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前編
悪と悪 ※R18
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(※キャラの雰囲気がいつもと異なる描写や、暴力的な描写を含みます。苦手な方はご注意ください。)
地獄のような目覚めだったが、また三好を見ても呼吸が苦しくなることはなかった。そのことだけが不幸中の幸いだった。
シャツの上から、三好の手が俺の体に触れる。
それだけで体が拒否反応を示した。
気づいたら三好のお腹を蹴り飛ばしていた。
少し寝て休んだおかげか、思っていた以上に足に力がこもっていた。
蹴られた三好は身体をのけぞらせ、よろめき、ベッドの上に尻もちをついた。
人に酷いことをしてしまった。
その事実に放心状態になる。
「てめぇ、誰を蹴ってんだよっ!ああ!?」
三好はぎろりと俺を睨みつけると、すぐに身体のバランスを戻し、こちらに手を伸ばす。
その手が俺の前髪を引っ掴んだ。
「い゛っ…!!」
「おめぇごときが、調子のってんじゃねえよ!」
三好の怒り方はこれまでで一番、酷かった。
額に青筋を立てて怒鳴るその姿に、思わず体をすくめる。
いつ殴られてもおかしくない状況だった。
こんなふうに剥き出しの敵意を向けられることは、今までになくて怖くて仕方なかった。
さっきは反射的にだが蹴ることができたのに、今はもう声すら出ない。
その時ふと、仇野の言葉が脳裏によぎった。
仇野は俺の弱さが原因で追い込まれているんだと言っていた。
確かに楓と肉体関係を持ったのも、心の弱さからだった。そしてその関係を三好に知られ、つけ込まれた。
三好をここまで凶暴にさせたのも俺の弱さが原因だ。何も言い返せず、まともな抵抗もできなかった。
ぜんぶ、ぜんぶ、俺のせいだ。
このままじゃ、いけない。
「…やめて……。」
小さな声だった。でも、その言葉に反応して三好の眉がぴくりと動いた。
「もう…、やめてっっ!俺に…俺に触らないでっ、触るなッ!」
こんなに大きな声をあげて、誰かに抵抗するのは初めてだった。慣れない言動に声が上擦った。
必死だった。
やみくもに足を動かし、また三好の身体を蹴った。今度は罪悪感を感じて放心することもなかった。
縛られた腕のせいで逃げられないことは分かっていたけど、それでも目の前の状況に抗いたいと強く思った。
もう、弱いままの自分は嫌だ。
三好は黙ってそれを眺めていたが、ぶはっと吹き出した。険しかったその表情が一気に破顔する。
「お前、必死すぎんだろ。マジでウケるわ。」
その感情の揺れ幅が異様に思えて、恐怖を覚えた。
三好はひとしきり笑うと、俺の顔を見ながら愉快そうに話し出す。
「俺さ、何しても無反応で反応薄い奴、すげームカつくんだよな。前に言っただろ?
俺の存在なんて、いねーみたいに扱ってるみたいで、それが腹立つっつーか…。
だから、今のお前みたいに必死に抵抗してくる奴をねじ伏せる方が、最高に気分良くて興奮するって、ずっと思ってきたわけ。
けど、違ったわ。」
三好の顔がまた一変する。
スッと据わった目が不穏な雰囲気を放っていた。その目は、濁った水の底のように暗く澱んだ色をしていて光など一切、存在していない。
「お前のその態度見てたら、興奮どころか、なぶり殺したくなったわ。
お前は俺より、クソほど格下だろーが。股開くしか、才能がねぇ薄汚ねー豚が、偉そうに刃向かってんじゃねえよ。」
そう言った次の瞬間、三好の手が無理矢理、俺のシャツを破いた。ぶちぶちっとボタンがいくつも飛び散り、前がはだける。
はだけたシャツの間から日に焼けておらず、白く、筋肉のついてない貧相な体があらわになった。
三好の口が、目の前で大きく開く。
鋭く尖った犬歯が見えた。
その歯が躊躇なく、俺の胸元に突き立てられた。
まるで獣が獲物の肉を引き裂く時のような、容赦ない凶暴さだった。
「あ゛ッ…!!」
胸元、ちょうど乳首のあたりに鋭い痛みが走り、筋肉がこわばる。
