15 / 37
望月
茜 セイレーン
しおりを挟む
あたしは咲冬茜、千葉県の香取に住んでいました。上に二人のお兄ちゃんがいました。あたしが小さい頃に上のお兄ちゃんが銃に撃たれたのを見てから、しゃべれなくなっちゃったんですよね。自分でも口がきけないのが不思議だけどずっとこんな感じです。上のお兄ちゃんは銃で撃たれて死んじゃったけど、下のお兄ちゃんがあたしの面倒をずっと見てくれてました。上のお兄ちゃんは藤丸兄ちゃん、下のお兄ちゃんは菊丸兄ちゃん。二人とも大好きだったから、藤丸兄ちゃんいなくなって悲しかったなー。この前、菊丸兄ちゃんが危ないからっていって、あたしを茨城まで連れてきてくれました。何が危ないのかよくわからないけど、お兄ちゃんがいれば安心だよね。
「茜、もう具合いいのか?」
菊丸兄ちゃんがあたしのこと心配してくれます。
『だいじょうぶだよ。ルナちゃんのお陰ですっかり良くなったよ』
あたしは手話でお兄ちゃんに応えます。
「そっか、よかったよ。悪いな、お前に大変な思いさせてよー」
『そんなことないって! 気にしない、気にしない! それより今からお部屋見に行くんでしょう?』
「ああ、そうだ! さっき電話掛けたらすぐに来ていいっていうからさ! 助かるよなー、奇特な大家さんだよ」
『うん、そうだね! あとルナちゃんの先輩にもお礼していかなきゃね』
「そうだな、皆川さんも本当に良くしてくれたもんなー」
あたしとお兄ちゃんは泊めてもらったホテルをチェックアウトすることにしました。フロントのところに、ルナちゃんの先輩のお姉さんがいたから挨拶しにいきました。
「あの、皆川さん! マジ助かりました。この恩は必ずお返しします」
「いえいえ、お客様お気になさらないでください。ぜひまたご利用ください」
「はい! また厄介になるかもしれませんがその時はよろしくお願いします」
「はい、お待ちしております。茜ちゃんもまた来てね」
あたしはお姉さんにそう言われて、何回も頷いてみた。それ以外にうまく伝えられそうにないし。
外に出て、水戸駅の北口に向かって歩いていきました。北口に着くとバスロータリーへ行って、お兄ちゃんとバスに乗りました。あたしたちは新しい家を見つけることができました。お兄ちゃんの話だと安くて、面倒くさくない家らしい。バスは一〇分くらいで目的地に着きました。
バスを降りると路地裏に向かって歩いた。五分もかからないであたしたちの新しい家候補が見えた。古い木造二階建で《シェアハウスゆの》って書いてある。お兄ちゃんはその家のドアを開けた。
「こんちわー、電話した咲冬です!」
お兄ちゃんの声に反応して入り口のソファーに座っていたおばちゃんが振り返った。
「はーい、いらっしゃい。待ってたよ。内見かい?」
「そうっすね。できたら今日から入居させてもらえると助かるんすけど」
「空いてるから今日からでもOKだよ。ただねー、空き部屋の掃除まだしてないから自分で掃除してもらうことになるけど」
おばちゃんはテキトーそうな感じだったけど悪い人じゃなさそうだ。あたしとお兄ちゃん二人だと怪しいと思われてもしょうがないのになにも聞かないでくれた。
あたしたちは新居になる部屋を見せてもらった。掃除してないっていってたけど部屋はきれいだった。
「ああそうだ! あの子、隣だからってついでに掃除してくれてるんだったね!」
「お隣さんいるんですか?」
「ああ、いるよ! ちょっと変わってるけど悪い子じゃないから安心していいよ。バンドもしてて、元気なんだ」
あたしはお隣にバンドやってるお姉さんがいると聞いてワクワクした。いったいどんなお姉さんなんだろう?
