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DISK2
第三十二話 葡萄酒と未成年の宴
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喫茶店内には穏やかな音楽が流れていた。
女性ヴォーカルのジャズを聴いていると穏やかな気持ちになる……。はずなのにならなかった。
ウラは困った表情を浮かべた。
彼女は言葉を空中から探るように上を見上げる。
実際、天井には照明とシーリングファンしか無い。
「高橋さん? もし可能であればすぐにでもその話に乗らせていただきたいのです……。でもネックがありまして……」
「ネック? 何か不都合なことでもありましたか?」
それからウラは『アフロディーテ』の一件について語った。
自分がどういった経緯でバンド活動をしていて、『アフロディーテ』に関わってきたか。
そして今現在、『アフロディーテ』……。というよりも鴨川月子とどんな関係かという話をした。
百華さんと高橋さんはウラの話を黙って聞いていた。
最も、百華さんは妹から大体の話は聞いていたと思うけれど……。
「……という訳です……。私たちのことで百華さんと高橋さんにご迷惑お掛けしてしまうかと……」
ウラは軽くため息を吐いて俯いた。
たしかに今までの流れだと鴨川月子は黙っていないだろう。
手段は分からないが、何かしらの妨害工作に出るはずだ。
「京極さん……。僕のこと少し甘く見ているようですねー」
高橋さんはニコニコした表情のままウラにそう言うと百華さんの方を向いた。
「安心してください! 『バービナ』さんにしてもウチの会社にしても真木さんの会社にしてもそれくらいの脅しに屈したりしませんから。ねえ真木さん? 御社としても問題なくやれますよね?」
「フフ……。そうですね。何とかなるでしょ! というより何とかしますよ! それに……」
「それに……?」
ウラは百華さんの顔を上目遣いで見上げる。
「それにね京極さん! 敵はおっきい方がやる気出るよ! まー安心して! 高橋さんはかなりやり手だから上手いことやってくれるよ」
「ハハハ、そう言っていただけて恐縮です。まぁ京極さんたちのやりやすいように手は回しますよ。それに『アフロディーテ』のプロモーションやってる会社はウチの商売敵ですし、一泡吹かせてやります!」
高橋さんはそう言うと嫌な笑いを浮かべた。
彼はおそらくタイプ的にはジュンに近い。優男風ゲス――。
翌日から俺たちの新曲制作が始まった。
珍しいことに歌詞・曲ともにウラがつくる。
今回は札幌中央放送の番組の雰囲気に合った楽曲を作らなければいけない。
俺たちは仕事終わり、例によって俺たちはウラの家に集合した。
「えーとねー。今回の楽曲はPOPテイストで行きたいんだけどいい? 先方の資料見たけど、どー考えてもハードコア調にするべきじゃない気がする!」
「そうだな……」
楽曲をウラが書くのには理由があった。
俺やジュンが曲を書くとどうしてもハードコア調になってしまうのだ。
元々俺たちはハードコアバンドだったし、それは致し方ないことではある。
しかし今回ばかりはクライアントの意図に沿わなければいけないだろう。
ウラはこれだけハードコア・パンクにどっぷり浸かっているクセに、得意な曲はPOPだった。
そう考えると俺たちのバンドはかなり異質な気もする……。
「えー!! でも『バービナ』っつったらハードコアじゃないんすか? 俺はいつも通りがいいっすけど!」
七星はウラに突っかかった。案の定、ウラは突っぱねる。
「しゃーねーじゃん? 七星の言うことも分からなくも無いけど、今回は完全仕事だし! そもそも作った曲はねられたら元も子もないよ? だから今回はPOPで行く! 依存は許さない! 以上!」
「俺も異存はないよ。とりあえず足がかりだしねー。それに京極さん? 正直、君もPOP歌いたいんでしょ?」