俺の反応など気に留めず、三好はぎちぎちと噛み続けた。焼けつくような熱とともに、皮膚の奥からじわりと何か溢れ出す。
自分を奮い立たせ、抵抗したはずなのに、それはあっけなく容赦ない暴力で踏み躙られた。
苦痛に顔を歪めて弱りきった俺を見て、三好はようやく胸元から顔を離した。
そして俺の顔の前でべろりと舌を見せつけた。
そこには真っ赤な血が、べっとりとついていた。
「次はお前の使い道のねー、ペニスでも食いちぎってやるよ。
体中、食いちぎられて血まみれになって泣き叫ぶか、感じてるフリでもして喘いで、俺に媚びて許してもらうか。どっちか選べよ。俺はやさしーから、選ばせてやるよ。」
三好は俺を追いつめ、自尊心を徹底的に潰すような提案を楽しげにした。
三好の顔がまた、俺の胸元に近づく。
その舌先で、乳首の血が滲んだ歯型の痕をつつくようにして舐めた。ピリっと刺すような痛みが走り、思わず身をよじった。
「ま、お前、無理矢理されても、おっ勃つぐらいの変態だし、何されても平気か。」
もう一度、三好の歯が歯型の痕に突き立てられる。
噛みつかれるー
そう察した瞬間、三好の悪質な提案を受け入れ、わざと声を漏らした。
耐え難いほどの屈辱だった。
「あっ…」
不自然に漏れたその声の意図に、三好はすぐに気づいて鼻で笑った。
三好の舌が乳輪をねっとりと舐めあげる。
傷口に触れるたびに、痛みが走った。気持ちよさなんてなにも感じなかった。感じるのは、三好と俺へのとてつもない嫌悪感。
「ん…っ、ふぅ……、」
三好は、胸の突起を弄ぶように舌先で軽く潰しては、吸いつく。
ぴちゃっ、じゅぅ…、と響く音と眼前のその光景に、顔から火が出そうなほどの羞恥心を感じた。
三好の行為は愛撫のようだった。
乱暴さはなく、これじゃ、まるで合意でしているように見えた。
『なぶり殺したくなる』
三好はそこまで言った。それ相応の恥ずかしめを俺にする為にわざとしているとしか、思えなかった。
「…んぁ、んっ…、」
「ヘタクソ。もっと、それらしく喘げよ。
天羽とヤってる時はどろどろになって、さんざん下品な声、漏らしてんのにできねぇのかよ。」
三好は俺を嘲りながら、胸元からお腹へ舌を這わせていく。その感触にぴくっと体が小さく反応してしまう。
やがてその舌は下腹のへと滑り落ち、スラックスと下腹のわずかな隙間、肌と布がせめぎ合うその境目に忍び込んだ。
「ひっ、んぅっ…」
敏感な神経が集まっている、すぐそばを舐められ、ぞくりとする。
思わず、フリじゃない声が漏れた。
言葉で言い表せないくらい最悪な気分だった。
三好は俺のスラックスをずり下げると、そのまま太ももの間に顔を入れて、脚の付け根を舐めた。その舌の生々しい感触に内股がわずかに震える。
「お前はカマ野郎だから、こっちの方が好きだったよな。わりぃ、わりぃ。」
そう言って、三好はパンツの上から尻の窄みに指先を食い込ませた。
「ひぃっ、」
薄い布の下で昨日の三好との行為で裂けたままの皮膚が、じくじくと痛んだ。
「待って…っ、おねがいっ…、」
「誰がてめぇみたいな、ヤリマンの頼み聞くかよ。」
制止も無視され、パンツもずり下げられる。
三好の指が直接、そこに触れた。
「…っ!!」
三好はどこから取り出したのか、どろりとした冷たい透明の液体をそこにぶちまける。冷えた感触にふるりと体が震えた。
すぐに、傷だらけのまだ熱っぽい粘膜を押し開くように三好の指が入ってくる。痛みに耐える為に下半身に力を入れるので精一杯だった。
次の瞬間、太ももに容赦なく、歯が立てられた。
「うっ、あ゛…!」
「おい、声、忘れてんじゃねぇよ。」
これ以上、酷い目に遭わない為にも三好の言うことを聞くしかなかった。
「あっ…んっ、あぁ……っ、ふぅ…っ」
情けなく喘ぐふりをする自分に、心から吐き気がした。
下半身にたっぷりと垂らされた液体のせいで三好の指が奥に進む度に、にゅぷぷっと、耳を塞ぎたくなるような卑猥な音が聞こえてくる。
あるのは熱と痛みと羞恥心と嫌悪感。
