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ウサギとカメのデットヒート
聖子 論より物証
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私と伊瀬さんは京極さんを迎えに茨城へと向かっていた。
いつもどおり彼が運転席、私は助手席だ。
「泉さんあの子に入れ込みすぎじゃないの?」
運転席でハンドルを握りながら伊瀬さんは私に話しかけてきた。
伊瀬さん越しに見える海岸線は雲間から差し込む光が反射して輝いている。
「へ? そうすかね? 私的には普通ですけど……」
「ならいいけど……。泉さんは感情移入しすぎる質だからさぁ。人助けは結構だけど、大概にしないと身を滅ぼす事になるよ?」
伊瀬さんはそれだけ言うと黙って運転を続けた。
私はそんなに京極さんに入れ込んでいるだろうか?
確かに気掛かりだけれど、そこまで入れ込んでいるつもりはない。
そういえば、兄にも似たような事をよく言われていた……。
私には歳の離れた兄が一人居た。
父は家庭を顧みない人だった。
その代わり、兄が父の分まで私に愛情を注いでくれたのだ。
父兄参観や学校の行事にも無理して来てくれたし、私が困っているといつも黙って手助けしてくれた。
そんな兄だけれど私と違って冷静であまり感情を表に出さない人だった。
寡黙だけれど優しいそんな兄が私は大好きだった。
親から受けるべき愛情を私は兄から受けて育ったのだ。
私が道を踏み外さずに来られたのは兄のお陰だと思う……。
私がまだ小学生の頃。
当時の私は今よりずっと大人しく、友達も少なかった。
クラスの中でもあまり目立たず根暗な子供に見えたと思う。
本当にパッとしない少女時代を過ごしてきたのだ。
そんな年増いかない頃だった……。
当時、父は脱サラして会社を立ち上げたのだ。
この起業は幼い私にとって大きな災難となった……。
起業当時はまだ会社も軌道に乗っておらず借金もかなりの額あったらしい。
毎日のように父は不機嫌そうな顔をして金策に走り回っていた。
そんな訳で私の家は恐ろしく貧乏になってしまったのだ。
おまけに母はストレスでホストクラブ通いにハマって散財。
これが原因で父と母は離婚した。
あとに残ったのは莫大な金額の借金だけだった……。
父の会社が火の車だという噂がクラスで広まるまでに、そこまで時間が掛からなかった。
クラスメイトの親たちはそんな下世話な話を子供の前でしたのだろう。
子供とは残酷な生き物だ。
他人の家の不幸をからかうのが余程楽しいらしい。
幼いながらに彼らは自分の価値を相対的に上げたいようだ。
私は両親のせいで心無い誹謗中傷を受けた。
正直嫌だったし、幼いながらにかなり傷ついた。
下校の時に泣きながら帰るのが毎日の日課になってしまうほどだ……。
でも兄だけは常に私の味方で居てくれた。
「あんまり気にすんなー。みんながみんなお前をからかう訳じゃないんだろ?」
兄は優しくそう言って頭を撫でてくれた。
「でもお兄ちゃん……。私、悔しいよぉ」
私は半べそをかきながら兄にはいつも慰めてもらっていた。
「聖子は優しいからなぁ。でもそんな気にすることないよ」
兄はそう言うと私の拙い愚痴を包み込むように黙って聞き続けてくれた……。
少しすると、父の会社は軌道に乗り始め、どうにか借金も返せた。
一筋縄ではいかなかったけれど、どうにか経営危機を乗り越える事ができたようだ。
今思うと私がそこまで落ちずに生きてこられたのは兄のお陰だと思う。
兄が支えてくれなければ私はもっと酷い道に進んでいた気がする。
そんな兄は今、父の手伝いをしながら設備屋で働いている……。
「なぁ聖子……。お前は優しい子だけどさぁ……。自分が困ってまで人助けするのは考えたほうがいいよ」
それが兄の口癖だった。
彼の中ではいくつになっても私はまだ子供なのだろう……。
物思いに耽りながら車に揺られていると京極さんの家のある鉾田市内に入った。
彼女の家まであと少しだ……。
私は改めて兄に感謝したい気持ちを抱いていた……。
いつもどおり彼が運転席、私は助手席だ。
「泉さんあの子に入れ込みすぎじゃないの?」
運転席でハンドルを握りながら伊瀬さんは私に話しかけてきた。
伊瀬さん越しに見える海岸線は雲間から差し込む光が反射して輝いている。
「へ? そうすかね? 私的には普通ですけど……」
「ならいいけど……。泉さんは感情移入しすぎる質だからさぁ。人助けは結構だけど、大概にしないと身を滅ぼす事になるよ?」
伊瀬さんはそれだけ言うと黙って運転を続けた。
私はそんなに京極さんに入れ込んでいるだろうか?
