深夜水溶液

海獺屋ぼの

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第三話 文藝くらぶ

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「ただいまー」
 家に帰るとすぐに自室に向かった。自分のパソコンの電源を入れる。これが私の帰宅ルーティンなのだ。
「おかえりなさい。ちょっと支度手伝って」
「はーい」
 母に呼ばれて適当に返事を返す。リビングの様子から察するに父はまだ帰ってはいないらしい。
 制服を脱いでハンガーに掛ける。バッグからは創作ノートを取り出す。スマホを充電器に繋ぐ。その一連の流れを熟した。これは私の生活の一部であり、習慣化された行動。
「フミぃー。レンジのジャガイモ取ってー」
「うん」
 台所に行くと母が忙しそうに夕食の準備をしていた。材料から察するにクリームシチューらしい。
「シチュー?」
「そう! あとはサラダだよー」
 シチューとポテサラ、そしてバケット。そんな夕食らしい。
「じゃあサラダ用意するよー。ポテサラでしょ?」
「そうそう! あとレタスとニンジンあるから使って!」
 母はそう言うと嬉しそうに「ふふん」と笑った。娘の私から見ても可愛らしい人だと思う。
 中学生になってからは母と一緒に夕食の支度をするようになった。最初は苦手だった包丁も今はすっかり慣れたし、最近はオムライスも綺麗に出来るようになったと思う。
「そういえば……。明日帰り遅くなるかも……。ゆきちゃんにサブウェイ行こうって誘われててさ」
「そうなのね。うん、大丈夫よ。明日はお父さんも帰り遅いらしいし、お母さんも適当に済ますから」
 そんな話をしながら二人で夕食の準備を進めた。
 母とこうして二人きりで話していると安心する――。
「ただいまー」
 一九時を少し過ぎた頃、父が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま文子……」
 父は私の顔を見るなり少し申し訳なさそうな顔になった。
「なぁに? どうしたの?」
「ん? いや……。文子の顔見るの一週間ぶりだなぁって思ってね」
「あー……。確かに」
 言われて気づいたけれど、こうして父と顔を合わせるのは久しぶりだ。
「学校はどう?」
「普通だよー」
「なら良かったよ」
 生存確認終了。中学に上がってから父とはいつもこんな感じだ。
「おかえりなさい。先にお風呂入ったら? 明日も早いんでしょ?」
 奥から母がやってきて父に聞いた。
「ああ……。そうだね。そうするよ」
 父はそう言うとため息交じりにネクタイを解いた。
 ありきたりな家庭。それを象徴するかのように。
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