そこには快楽なんて、ない。
三好の指が増やされる。
入り口の皮膚が裂けた部分が広がりズキンと鋭い痛みが走るが、歯を食いしばって我慢した。
その指が精器の裏側あたりのしこりを挟むようにして、ぎゅうっと潰した時、大袈裟に体が跳ねた。
「んあッ‥!」
明らかにその声は“感じているフリ”ではなかった。
「ひっ…、あ、あっ、んッ、や…っ」
三好もその違いに気づいたのだろう。
腰を引いて逃げようとする俺の腰をがっちりと掴むと、そこを重点的に何度も腹の指で擦って、潰した。
「んあっ…はっ、あッ、んっ…あぁっ、」
「フリにしちゃ、すげー気持ちよさそーだな、尻軽。」
許せなかった。こんな状態でも感じてしまう自分が。
昨日、似たような理由で、風呂場で嘔吐した記憶が思い起こされる。
「ふぁ、ああ…っ、っ、んあ゛ッ!!」
三好の指がぎちりと、腫れたしこりをつねり、ひねった。それとともにガクガクと内股が痙攣し、腰が浮く。性器からびゅっと精液が飛び出して腹を汚した。
気づけば、瞼からボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
「うぅ……ひくっ、ひぐ、うっ…」
自分の体があさましいものに変わってしまったことに、ただ、ただ、絶望して泣いた。
「泣くくらい気持ちよかったかよ、マゾ野郎。
もっと快くしてやるよ。
見えねぇ方が、もっと感じんだろ?」
三好はそんな俺に構わず、俺の目元を制服のネクタイで覆う。
抵抗する気はなかった。
もうこのまま、快楽に流された方が楽だと思った。やっぱり俺は弱いまま、変わることなんてできない、そう思った。
三好は俺の尻の間に膨張した自分の性器を当てつけた。ひどく興奮したように荒い息をしていた。
左右の膝の裏を掴まれ、股を大きく開かされる。
三好の先走りでぬめった性器が内壁を潰すように押し入ってきた。
治っていない裂け目がさらに広がり、痛みが走る。でも、その痛みさえもいつの間にか快楽に変わっていた。
心が完全に壊れるのを感じた。
三好の性器は俺の弱いところばかりを突いた。
俺は快楽が湧き上がるままに、声を漏らした。
「んあぁ…っ、あっ、あっ、んん゛っ…」
「お前だって楽しんでんだろ、ビッチ。
もう被害者ぶって、水瀬にも、あのでけーのにも泣きつけねぇな。」
三好の言う通りだ。
これが俺の本性なのかもしれない。
淫らな姿を受け入れるしかなかった。
「はっ、んぁっ…、あっ、ん゛っ…!んんっ、あぁッ…!」
「……っは、…っ、……はっ、」
三好の荒い息と俺の喘ぎ声が保健室に響き渡る。
三好も余裕がないのか、蔑むような言葉を発しなくなっていた。
ベッドのスプリングがぎしぎしとうるさく軋む。
ふいにガリっと下唇に噛みつかれた。それから鎖骨、胸元、お腹、太ももを甘噛みされる。
ふーっ、ふーっ、と息を吐き出し、三好は必死に衝動を抑えているようだった。
「ふぁっ、あっ、んっ、あ゛ッ…!ん゛ッ、ああっ、んぁッ!」
「はっ、…っ、…はっ、」
腰を打ちつけられるスピードがさらに速くなる。
内股がビクビク震え、ふくらはぎがきゅっと引きつった。限界が近かった。
それは三好も一緒だったのか中の性器がどくどくと脈打っていた。
「…っ、中に出してやっから、こぼさず受け止めろよ。」
無意識のうちに、三好の背に脚を回していた。
恥も戸惑いも嫌悪すらも、全て残っていなかった。
三好も俺も周りなんてこれっぽちも見えていない。まるで獣みたいに激しい交尾をし、絶頂を迎えようとしていた。
「ぐえっ、あ゛っ、」
その時、三好の潰れた声が聞こえて、ずるりと中から性器が抜け出た。何がなんだか分からずに唖然とする。
「お゛、ごぉっ、」
今度は、三好の足が悶え苦しむように俺の体を何度か蹴飛ばした。
目元を隠され、何が起こっているか見ることはできなかったが、三好が何者かに襲われていることは分かった。ギシっとベッドに誰かの体重が加わる音がした。
本来の状況だったら、願ってもみない展開のはずなのに恐ろしくて仕方がなくて体が硬直した。