確かに気掛かりだけれど、そこまで入れ込んでいるつもりはない。
そういえば、兄にも似たような事をよく言われていた……。
私には歳の離れた兄が一人居た。
父は家庭を顧みない人だった。
その代わり、兄が父の分まで私に愛情を注いでくれたのだ。
父兄参観や学校の行事にも無理して来てくれたし、私が困っているといつも黙って手助けしてくれた。
そんな兄だけれど私と違って冷静であまり感情を表に出さない人だった。
寡黙だけれど優しいそんな兄が私は大好きだった。
親から受けるべき愛情を私は兄から受けて育ったのだ。
私が道を踏み外さずに来られたのは兄のお陰だと思う……。
私がまだ小学生の頃。
当時の私は今よりずっと大人しく、友達も少なかった。
クラスの中でもあまり目立たず根暗な子供に見えたと思う。
本当にパッとしない少女時代を過ごしてきたのだ。
そんな年増いかない頃だった……。
当時、父は脱サラして会社を立ち上げたのだ。
この起業は幼い私にとって大きな災難となった……。
起業当時はまだ会社も軌道に乗っておらず借金もかなりの額あったらしい。
毎日のように父は不機嫌そうな顔をして金策に走り回っていた。
そんな訳で私の家は恐ろしく貧乏になってしまったのだ。
おまけに母はストレスでホストクラブ通いにハマって散財。
これが原因で父と母は離婚した。
あとに残ったのは莫大な金額の借金だけだった……。
父の会社が火の車だという噂がクラスで広まるまでに、そこまで時間が掛からなかった。
クラスメイトの親たちはそんな下世話な話を子供の前でしたのだろう。
子供とは残酷な生き物だ。
他人の家の不幸をからかうのが余程楽しいらしい。
幼いながらに彼らは自分の価値を相対的に上げたいようだ。
私は両親のせいで心無い誹謗中傷を受けた。
正直嫌だったし、幼いながらにかなり傷ついた。
下校の時に泣きながら帰るのが毎日の日課になってしまうほどだ……。
でも兄だけは常に私の味方で居てくれた。
「あんまり気にすんなー。みんながみんなお前をからかう訳じゃないんだろ?」
兄は優しくそう言って頭を撫でてくれた。
「でもお兄ちゃん……。私、悔しいよぉ」
私は半べそをかきながら兄にはいつも慰めてもらっていた。
「聖子は優しいからなぁ。でもそんな気にすることないよ」
兄はそう言うと私の拙い愚痴を包み込むように黙って聞き続けてくれた……。
少しすると、父の会社は軌道に乗り始め、どうにか借金も返せた。
一筋縄ではいかなかったけれど、どうにか経営危機を乗り越える事ができたようだ。
今思うと私がそこまで落ちずに生きてこられたのは兄のお陰だと思う。
兄が支えてくれなければ私はもっと酷い道に進んでいた気がする。
そんな兄は今、父の手伝いをしながら設備屋で働いている……。
「なぁ聖子……。お前は優しい子だけどさぁ……。自分が困ってまで人助けするのは考えたほうがいいよ」
それが兄の口癖だった。
彼の中ではいくつになっても私はまだ子供なのだろう……。
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