悪魔の手の中 改訂版

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前編

優しさに潜む違和感

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いつもの帰り道、周囲をキョロキョロと確認する俺がおかしかったのか、楓は目を細め、静かに笑った。

「今日の真澄、何だかそわそわしてるね。」

楓のその言葉に心臓が跳ねる。

結局、分からずじまいだったけど、水瀬に楓と一緒にいるところを見られたのかもしれない。もし、そうなら他の人にも見られていたとしてもおかしくないし、楓との行為も、もしかしたら……。そう思うと不安だった。

「……そうかな。」

動揺を悟られないように、少し視線を逸らす。

「誰かに何か言われたりした?俺のこととか。」

いつも通りの柔らかな声で聞いてきた楓に足が止まりそうになって、慌てて歩を進めた。けれどその一歩がぎこちなくて、戸惑いが滲みでてしまっていた。

「……何も言われてないよ。」

「…そう。それなら、よかった。でも何かあったら遠慮なく、言ってね。真澄のことはちゃんと知っておきたいから。」

俺を気遣ってくれる楓の言葉に罪悪感が湧く。でも、そのまなざしの奥に、何か別のものが潜んでいる気がして目が合わせられなかった。

水瀬に頼まれたことは、結局伝えられなかった。楓に嘘をついた状態で、言うことなどできなかった。

いつの間にか、楓の家の前に着いていた。

俺の手を楓は引き寄せ、手の甲に口付けをする。彼の唇が触れた部分の皮膚がじんわりと熱を持つ。そして同級生の前では絶対に見せないだろう、熱を孕んだ瞳を向けられる。それは性行為をする時の合図で、言葉などいらなかった。

楓と深い口付けをしながら家の中に入り、もたついた足でローファーを玄関に脱ぎ捨てる。ダイニングルームまで続く廊下で転げそうになったが、しなやかな彼の腕が俺の体を支えた。

扉を抜け、海外製のお洒落なダイニングテーブルが見えると、そこに俺の体を押し倒す。いつの間にかブレザーを脱がされ、シャツとスラックスの姿になっていた俺の背中にテーブルのひんやりとした感触が伝わる。

このテーブルでずいぶん前に、共働きの楓の両親と、楓と共に食事をしたことを思い出し、後ろめたい気持ちでいっぱいになった。

「……あっ。」

するりとスラックスとパンツを一緒に脱がされる。飛び出した性器は既に首をもたげており、恥ずかしさから両手で隠そうとすると、その腕を掴まれる。

「…隠されるのは、好きじゃないな。俺だけには全部、見せてくれるよね…?」

いつもと変わらない柔和な笑みを浮かべているのに、どこか違う楓の声色に、背筋がひやりとした。

けれど彼を拒むことは、どうしてもできなかった。
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