「ぐげっ、ぐぅ、」
三好の苦しむ声と、ガリガリと必死に引っ掻くような音が部屋に響いた。
「……死んじゃう。」
ポツリと自分の口から言葉が漏れる。
「…し、死んじゃうからっ、やめてっ…!」
気づいたら、そう口走っていた。
三好に散々嬲られてきたのにそれでも止めるべきだと、失いかけていた理性がそう告げていた。
だが、三好を襲っている人物は俺の言葉を聞き入れてくれることはなかった。
三好の声は聞こえなくなり、かわりにピクピクと痙攣したつま先が俺の体を蹴った。
その直後、ツンと鼻につくような匂いがした。
温かい液体がベッドシーツを伝ってきて俺を濡らした。
その液体が尿だと気づくのに時間はかからなかった。
そして、それが三好のものだと気づくのにも。
「…も、いやだ…、…怖い、…怖いよ……。」
壊れたはずの心に、ダムが決壊したようにいろんな感情が流れ込んでくる。
小刻みに震えながら、ぼそぼそとうわごとのように言っていると、ベッドのスプリングが軋み、誰かが近寄ってくる気配がした。
俺も襲われる。
咄嗟にベッドの上で体を丸め、自分を守った。
その時、ふわりと、覚えのある香りがした気がした。
細い指先が俺の頬に伸びてきて、あやすように撫でる。そして、その指先はいつの間にか流れていた俺の涙を拭うと、名残惜しそうに離れていった。
しばらくして、ごんっと鈍い音とずるずると何かを引きずる音がした。
それから、その音とは不釣り合いなほど静かに保健室の扉が閉まる音を聞いた。
地獄のような目覚めだったが、また三好を見ても呼吸が苦しくなることはなかった。そのことだけが不幸中の幸いだった。
シャツの上から、三好の手が俺の体に触れる。
それだけで体が拒否反応を示した。
気づいたら三好のお腹を蹴り飛ばしていた。
少し寝て休んだおかげか、思っていた以上に足に力がこもっていた。
蹴られた三好は身体をのけぞらせ、よろめき、ベッドの上に尻もちをついた。
人に酷いことをしてしまった。
その事実に放心状態になる。
「てめぇ、誰を蹴ってんだよっ!ああ!?」
三好はぎろりと俺を睨みつけると、すぐに身体のバランスを戻し、こちらに手を伸ばす。
その手が俺の前髪を引っ掴んだ。
「い゛っ…!!」
「おめぇごときが、調子のってんじゃねえよ!」
三好の怒り方はこれまでで一番、酷かった。
額に青筋を立てて怒鳴るその姿に、思わず体をすくめる。
いつ殴られてもおかしくない状況だった。
こんなふうに剥き出しの敵意を向けられることは、今までになくて怖くて仕方なかった。
さっきは反射的にだが蹴ることができたのに、今はもう声すら出ない。
その時ふと、仇野の言葉が脳裏によぎった。
仇野は俺の弱さが原因で追い込まれているんだと言っていた。
確かに楓と肉体関係を持ったのも、心の弱さからだった。そしてその関係を三好に知られ、つけ込まれた。
三好をここまで凶暴にさせたのも俺の弱さが原因だ。何も言い返せず、まともな抵抗もできなかった。
ぜんぶ、ぜんぶ、俺のせいだ。
このままじゃ、いけない。
「…やめて……。」
小さな声だった。でも、その言葉に反応して三好の眉がぴくりと動いた。
「もう…、やめてっっ!俺に…俺に触らないでっ、触るなッ!」
こんなに大きな声をあげて、誰かに抵抗するのは初めてだった。慣れない言動に声が上擦った。
必死だった。
やみくもに足を動かし、また三好の身体を蹴った。今度は罪悪感を感じて放心することもなかった。
縛られた腕のせいで逃げられないことは分かっていたけど、それでも目の前の状況に抗いたいと強く思った。
もう、弱いままの自分は嫌だ。
三好は黙ってそれを眺めていたが、ぶはっと吹き出した。険しかったその表情が一気に破顔する。
「お前、必死すぎんだろ。マジでウケるわ。」
その感情の揺れ幅が異様に思えて、恐怖を覚えた。
三好はひとしきり笑うと、俺の顔を見ながら愉快そうに話し出す。
「俺さ、何しても無反応で反応薄い奴、すげームカつくんだよな。前に言っただろ?
俺の存在なんて、いねーみたいに扱ってるみたいで、それが腹立つっつーか…。
だから、今のお前みたいに必死に抵抗してくる奴をねじ伏せる方が、最高に気分良くて興奮するって、ずっと思ってきたわけ。
けど、違ったわ。」
三好の顔がまた一変する。
スッと据わった目が不穏な雰囲気を放っていた。その目は、濁った水の底のように暗く澱んだ色をしていて光など一切、存在していない。
「お前のその態度見てたら、興奮どころか、なぶり殺したくなったわ。
お前は俺より、クソほど格下だろーが。股開くしか、才能がねぇ薄汚ねー豚が、偉そうに刃向かってんじゃねえよ。」
そう言った次の瞬間、三好の手が無理矢理、俺のシャツを破いた。ぶちぶちっとボタンがいくつも飛び散り、前がはだける。
はだけたシャツの間から日に焼けておらず、白く、筋肉のついてない貧相な体があらわになった。
三好の口が、目の前で大きく開く。
鋭く尖った犬歯が見えた。
その歯が躊躇なく、俺の胸元に突き立てられた。
まるで獣が獲物の肉を引き裂く時のような、容赦ない凶暴さだった。
「あ゛ッ…!!」
胸元、ちょうど乳首のあたりに鋭い痛みが走り、筋肉がこわばる。
俺の反応など気に留めず、三好はぎちぎちと噛み続けた。焼けつくような熱とともに、皮膚の奥からじわりと何か溢れ出す。
自分を奮い立たせ、抵抗したはずなのに、それはあっけなく容赦ない暴力で踏み躙られた。
苦痛に顔を歪めて弱りきった俺を見て、三好はようやく胸元から顔を離した。
そして俺の顔の前でべろりと舌を見せつけた。
そこには真っ赤な血が、べっとりとついていた。
「次はお前の使い道のねー、ペニスでも食いちぎってやるよ。
体中、食いちぎられて血まみれになって泣き叫ぶか、感じてるフリでもして喘いで、俺に媚びて許してもらうか。どっちか選べよ。俺はやさしーから、選ばせてやるよ。」
三好は俺を追いつめ、自尊心を徹底的に潰すような提案を楽しげにした。
三好の顔がまた、俺の胸元に近づく。
その舌先で、乳首の血が滲んだ歯型の痕をつつくようにして舐めた。ピリっと刺すような痛みが走り、思わず身をよじった。
「ま、お前、無理矢理されても、おっ勃つぐらいの変態だし、何されても平気か。」
もう一度、三好の歯が歯型の痕に突き立てられる。
噛みつかれるー
そう察した瞬間、三好の悪質な提案を受け入れ、わざと声を漏らした。
耐え難いほどの屈辱だった。
「あっ…」
不自然に漏れたその声の意図に、三好はすぐに気づいて鼻で笑った。
三好の舌が乳輪をねっとりと舐めあげる。
傷口に触れるたびに、痛みが走った。気持ちよさなんてなにも感じなかった。感じるのは、三好と俺へのとてつもない嫌悪感。
「ん…っ、ふぅ……、」
三好は、胸の突起を弄ぶように舌先で軽く潰しては、吸いつく。
ぴちゃっ、じゅぅ…、と響く音と眼前のその光景に、顔から火が出そうなほどの羞恥心を感じた。
三好の行為は愛撫のようだった。
乱暴さはなく、これじゃ、まるで合意でしているように見えた。
『なぶり殺したくなる』
三好はそこまで言った。それ相応の恥ずかしめを俺にする為にわざとしているとしか、思えなかった。
「…んぁ、んっ…、」
「ヘタクソ。もっと、それらしく喘げよ。
天羽とヤってる時はどろどろになって、さんざん下品な声、漏らしてんのにできねぇのかよ。」
三好は俺を嘲りながら、胸元からお腹へ舌を這わせていく。その感触にぴくっと体が小さく反応してしまう。
やがてその舌は下腹のへと滑り落ち、スラックスと下腹のわずかな隙間、肌と布がせめぎ合うその境目に忍び込んだ。
「ひっ、んぅっ…」
敏感な神経が集まっている、すぐそばを舐められ、ぞくりとする。
思わず、フリじゃない声が漏れた。
言葉で言い表せないくらい最悪な気分だった。
三好は俺のスラックスをずり下げると、そのまま太ももの間に顔を入れて、脚の付け根を舐めた。その舌の生々しい感触に内股がわずかに震える。
「お前はカマ野郎だから、こっちの方が好きだったよな。わりぃ、わりぃ。」
そう言って、三好はパンツの上から尻の窄みに指先を食い込ませた。
「ひぃっ、」
薄い布の下で昨日の三好との行為で裂けたままの皮膚が、じくじくと痛んだ。
「待って…っ、おねがいっ…、」
「誰がてめぇみたいな、ヤリマンの頼み聞くかよ。」
制止も無視され、パンツもずり下げられる。
三好の指が直接、そこに触れた。
「…っ!!」
三好はどこから取り出したのか、どろりとした冷たい透明の液体をそこにぶちまける。冷えた感触にふるりと体が震えた。
すぐに、傷だらけのまだ熱っぽい粘膜を押し開くように三好の指が入ってくる。痛みに耐える為に下半身に力を入れるので精一杯だった。
次の瞬間、太ももに容赦なく、歯が立てられた。
「うっ、あ゛…!」
「おい、声、忘れてんじゃねぇよ。」
これ以上、酷い目に遭わない為にも三好の言うことを聞くしかなかった。
「あっ…んっ、あぁ……っ、ふぅ…っ」
情けなく喘ぐふりをする自分に、心から吐き気がした。
下半身にたっぷりと垂らされた液体のせいで三好の指が奥に進む度に、にゅぷぷっと、耳を塞ぎたくなるような卑猥な音が聞こえてくる。
あるのは熱と痛みと羞恥心と嫌悪感。
そこには快楽なんて、ない。
三好の指が増やされる。
入り口の皮膚が裂けた部分が広がりズキンと鋭い痛みが走るが、歯を食いしばって我慢した。
その指が精器の裏側あたりのしこりを挟むようにして、ぎゅうっと潰した時、大袈裟に体が跳ねた。
「んあッ‥!」
明らかにその声は“感じているフリ”ではなかった。
「ひっ…、あ、あっ、んッ、や…っ」
三好もその違いに気づいたのだろう。
腰を引いて逃げようとする俺の腰をがっちりと掴むと、そこを重点的に何度も腹の指で擦って、潰した。
「んあっ…はっ、あッ、んっ…あぁっ、」
「フリにしちゃ、すげー気持ちよさそーだな、尻軽。」
許せなかった。こんな状態でも感じてしまう自分が。
昨日、似たような理由で、風呂場で嘔吐した記憶が思い起こされる。
「ふぁ、ああ…っ、っ、んあ゛ッ!!」
三好の指がぎちりと、腫れたしこりをつねり、ひねった。それとともにガクガクと内股が痙攣し、腰が浮く。性器からびゅっと精液が飛び出して腹を汚した。
気づけば、瞼からボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
「うぅ……ひくっ、ひぐ、うっ…」
自分の体があさましいものに変わってしまったことに、ただ、ただ、絶望して泣いた。
「泣くくらい気持ちよかったかよ、マゾ野郎。
もっと快くしてやるよ。
見えねぇ方が、もっと感じんだろ?」
三好はそんな俺に構わず、俺の目元を制服のネクタイで覆う。
抵抗する気はなかった。
もうこのまま、快楽に流された方が楽だと思った。やっぱり俺は弱いまま、変わることなんてできない、そう思った。
三好は俺の尻の間に膨張した自分の性器を当てつけた。ひどく興奮したように荒い息をしていた。
左右の膝の裏を掴まれ、股を大きく開かされる。
三好の先走りでぬめった性器が内壁を潰すように押し入ってきた。
治っていない裂け目がさらに広がり、痛みが走る。でも、その痛みさえもいつの間にか快楽に変わっていた。
心が完全に壊れるのを感じた。
三好の性器は俺の弱いところばかりを突いた。
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「んあぁ…っ、あっ、あっ、んん゛っ…」
「お前だって楽しんでんだろ、ビッチ。
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これが俺の本性なのかもしれない。
淫らな姿を受け入れるしかなかった。
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三好も余裕がないのか、蔑むような言葉を発しなくなっていた。
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腰を打ちつけられるスピードがさらに速くなる。
内股がビクビク震え、ふくらはぎがきゅっと引きつった。限界が近かった。
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「…っ、中に出してやっから、こぼさず受け止めろよ。」
無意識のうちに、三好の背に脚を回していた。
恥も戸惑いも嫌悪すらも、全て残っていなかった。
三好も俺も周りなんてこれっぽちも見えていない。まるで獣みたいに激しい交尾をし、絶頂を迎えようとしていた。
「ぐえっ、あ゛っ、」
その時、三好の潰れた声が聞こえて、ずるりと中から性器が抜け出た。何がなんだか分からずに唖然とする。
「お゛、ごぉっ、」
今度は、三好の足が悶え苦しむように俺の体を何度か蹴飛ばした。
目元を隠され、何が起こっているか見ることはできなかったが、三好が何者かに襲われていることは分かった。ギシっとベッドに誰かの体重が加わる音がした。
本来の状況だったら、願ってもみない展開のはずなのに恐ろしくて仕方がなくて体が硬直した。
「ぐげっ、ぐぅ、」
三好の苦しむ声と、ガリガリと必死に引っ掻くような音が部屋に響いた。
「……死んじゃう。」
ポツリと自分の口から言葉が漏れる。
「…し、死んじゃうからっ、やめてっ…!」
気づいたら、そう口走っていた。
三好に散々嬲られてきたのにそれでも止めるべきだと、失いかけていた理性がそう告げていた。
だが、三好を襲っている人物は俺の言葉を聞き入れてくれることはなかった。
三好の声は聞こえなくなり、かわりにピクピクと痙攣したつま先が俺の体を蹴った。
その直後、ツンと鼻につくような匂いがした。
温かい液体がベッドシーツを伝ってきて俺を濡らした。
その液体が尿だと気づくのに時間はかからなかった。
そして、それが三好のものだと気づくのにも。
「…も、いやだ…、…怖い、…怖いよ……。」
壊れたはずの心に、ダムが決壊したようにいろんな感情が流れ込んでくる。
小刻みに震えながら、ぼそぼそとうわごとのように言っていると、ベッドのスプリングが軋み、誰かが近寄ってくる気配がした。
俺も襲われる。
咄嗟にベッドの上で体を丸め、自分を守った。
その時、ふわりと、覚えのある香りがした気がした。
細い指先が俺の頬に伸びてきて、あやすように撫でる。そして、その指先はいつの間にか流れていた俺の涙を拭うと、名残惜しそうに離れていった。
しばらくして、ごんっと鈍い音とずるずると何かを引きずる音がした。
それから、その音とは不釣り合いなほど静かに保健室の扉が閉まる音を聞いた。
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言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
溺愛極道と逃げたがりのウサギ
イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。
想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。
悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。
※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。
二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。
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