「それじゃ、咲冬さん? 色々事情はあるだろうけど今日から入居でいいかい? 妹さんと一緒の部屋だから少しせまいかもしんないけど、寝るだけなら問題ないだろう」
「はい、部屋お借りします! 湯野さんこれからよろしくお願いします!」
それからお兄ちゃんは湯野さんと部屋を借りるための簡単な打ち合わせをした。お金を払うと湯野さんはニッコリ笑ってこう言った。
「ようこそ咲冬さん! 今日からここがあんたたちの家だからね! 困ったことあったら言いな、お金かからないことならなんとかしてあげっからねー」
こうしてあたしとお兄ちゃんの新生活が始まった。早くお隣のバンドマンさんに会いたいなー。
「茜、もう具合いいのか?」
菊丸兄ちゃんがあたしのこと心配してくれます。
『だいじょうぶだよ。ルナちゃんのお陰ですっかり良くなったよ』
あたしは手話でお兄ちゃんに応えます。
「そっか、よかったよ。悪いな、お前に大変な思いさせてよー」
『そんなことないって! 気にしない、気にしない! それより今からお部屋見に行くんでしょう?』
「ああ、そうだ! さっき電話掛けたらすぐに来ていいっていうからさ! 助かるよなー、奇特な大家さんだよ」
『うん、そうだね! あとルナちゃんの先輩にもお礼していかなきゃね』
「そうだな、皆川さんも本当に良くしてくれたもんなー」
あたしとお兄ちゃんは泊めてもらったホテルをチェックアウトすることにしました。フロントのところに、ルナちゃんの先輩のお姉さんがいたから挨拶しにいきました。
「あの、皆川さん! マジ助かりました。この恩は必ずお返しします」
「いえいえ、お客様お気になさらないでください。ぜひまたご利用ください」
「はい! また厄介になるかもしれませんがその時はよろしくお願いします」
「はい、お待ちしております。茜ちゃんもまた来てね」
あたしはお姉さんにそう言われて、何回も頷いてみた。それ以外にうまく伝えられそうにないし。
外に出て、水戸駅の北口に向かって歩いていきました。北口に着くとバスロータリーへ行って、お兄ちゃんとバスに乗りました。あたしたちは新しい家を見つけることができました。お兄ちゃんの話だと安くて、面倒くさくない家らしい。バスは一〇分くらいで目的地に着きました。
バスを降りると路地裏に向かって歩いた。五分もかからないであたしたちの新しい家候補が見えた。古い木造二階建で《シェアハウスゆの》って書いてある。お兄ちゃんはその家のドアを開けた。
「こんちわー、電話した咲冬です!」
お兄ちゃんの声に反応して入り口のソファーに座っていたおばちゃんが振り返った。
「はーい、いらっしゃい。待ってたよ。内見かい?」
「そうっすね。できたら今日から入居させてもらえると助かるんすけど」
「空いてるから今日からでもOKだよ。ただねー、空き部屋の掃除まだしてないから自分で掃除してもらうことになるけど」
おばちゃんはテキトーそうな感じだったけど悪い人じゃなさそうだ。あたしとお兄ちゃん二人だと怪しいと思われてもしょうがないのになにも聞かないでくれた。
あたしたちは新居になる部屋を見せてもらった。掃除してないっていってたけど部屋はきれいだった。
「ああそうだ! あの子、隣だからってついでに掃除してくれてるんだったね!」
「お隣さんいるんですか?」
「ああ、いるよ! ちょっと変わってるけど悪い子じゃないから安心していいよ。バンドもしてて、元気なんだ」
あたしはお隣にバンドやってるお姉さんがいると聞いてワクワクした。いったいどんなお姉さんなんだろう?
「それじゃ、咲冬さん? 色々事情はあるだろうけど今日から入居でいいかい? 妹さんと一緒の部屋だから少しせまいかもしんないけど、寝るだけなら問題ないだろう」
「はい、部屋お借りします! 湯野さんこれからよろしくお願いします!」
それからお兄ちゃんは湯野さんと部屋を借りるための簡単な打ち合わせをした。お金を払うと湯野さんはニッコリ笑ってこう言った。
「ようこそ咲冬さん! 今日からここがあんたたちの家だからね! 困ったことあったら言いな、お金かからないことならなんとかしてあげっからねー」
こうしてあたしとお兄ちゃんの新生活が始まった。早くお隣のバンドマンさんに会いたいなー。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる