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下弦の月
月姫 島の海
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私は久し振りに姉と電話で話した。彼女は思っていたよりずっと穏やかで、私のことを気遣ってくれた。ヘカテーに抱いていた嫌悪感・コンプレックスもほとんど感じなかった。やはり時間が解決してくれることは多いんだと思う。父さんのことも時間が解決してくれて、普通に帰ってくればいいのに……。
「なんかよかった! 今までさぁ、ずっとあんたたち仲悪かったからウチもどう接していいのか正直考えてたんだよね。ルナにウラの話するとすごく不機嫌になるしさ……」
茉奈美はやれやれといった感じにそう言うとため息をついた。私は茉奈美に相当気苦労掛けたんだろうと思う。
「ほんとだね……。なんかお姉、すっかり大人っぽくなったね。話してみてすごく安心したよ。どうしようもない人だと思ってたけど、人って変わるんだね……」
「今更だけど、ウチは割とこまめにウラと連絡取ってたんだよ? だからどうしてるのかはそれなりに知ってたんだ。ルナには言ったことないけどさ……」
「そんな気はしてたよ……」
そう、そんな気はしていた。茉奈美はどちらかというと私よりはヘカテー寄りな気がする。幼い頃から学校の成績も趣味趣向もヘカテーに近かった。いくら私と仲良くしてくれているとはいえ、ヘカテーを放っては置かないだろう。
「ウラもあんたと仲直りしたがってたんだよ? あいつは不器用で感情に任せるところあるけど、根はいい奴だからね。まぁ確かに、ウラが中退した頃はあいつかなり荒れてたから仕方ない気はするけどね……」
「ねえ茉奈美? 私とお姉ってまた一緒に住んでやって行けるかな? お姉には帰る帰らないは任せるって言ったけど、ちょっと不安もあるんだよね……。また前みたいにお互いに傷つけちゃいそうでさ……」
私がそう言うと茉奈美は呆れるように笑った。
「あんたらは大丈夫だよ! それにもし喧嘩したらウチか麗奈に言えば良い! 仲裁だってするし、愚痴だって聞いてあげるから! とにかくルナは一人で抱え込まないこと!」
茉奈美にそう言われて私は苦笑いした。今まで自然体でやってきたつもりだったけど、気がつけばすっかり気持ちが硬くなっていた気がする。
ヘカテーと話して、私はすっかり憑き物が落ちたような気持ちになっていた。今まであれほど毛嫌いしていた姉なのに、今は会って色々話したいと思う。ヘカテーはどんな生活を送っているんだろう? どんな友達がいて、どんなバンド活動をしているんだろう? 私は今まで遠いところにいた姉が急に身近になったように感じていた。
それから私の部屋で茉奈美と色々な話をした。中学校の頃の卒業アルバムがあったので二人で懐かしみながら眺めた。
「ほら見てよ! 麗奈めっちゃしゃくれてる。 あいつ写真写り悪いんだよねー」
「ほんとだね。麗奈も普通にしてればけっこう可愛いのに、いっつも変顔で写るよね」
「あいつは照れ隠しのつもりなんだろうけどさぁ。でもこれはウケる」
卒業アルバムには私たちの思い出がぎっしりと詰まっている。私は写真があまり好きじゃないからカメラからよく逃げていたけど、それでも何枚かは写っていた。写っている私はどれも不器用な笑い方をしていた。茉奈美はページを捲りながら懐かしんでいる。
「あ、これウラじゃん!? あいつブッサイクな顔して写ってんね」
茉奈美に言われて見た写真のへカテーはかなりおかしな顔をしていた。馬鹿みたいな表情でカメラを睨みつけるように写っている。
「これね……。お姉はいっつもこんなだよ。この時だって修学旅行だって言うのに校則無視して、先生に怒られたんだよねー」
「アハハ、そうだったね! つーかウチもこんときは一緒に先生に怒られた気がする」
修学旅行のとき、ヘカテーは毎度のことで問題を起こしていた。まず、修学旅行にギターを持って行って先生に取り上げられ、宿泊先では夜中に彼氏の部屋に忍び込んで説教されていた。懐かしいな……。
「ただいま……」
ヘカテーは生徒指導の先生にたっぷり絞られて部屋に戻ってきた。
「お姉さぁ、また怒られたの?」
中学三年の時、私とへカテーは同じクラスだった。そして修学旅行の班もなぜか一緒になっていた。先生としてはお姉のお目付役として私を選んだのだろうけど、彼女はそんなことおかまいなしに好き勝手やっていた。