「ハハハ! 実はねー。ずっと温めてきた曲があるんだよー。ウチらのバンドの曲調じゃ無いからしまいっぱなしだったけどさー」
ウラはスタンドに立てかけてあるSGを抱えた。
「お前ギター弾けるようになったのか?」
「まだまだだけど、音鳴らす位はできるよ! じゃー聴いて!」
彼女はアンプも何も付けずに曲の演奏を始めた。
まだ手首がうまく可動しないはずなのにウラの演奏はブレない。
彼女は歌詞を付けない代わりに適当に声を出しながら楽曲を歌った。
面白いことに歌詞が無いのにかなりまとまりがある。
歌い終わるとウラは大きく深呼吸した。
額の汗を拭いながら幼稚園児のように無邪気に笑う。
「どうだった? ねえ? どうだった?」
「良かったと思うよ! なんかすごい京極さんぽかった」
「ああ、確かにお前っぽい曲だったなー」
なんとボキャブラリーの無いことだろう。
俺もジュンもそれ以上の感想が出なかった。
本当にウラらしい曲だ。
明るく楽しげで、性格が極めて悪く自己中な曲だった。
不思議なのはそれでも聴いていて気持ちがいい。
「七星は? どうだった?」
ウラは感想を言わなかった七星に対して少し強い口調で聞いた。
「うーん。どうかなー? 俺はもっとテンション高く言った方がいいと思うけどねー」
「はぁー!?」
また従兄弟喧嘩が始まったようだ。
2人はいつも通り言い争い……。
まぁ5分もしないうちに七星が折れたわけだが……。
七星がウラに言い負かされるのを見るのにもすっかり慣れた気がする。
「つーわけで! 今回はこの曲をベースにやろうと思う! アレンジとかはみんなの意見を参考にすっからね!」
ウチの女王様はそう言うと満足したのか冷蔵庫からワインとコーラを持ってきた。
「ではでは! 『バービナ』の今後に祝杯をあげよう! みんなワインでいい? 七星はジュースね! 未成年だし!」
『未成年だし』という言葉を聞いて俺は内心どの口でそれを言っているのかと突っ込みたくなった。
元ヤンキー未成年メンヘラクソビッチのくせに……。なげーな。
という訳で祝杯――。
女性ヴォーカルのジャズを聴いていると穏やかな気持ちになる……。はずなのにならなかった。
ウラは困った表情を浮かべた。
彼女は言葉を空中から探るように上を見上げる。
実際、天井には照明とシーリングファンしか無い。
「高橋さん? もし可能であればすぐにでもその話に乗らせていただきたいのです……。でもネックがありまして……」
「ネック? 何か不都合なことでもありましたか?」
それからウラは『アフロディーテ』の一件について語った。
自分がどういった経緯でバンド活動をしていて、『アフロディーテ』に関わってきたか。
そして今現在、『アフロディーテ』……。というよりも鴨川月子とどんな関係かという話をした。
百華さんと高橋さんはウラの話を黙って聞いていた。
最も、百華さんは妹から大体の話は聞いていたと思うけれど……。
「……という訳です……。私たちのことで百華さんと高橋さんにご迷惑お掛けしてしまうかと……」
ウラは軽くため息を吐いて俯いた。
たしかに今までの流れだと鴨川月子は黙っていないだろう。
手段は分からないが、何かしらの妨害工作に出るはずだ。
「京極さん……。僕のこと少し甘く見ているようですねー」
高橋さんはニコニコした表情のままウラにそう言うと百華さんの方を向いた。
「安心してください! 『バービナ』さんにしてもウチの会社にしても真木さんの会社にしてもそれくらいの脅しに屈したりしませんから。ねえ真木さん? 御社としても問題なくやれますよね?」
「フフ……。そうですね。何とかなるでしょ! というより何とかしますよ! それに……」
「それに……?」
ウラは百華さんの顔を上目遣いで見上げる。
「それにね京極さん! 敵はおっきい方がやる気出るよ! まー安心して! 高橋さんはかなりやり手だから上手いことやってくれるよ」
