゆうかここどこ!)
手足を縛られている。
(う、動けない!どうしよう!)
すると、後ろから足音が聞こえてきた。
私「だ、誰なの!早く放してよ!」
必死に叫んだ。だけどこの中でずっと響くだけ。
(怖い。助けて)

コツ

と私の目の前に足音が止まった。
おそるおそる見上げると、3人の女生徒が立っていた。
(この人たち、見たことあるような…)
私は思い出した。あのとき暴言を吐いた女子たちだと。
私「何か用?てか、早くこの縄ほどいてよ!」
睨み付けると、一人の女子が一歩出てきた。

女生徒1「あんた、湊斗くんと付き合ってるんでしょ?怪我したくなければ早く別れてよ!」
おもいっきり殴られた。
(いっ!なんで殴るの!)
私「確かに湊斗とはこの前から付き合い始めてる。だけど、別れない!絶対にね!」
そういうとまた違う女子が光る何かを私に突きつけた。

女生徒2「バカなの?あなた。怪我するってことなのよ?」
(カッターだ!でも、それでも、)
私「私が怪我しても湊斗とは別れない!」
女生徒3「チッ!うるせんだよ!!そんなに怪我したいなら傷をつけてやるよ!」
カッターを振る。
(っ!助けて、湊斗!)

ガラッ

扉が開く音がした。
眩しい光から息を切らした男子が立っていた。
私「湊斗!」
女生徒たちが焦る。
湊斗「お前ら、俺の瑠菜に何してんだよ!」
湊斗が叫ぶ。
女生徒「わ、私たちはなにもしてないよ!」
湊斗「嘘つけ!じゃあ、なんでこいつ血を流してるんだよ!しかも泣いてるし!てめぇら絶対に許さねぇ!」

湊斗はすごく怒っていた。
女生徒「ご、ごめんなさい!」
女生徒たちが逃げる。
湊斗は私に近寄り、腕の縄をほどいてくれた。
私「ごめんなさい……」
下を見たまま答えた。
私「どうして私がここにいること分かったの?」
湊斗「先生がお前がいじめられてるって言われて、お前の姿が見えないことに気づいてそこらずっと探してたんだよ!」
湊斗の顔は赤く、怒っていた。
(悪いことしちゃったな)
湊斗「なんで俺に隠してたんだよ!」
怖い顔でにらまれた。
私「本当にごめん。心配かけたくなくて……」
湊斗が来てくれた安心感で、目から涙が出てきた。

私「ご、ごめん。怖かったから、安心して……」
溢れても溢れても止まらない涙を何度も手で拭う。
すると、暖かい手が頬に触れた。
湊斗「そんなに泣くなって……俺がいるから大丈夫だろ?」
顔をあげると、さっきのような冷たい目はそこにはなく、優しく微笑んでる湊斗の顔があった。
私「うん、ありがとう……」
それでもまだ涙は止まらなくて、湊斗の暖かい胸の中でしばらく泣いていた。

─────しばらくたって
湊斗「瑠菜?そろそろ落ち着いてきたか。」
すすり泣きに変わっていた私に湊斗は心配そうに覗きこんだ。
私「うん。だいぶましになってきた。」
エヘヘと無理やり笑う。
湊斗「そっか、そろそろ帰るか?」
私「うん。早く帰らないとお母さんに怒られちゃうから。」

─────帰り道
私「ねぇ、湊斗。私は大丈夫だからもうついてこなくていいよ?」
あきれた顔で湊斗を見る。
湊斗「あいつらにまた襲われるかもしれないから、家まで送る。」
さっきからずっとこの会話を続けている。
(心配だからって送らなくても……)
私「もうそろそろ家だから、本当にここまでで大丈夫だよ。湊斗の家、逆方向じゃん。」
湊斗「でも、しんぱ───」
私「大丈夫だから!ね?」
湊斗の言葉を遮って私は続けた。
私「湊斗の家族に心配させたくないし、それに私は湊斗よりもずっーーと大切に思ってるから。」
(心配なの!私は湊斗が好きだから)

湊斗は驚いた顔をして笑ってきた。
湊斗「プッ!あはははっ!お前、面白いな。俺よりも大切に思ってるとかないから。まぁ、母さんが心配するのはわかるからな……じゃあ今日は帰るな。」
心配そうな顔をして少し微笑んだ。
私「ありがとう。また、明日ね」
湊斗と別れたあと、今日のことを振り返った。私「ちょっと待って、色々とやばくない?」
(抱きついて泣いて、うわー思い出すだけで恥ずかしい。)
そんなことを思いながら家に帰ると、お母さんに「顔赤くしてどうしたの?」と心配された。
(どうしよう。どんどん湊斗の色に染められてく……)
ドキドキする胸を押さえつけ眠った。
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