「うん、卓ちゃんとこに会いに行ったらバッタリ、センコーと出くわしてさー。いやーついてないなー」
「頼むからさぁ、あんまり問題起こさないでね? 私もあとで先生にイヤミ言われちゃうんだよ?」
「そんなこと言ったってさぁ、せっかく京都まで来たのに彼氏と何もなしじゃつまんないよ?」
ヘカテーは全く悪びれる様子がなかった。私はもう眠かったので諦めて布団に潜り込んだ。
翌日は京都市内を班行動で回ることになった。二条城や清水寺なんかを班で見学して回る。ヘカテーは神社とか寺に全く興味がないようで、ただ適当にプラプラしているだけのようだ。
「ルナちゃーん! 清水寺お参り終わったらご飯にしよー!」
同じ班の子に言われて私もお昼ご飯をみんなで食べることにした。
「あれー? ウラちゃんどっか行っちゃったね」
「え!」
いつの間にかへカテーが迷子になったようだ。
私は同じ班の子たちに先に行ってもらうことにしてへカテーを探し始めた。清水寺の周りを探し回ったけど、なかなかヘカテーは見つからない。
さんざん探し回ってようやく彼女を見つけることができた。
「お姉!!」
私は大きな声で彼女を呼んだ。
「ああ、ルナ! どうしたの慌てて?」
ヘカテーはマイペースにそう言うと私の方に振り返った。
「『どうしたの』じゃないよ!? 探したんだから! 駄目だよ! 班で行動してるんだから勝手に出歩いちゃ!」
「ごめんごめん。ちょっと気になる神社があってさぁ」
ヘカテーはそう言うと小さな鳥居を指差した。
その神社はとても小さく、路地裏にひっそりと祀られていた。
「だからって勝手な行動はやめてよ!」
「だから謝ってるでしょ! ごめんて! ねえルナ、せっかくだから一緒にお参りしてこうよ」
ヘカテーは言い出したら聞かないから私は渋々、彼女と一緒にその神社にお参りすることにした。
「さっき、地元のおばさんに聞いたんだけどさ。この神社は縁結びの神社なんだってさ! 恋愛とかばっかじゃなくて、色々な縁を結んでくれる神様みたいだよ!」
「ふーん……。そうなんだ。お姉、彼氏いるのに縁結びになんで行きたいの?」
私は素朴な疑問を口にした。
「だーかーらー。恋愛以外の縁も結んでくれるの! 卓ちゃんのことは別だよ、別!」
神社の拝殿に着くと私とヘカテーは賽銭箱にお賽銭を入れた。珍しくへカテーは真剣な表情でお願いしているようだ。せっかく来たんだからと私もお願いをした。
「ねールナ? 何お願いしたの?」
ヘカテーはニヤニヤしながら私に聞いてきた。
「ないしょだよ! お願いは言わない方がいいの!」
「なんだよケチー! まぁいいけどさ、どーせ彼氏くださいみたいなお願いでしょ?」
へカテーに言われたけど私は黙っていた。当たってはいたけど。
「私はねー、二つお願いしたんだ!」
聞いてもいないのにへカテーは私に話してきた。
「欲張りだねー」
「神様って、意外と太っ腹だと思うわけさ! 遠慮しないでどんどんお願いしなきゃね」
「あっそう。それで? 何お願いしたの?」
「まず一つは『最高のバンドメンバーが見つかりますように』ってお願いした! 私一人じゃバンドできないからねー! ドラムとベースが欲しいところだね!」
「ハハハ。お姉らしいお願いだね。もう一つは?」
私が聞くとお姉は少し言いにくそうにしている。
「もう一つはね……。『母さんが帰ってきますように』ってお願いしたの」
ヘカテーはそう言うと、照れ笑いを浮かべた。それを聞いた私は思わずため息をこぼした。
「ウチらの母親は戻ってこないよ……」
「なんでそんな風に言うの? 私は昔みたいに家族四人で一緒に暮らしたいんだよ!」
その時のへカテーの話し方はすごく印象的だった。いつもなら怒りに任せてただ感情的になるだけなのに、その言い方は私を諭すような言い方だった。
「あー、はいはい。そうだね……。ウチらの母親が戻ってきてくれたらいいよね」
私は適当に流すようにそう言うと足早に神社を後にした。
卒業アルバムも一通り捲り終わると私たちは雑誌を読んだり、テレビを見たりして適当に過ごした。茉奈美はまるで自宅にいるように私の部屋でくつろいでいる。
あの修学旅行のときのへカテーの願いを鼻で笑ったことを思い出した私は少し悲しくなった。もっと真剣に彼女の話を聞いて、一緒に神社にお願いすれば母親は戻ってきたのかもしれない。よしんば母親が戻らないにしても、今現在の私たち姉妹の関係が違ったものになっていたのかもしれない。
テレビの天気予報で明日は台風の影響で大荒れになると言っている。今日中に買い出しに出かけなければいけないだろう。
買い出しのことを考えているとスマホに通知が届いた。茜ちゃんからだ。
「なんかよかった! 今までさぁ、ずっとあんたたち仲悪かったからウチもどう接していいのか正直考えてたんだよね。ルナにウラの話するとすごく不機嫌になるしさ……」
茉奈美はやれやれといった感じにそう言うとため息をついた。私は茉奈美に相当気苦労掛けたんだろうと思う。
「ほんとだね……。なんかお姉、すっかり大人っぽくなったね。話してみてすごく安心したよ。どうしようもない人だと思ってたけど、人って変わるんだね……」
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「そんな気はしてたよ……」
そう、そんな気はしていた。茉奈美はどちらかというと私よりはヘカテー寄りな気がする。幼い頃から学校の成績も趣味趣向もヘカテーに近かった。いくら私と仲良くしてくれているとはいえ、ヘカテーを放っては置かないだろう。
「ウラもあんたと仲直りしたがってたんだよ? あいつは不器用で感情に任せるところあるけど、根はいい奴だからね。まぁ確かに、ウラが中退した頃はあいつかなり荒れてたから仕方ない気はするけどね……」
「ねえ茉奈美? 私とお姉ってまた一緒に住んでやって行けるかな? お姉には帰る帰らないは任せるって言ったけど、ちょっと不安もあるんだよね……。また前みたいにお互いに傷つけちゃいそうでさ……」
私がそう言うと茉奈美は呆れるように笑った。
「あんたらは大丈夫だよ! それにもし喧嘩したらウチか麗奈に言えば良い! 仲裁だってするし、愚痴だって聞いてあげるから! とにかくルナは一人で抱え込まないこと!」
茉奈美にそう言われて私は苦笑いした。今まで自然体でやってきたつもりだったけど、気がつけばすっかり気持ちが硬くなっていた気がする。
ヘカテーと話して、私はすっかり憑き物が落ちたような気持ちになっていた。今まであれほど毛嫌いしていた姉なのに、今は会って色々話したいと思う。ヘカテーはどんな生活を送っているんだろう? どんな友達がいて、どんなバンド活動をしているんだろう? 私は今まで遠いところにいた姉が急に身近になったように感じていた。
それから私の部屋で茉奈美と色々な話をした。中学校の頃の卒業アルバムがあったので二人で懐かしみながら眺めた。
「ほら見てよ! 麗奈めっちゃしゃくれてる。 あいつ写真写り悪いんだよねー」
「ほんとだね。麗奈も普通にしてればけっこう可愛いのに、いっつも変顔で写るよね」
「あいつは照れ隠しのつもりなんだろうけどさぁ。でもこれはウケる」
卒業アルバムには私たちの思い出がぎっしりと詰まっている。私は写真があまり好きじゃないからカメラからよく逃げていたけど、それでも何枚かは写っていた。写っている私はどれも不器用な笑い方をしていた。茉奈美はページを捲りながら懐かしんでいる。
「あ、これウラじゃん!? あいつブッサイクな顔して写ってんね」
茉奈美に言われて見た写真のへカテーはかなりおかしな顔をしていた。馬鹿みたいな表情でカメラを睨みつけるように写っている。
「これね……。お姉はいっつもこんなだよ。この時だって修学旅行だって言うのに校則無視して、先生に怒られたんだよねー」
「アハハ、そうだったね! つーかウチもこんときは一緒に先生に怒られた気がする」
修学旅行のとき、ヘカテーは毎度のことで問題を起こしていた。まず、修学旅行にギターを持って行って先生に取り上げられ、宿泊先では夜中に彼氏の部屋に忍び込んで説教されていた。懐かしいな……。
「ただいま……」
ヘカテーは生徒指導の先生にたっぷり絞られて部屋に戻ってきた。
「お姉さぁ、また怒られたの?」
中学三年の時、私とへカテーは同じクラスだった。そして修学旅行の班もなぜか一緒になっていた。先生としてはお姉のお目付役として私を選んだのだろうけど、彼女はそんなことおかまいなしに好き勝手やっていた。
「うん、卓ちゃんとこに会いに行ったらバッタリ、センコーと出くわしてさー。いやーついてないなー」
「頼むからさぁ、あんまり問題起こさないでね? 私もあとで先生にイヤミ言われちゃうんだよ?」
「そんなこと言ったってさぁ、せっかく京都まで来たのに彼氏と何もなしじゃつまんないよ?」
ヘカテーは全く悪びれる様子がなかった。私はもう眠かったので諦めて布団に潜り込んだ。
翌日は京都市内を班行動で回ることになった。二条城や清水寺なんかを班で見学して回る。ヘカテーは神社とか寺に全く興味がないようで、ただ適当にプラプラしているだけのようだ。
「ルナちゃーん! 清水寺お参り終わったらご飯にしよー!」
同じ班の子に言われて私もお昼ご飯をみんなで食べることにした。
「あれー? ウラちゃんどっか行っちゃったね」
「え!」
いつの間にかへカテーが迷子になったようだ。
私は同じ班の子たちに先に行ってもらうことにしてへカテーを探し始めた。清水寺の周りを探し回ったけど、なかなかヘカテーは見つからない。
さんざん探し回ってようやく彼女を見つけることができた。
「お姉!!」
私は大きな声で彼女を呼んだ。
「ああ、ルナ! どうしたの慌てて?」
ヘカテーはマイペースにそう言うと私の方に振り返った。
「『どうしたの』じゃないよ!? 探したんだから! 駄目だよ! 班で行動してるんだから勝手に出歩いちゃ!」
「ごめんごめん。ちょっと気になる神社があってさぁ」
ヘカテーはそう言うと小さな鳥居を指差した。
その神社はとても小さく、路地裏にひっそりと祀られていた。
「だからって勝手な行動はやめてよ!」
「だから謝ってるでしょ! ごめんて! ねえルナ、せっかくだから一緒にお参りしてこうよ」
ヘカテーは言い出したら聞かないから私は渋々、彼女と一緒にその神社にお参りすることにした。
「さっき、地元のおばさんに聞いたんだけどさ。この神社は縁結びの神社なんだってさ! 恋愛とかばっかじゃなくて、色々な縁を結んでくれる神様みたいだよ!」
「ふーん……。そうなんだ。お姉、彼氏いるのに縁結びになんで行きたいの?」
私は素朴な疑問を口にした。
「だーかーらー。恋愛以外の縁も結んでくれるの! 卓ちゃんのことは別だよ、別!」
神社の拝殿に着くと私とヘカテーは賽銭箱にお賽銭を入れた。珍しくへカテーは真剣な表情でお願いしているようだ。せっかく来たんだからと私もお願いをした。
「ねールナ? 何お願いしたの?」
ヘカテーはニヤニヤしながら私に聞いてきた。
「ないしょだよ! お願いは言わない方がいいの!」
「なんだよケチー! まぁいいけどさ、どーせ彼氏くださいみたいなお願いでしょ?」
へカテーに言われたけど私は黙っていた。当たってはいたけど。
「私はねー、二つお願いしたんだ!」
聞いてもいないのにへカテーは私に話してきた。
「欲張りだねー」
「神様って、意外と太っ腹だと思うわけさ! 遠慮しないでどんどんお願いしなきゃね」
「あっそう。それで? 何お願いしたの?」
「まず一つは『最高のバンドメンバーが見つかりますように』ってお願いした! 私一人じゃバンドできないからねー! ドラムとベースが欲しいところだね!」
「ハハハ。お姉らしいお願いだね。もう一つは?」
私が聞くとお姉は少し言いにくそうにしている。
「もう一つはね……。『母さんが帰ってきますように』ってお願いしたの」
ヘカテーはそう言うと、照れ笑いを浮かべた。それを聞いた私は思わずため息をこぼした。
「ウチらの母親は戻ってこないよ……」
「なんでそんな風に言うの? 私は昔みたいに家族四人で一緒に暮らしたいんだよ!」
その時のへカテーの話し方はすごく印象的だった。いつもなら怒りに任せてただ感情的になるだけなのに、その言い方は私を諭すような言い方だった。
「あー、はいはい。そうだね……。ウチらの母親が戻ってきてくれたらいいよね」
私は適当に流すようにそう言うと足早に神社を後にした。
卒業アルバムも一通り捲り終わると私たちは雑誌を読んだり、テレビを見たりして適当に過ごした。茉奈美はまるで自宅にいるように私の部屋でくつろいでいる。
あの修学旅行のときのへカテーの願いを鼻で笑ったことを思い出した私は少し悲しくなった。もっと真剣に彼女の話を聞いて、一緒に神社にお願いすれば母親は戻ってきたのかもしれない。よしんば母親が戻らないにしても、今現在の私たち姉妹の関係が違ったものになっていたのかもしれない。
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