悪魔の手の中 番外編

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???side:蝶3

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(※蝶1と蝶2の間のエピソードを書きました。勢いで書いたのでストーリーにブレがあったらすみません。ここに出てくる少年は楓です。
注意:あくまでフィクションで犯罪を助長させるものではありません。)



(??? 視点)


30歳手前か30歳超えてからの女の人がなぜあんなに子供をほしがるのか、俺には分かる。

老いていく自分が怖くなって、子供の輝かしい瞳に映る、光に満ちた未来を一緒に見たくなるからだ。

俺もそのきらきらした未来に触れたくなったから分かる。そして、その未来さえも共有したくなったから理解できる。

踏んだり蹴ったりな人生でも、こうして生きながらえているのはあの子のおかげなんだと言える。

少し離れた距離で、元、上司だった早川真波の家を眺めた。

あの家の中に俺の大切なあの子がいる。
モンシロチョウのように可憐で純真無垢でまっさらなあの子が。

厳しく、自分をいましめているつもりだった。
それなのに俺はあの子の家の前まで見にきてしまった。

たった一度のあやまちだ。
せめてあの子の横顔でもいい、一目でも見れたら…。

電柱の影から熱い視線を家に向けていると、着ているスーツの裾を後ろからつままれた。

「おにぃさん、ダメだよ。」

子供特有の甲高いトーン、それなのに妙に落ち着いている声だった。

振り返ると、いつの間にかミディアムヘアーの少女がいた。

「僕と、一緒に遊ぼうよ。」

あまりの整った中性的な容姿に少女だと勘違いしたが、どうやら少年だったらしい。
しっかり見るとランドセルも黒色だった。

あの子がモンシロチョウなら、この子はアゲハチョウのようだ。

一目で視線を奪ってしまうほどきらびやかな容姿に、誘惑するようなフェロモン。

子供にフェロモンなんて言葉を使うのは馬鹿げているかもしれないが、少年の姿は蠱惑こわくするように優雅に飛び回るアゲハチョウを思い出させた。

肩まで伸びた淡い色の髪の毛をなびかせて、半ズボンから見える華奢で柔らかそうな真っ白な脚を見せつけてくる。

それと対照的に上半身は長袖Tシャツを着ているその子供に、午後のあたたかな昼下がりには不自然だと感じたが、ふらりふらりと引き寄せられるように後を追った。

傾斜けいしゃの大きい階段をひらりと舞うように、てっぺんまで登っていく、小さな後ろ姿に導かれる。

そこでハッとした。

そういえば、この先には小さな交番がある。

まさか、と思いつつ立ち止まるとその後ろ姿もピタリと止まった。

そして振り返った。まるで、かんづいたかのような動きに思えた。

「おにぃさん、ダメだよ。
あれは僕のだから。」

子供の声とは到底思えない、ドスの効いた低い声だった。

あれ?

そう思っているうちに、ぴょんぴょんと跳ねながら階段を下って、俺の目の前まで来た。

「勝手に近づいたら許さないから。」

ニコリとまるで天使のように笑って、長袖のTシャツをまくる。

「っ…!」

そしてズタズタに切り裂かれた腕を突きつけられ、目を見開いた。

「傷つけないように我慢してるんだから、横取りされたら絶対に許さない。」

笑ってるのに瞳の輝きはなく、どこまでも暗かった。

アゲハチョウはアゲハチョウでも、毒を持つジャコウアゲハのようだった。

今、後ろ姿を見せたら、この高い階段から突き落とされる危機感すら感じた。

そして、このまま大人しく階段を登っても警察に突きつけられる。そんな気がした。

まんまとやられた。

「おにぃさん。次はないから。」

固まったままの俺を見て、少年は愉快そうにくすくすと笑い、階段のてっぺんまで登り、俺を見下ろした。

俺だけのモンシロチョウが誰かのものになるなんて考えてもみなかった。そんなの嫌だ。

あの子は、俺のひどい人生のたった一つの救いなんだ。いつか、あの子の無垢な瞳に映る未来をともに俺は見るんだ。

そう、真澄くんのためならどんな障害も乗り越えてみせる。

消え去った少年を頭の中から追い出して、真澄くんの家がある方角を見て拳を強く握り締めた。
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