「ハハハ、そう言っていただけて恐縮です。まぁ京極さんたちのやりやすいように手は回しますよ。それに『アフロディーテ』のプロモーションやってる会社はウチの商売敵ですし、一泡吹かせてやります!」
高橋さんはそう言うと嫌な笑いを浮かべた。
彼はおそらくタイプ的にはジュンに近い。優男風ゲス――。
翌日から俺たちの新曲制作が始まった。
珍しいことに歌詞・曲ともにウラがつくる。
今回は札幌中央放送の番組の雰囲気に合った楽曲を作らなければいけない。
俺たちは仕事終わり、例によって俺たちはウラの家に集合した。
「えーとねー。今回の楽曲はPOPテイストで行きたいんだけどいい? 先方の資料見たけど、どー考えてもハードコア調にするべきじゃない気がする!」
「そうだな……」
楽曲をウラが書くのには理由があった。
俺やジュンが曲を書くとどうしてもハードコア調になってしまうのだ。
元々俺たちはハードコアバンドだったし、それは致し方ないことではある。
しかし今回ばかりはクライアントの意図に沿わなければいけないだろう。
ウラはこれだけハードコア・パンクにどっぷり浸かっているクセに、得意な曲はPOPだった。
そう考えると俺たちのバンドはかなり異質な気もする……。
「えー!! でも『バービナ』っつったらハードコアじゃないんすか? 俺はいつも通りがいいっすけど!」
七星はウラに突っかかった。案の定、ウラは突っぱねる。
「しゃーねーじゃん? 七星の言うことも分からなくも無いけど、今回は完全仕事だし! そもそも作った曲はねられたら元も子もないよ? だから今回はPOPで行く! 依存は許さない! 以上!」
「俺も異存はないよ。とりあえず足がかりだしねー。それに京極さん? 正直、君もPOP歌いたいんでしょ?」
「ハハハ! 実はねー。ずっと温めてきた曲があるんだよー。ウチらのバンドの曲調じゃ無いからしまいっぱなしだったけどさー」
ウラはスタンドに立てかけてあるSGを抱えた。
「お前ギター弾けるようになったのか?」
「まだまだだけど、音鳴らす位はできるよ! じゃー聴いて!」
彼女はアンプも何も付けずに曲の演奏を始めた。
まだ手首がうまく可動しないはずなのにウラの演奏はブレない。
彼女は歌詞を付けない代わりに適当に声を出しながら楽曲を歌った。
面白いことに歌詞が無いのにかなりまとまりがある。
歌い終わるとウラは大きく深呼吸した。
額の汗を拭いながら幼稚園児のように無邪気に笑う。
「どうだった? ねえ? どうだった?」
「良かったと思うよ! なんかすごい京極さんぽかった」
「ああ、確かにお前っぽい曲だったなー」
なんとボキャブラリーの無いことだろう。
俺もジュンもそれ以上の感想が出なかった。
本当にウラらしい曲だ。
明るく楽しげで、性格が極めて悪く自己中な曲だった。
不思議なのはそれでも聴いていて気持ちがいい。
「七星は? どうだった?」
ウラは感想を言わなかった七星に対して少し強い口調で聞いた。
「うーん。どうかなー? 俺はもっとテンション高く言った方がいいと思うけどねー」
「はぁー!?」
また従兄弟喧嘩が始まったようだ。
2人はいつも通り言い争い……。
まぁ5分もしないうちに七星が折れたわけだが……。
七星がウラに言い負かされるのを見るのにもすっかり慣れた気がする。
「つーわけで! 今回はこの曲をベースにやろうと思う! アレンジとかはみんなの意見を参考にすっからね!」
ウチの女王様はそう言うと満足したのか冷蔵庫からワインとコーラを持ってきた。
「ではでは! 『バービナ』の今後に祝杯をあげよう! みんなワインでいい? 七星はジュースね! 未成年だし!」
『未成年だし』という言葉を聞いて俺は内心どの口でそれを言っているのかと突っ込みたくなった。
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という訳で祝杯――。
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