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前編
始まり
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いつもの夕暮れ時の帰り道、赤く染まる景色をぼんやりと眺めて歩いていたら「真澄」と、俺を呼ぶ声がした。
俺より背の高い彼を見上げるのと同時に、唇に何かが触れる。
柔らかい感触のそれが彼の唇だと気がつくのに時間はかからなかった。
固まったまま、目を見開く俺に彼はいつも通りに柔和な笑みを浮かべて、ふ、と笑う。
もう一度、重なってくる彼から逃げようとは思わなかった。
今度は深く口付けをされる。
唇を割って入ってきた舌に少し驚くが、恐る恐る舌を突き出せば、ぴたりと一瞬、彼の体が静止する。
それも束の間、激しく舌を絡めとられ、顔がじんと熱くなり頭がぼんやりしてくる。
誰かに触れられ、求められることが、こんな幸福感で包まれることだなんて知らなかった。
これが、もし、偽りの幸福感だとしても逃したくはない、そう思った。
ーーーーーーーーーー
幼馴染の天羽楓は俺とは正反対の人間だ。端正な顔立ちに抜群のスタイル。頭も良くて社交的で友達も多い。
いつも柔和な笑みを浮かべていて、堂々としているけど彼の纏う雰囲気は穏やかで偉ぶってない。
そんな完璧な彼が気取っていると悪口を言われているところも見たことはなく、常に人に囲まれている。何でそんなに器用に生きれるのか不器用な俺には分からなかった。
柔和な笑みと落ち着いた柔らな声は、彼を同級生より随分と大人っぽく見せた。
それがどうだろう。
今、目の前にいる彼のくすくすと、ひかえめだが笑いを声を漏らし、俺の手をぐいぐいと、楽しそうに引っ張る姿は子供っぽく見えた。
何がそんなに楽しいの?
そう聞くよりも前に、彼の家の中へと導かれた。
階段を駆け上がるその足取りは子供のように軽く、置いていかれないように慌てて足を動かした。
見慣れた彼の部屋に入り込むとすぐにドアを閉じられ、また深く口付けをされる。
「んっ……、」
頬を優しく包んでいた彼の美しい手のひらが腰へと移動し、するりと撫で付けられた。
唇が離れ、静かな部屋で視線が絡み合う。
長いまつ毛で縁取られた美しいその瞳はいつものように穏やかな色ではなく、熱を孕んだ色をしている。そして形の良い唇が弧を描いた。
唾液で濡れた、その唇の色がやけに赤く、艶やかに見えた。
彼の初めて見る表情に気を取られている内に、いつの間にかベッドへと誘導される。
言葉などで確認するような、雰囲気をぶち壊すようなことを決して彼はしなかった。
俺が嫌がっているようには見えなかっただろうし、嫌がることはないと確信していたのもあるだろう。
シングルベッドに二人分の体が沈んでいく。
俺の服を捲り上げ、腹部を撫でた、その長く美しい指がどんな意図を持って動かされているのか、俺はとうに気づいていた。
気づいていて受け入れた。
どんな形でさえ、誰かに求められることがこの上なく心地よかった。
この心地よさと幸福感を知ってしまったら拒むことなんてできなかった。
求められることで、空っぽな自分の価値をようやく見出すことができる気がしたんだ。
俺より背の高い彼を見上げるのと同時に、唇に何かが触れる。
柔らかい感触のそれが彼の唇だと気がつくのに時間はかからなかった。
固まったまま、目を見開く俺に彼はいつも通りに柔和な笑みを浮かべて、ふ、と笑う。
もう一度、重なってくる彼から逃げようとは思わなかった。
今度は深く口付けをされる。
唇を割って入ってきた舌に少し驚くが、恐る恐る舌を突き出せば、ぴたりと一瞬、彼の体が静止する。
それも束の間、激しく舌を絡めとられ、顔がじんと熱くなり頭がぼんやりしてくる。
誰かに触れられ、求められることが、こんな幸福感で包まれることだなんて知らなかった。
これが、もし、偽りの幸福感だとしても逃したくはない、そう思った。
ーーーーーーーーーー
幼馴染の天羽楓は俺とは正反対の人間だ。端正な顔立ちに抜群のスタイル。頭も良くて社交的で友達も多い。
いつも柔和な笑みを浮かべていて、堂々としているけど彼の纏う雰囲気は穏やかで偉ぶってない。
そんな完璧な彼が気取っていると悪口を言われているところも見たことはなく、常に人に囲まれている。何でそんなに器用に生きれるのか不器用な俺には分からなかった。
柔和な笑みと落ち着いた柔らな声は、彼を同級生より随分と大人っぽく見せた。
それがどうだろう。
今、目の前にいる彼のくすくすと、ひかえめだが笑いを声を漏らし、俺の手をぐいぐいと、楽しそうに引っ張る姿は子供っぽく見えた。
何がそんなに楽しいの?
そう聞くよりも前に、彼の家の中へと導かれた。
階段を駆け上がるその足取りは子供のように軽く、置いていかれないように慌てて足を動かした。
見慣れた彼の部屋に入り込むとすぐにドアを閉じられ、また深く口付けをされる。
「んっ……、」
頬を優しく包んでいた彼の美しい手のひらが腰へと移動し、するりと撫で付けられた。
唇が離れ、静かな部屋で視線が絡み合う。
長いまつ毛で縁取られた美しいその瞳はいつものように穏やかな色ではなく、熱を孕んだ色をしている。そして形の良い唇が弧を描いた。
唾液で濡れた、その唇の色がやけに赤く、艶やかに見えた。
彼の初めて見る表情に気を取られている内に、いつの間にかベッドへと誘導される。
言葉などで確認するような、雰囲気をぶち壊すようなことを決して彼はしなかった。
俺が嫌がっているようには見えなかっただろうし、嫌がることはないと確信していたのもあるだろう。
シングルベッドに二人分の体が沈んでいく。
俺の服を捲り上げ、腹部を撫でた、その長く美しい指がどんな意図を持って動かされているのか、俺はとうに気づいていた。
気づいていて受け入れた。
どんな形でさえ、誰かに求められることがこの上なく心地よかった。
この心地よさと幸福感を知ってしまったら拒むことなんてできなかった。
求められることで、空っぽな自分の価値をようやく見出すことができる気がしたんだ。
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