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18話
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アシルの身体もそれなりに損傷をしていたが、回復が早かった。
この世界に帰ってきて2、3日は高熱を出して、食事も摂れないし眠ってもすぐ起きてしまうほどの痛みに見舞われていた。
しかしサーナの治癒魔法が効いたことが大きく、4日目にはなんとか食事も摂れるようになり、ぐっすり眠るほどまで落ち着いた。
と言っても、リハビリが必要で、回復まで2週間を要した。
「……そいつの様子はどうだ?」
3日目までは他を気遣える余裕がないほど苦しんでアシルだが、4日目からは、痛い身体を引きずりながらでもルミナスの様子を見に来ていた。
「安静にしていてください」
ルミナスに付きっきり看病していたサーナが、やつれた様子を見せながらアシルをたしなめた。
サーナは優秀な魔法使いであるが、連日アシルとルミナスに回復魔法を使い続けているため、体力の消耗がとても激しい。ほぼ休みなく治療に当たっているためだ。魔力も体力も無限ではない。枯渇すれば死に瀕する。
「お前もすこしは休め」
回復してきたアシルよりも顔色の悪いサーナを労うが、彼女はルミナスに力を注いでいるため、アシルに視線を合わせず力なく答える。
「ルミナスさんの基礎体力が非常に低いためか、うまく魔力を吸ってくれないんです。それどころか、時々身体が拒否反応を起こすんです。他の人に任せられる状態ではないし、もし私が休んだりしたら、その間にルミナスさんは……」
やや感情が昂ってきた様子を見せるサーナの頭を優しく撫でる。
それで自分が興奮して気を乱してしまっていたことを把握したサーナは、頭を振ってから深呼吸をした。
「……取り乱しました。ですが、そういうことで、私のことはお構いなく……」
「そういうわけにはいかねえよ。……数分ならオレが見ているから、軽く飯を食え。簡単に高カロリーのものを摂取できる食べ物を、ミンクに作ってきてもらったからよ」
そう言い、バケットに入ったものを差し出す。
しばらく反応せずにルミナスへ魔力を注ぎ込んでいたサーナだが、ひと段落した様子を見せ、「では2~3分ほど、お願いします」とアシルへ交代してくれた。
「おう」
アシルは魔法使いではないから、回復魔法を使うことが出来ない。こちらの世界に戻ってくる際に使った術式は、魔力を使いこなせない一般人でも、力の使い方を理解出来ればなんとか使えただけで、基本頭を使うのが嫌いなアシルには取り扱うことが出来ない。
だから、ただルミナスのやせ細った青白い腕を握りしめながら祈ることしか出来なかった。
(祈るなんて、オレらしくねえけどさ)
藁にも縋る気持ちであった。
彼女が回復して目を覚ましてくれるのなら、悪魔にだって魂を売ろうと思えている。
こんな気持ちは初めてであった。
異世界に行く前も、行ってからも、アシルは一度も神や悪魔なんて存在に縋ったことはなかった。
だから今、愛する存在が昏睡状態にある状態を前に、自分がいかに無力かを思い知らされた。
そして、それから数日後に一瞬目を覚ました彼女が自分たちのことを何も覚えていない様子を見て、はじめてアシルの心が挫けそうになった。
自分のことも覚えていないのではないかという可能性が、自分の中で絶望に変わっていくのが分かる。
「……では、この子を諦めるんですか?」
ルミナスの身体に耐えず治癒魔法を施すサーナから冷徹に問われ、絶望に揺らいでいたアシルの心はなんとか立ち直れた。
「……諦めないでくれ。オレも諦めない。こいつがオレたちのことを覚えていようがいまいが、オレはこいつに生きてもらいたい」
握った拳が震える。
「……それに、こいつは覚えていなくても、オレのことをまた愛してくれるし、オレもこいつを愛し続けるって、思っているから」
そう告げれば、サーナは呆れたように、しかしどこか安堵したように小さく笑った。
「それにしても、恋人に向かって『こいつ』呼ばわりはないんじゃないですか?」
サーナが咎めるように指摘してくる。
「……仕方がないだろう。オレは『こいつ』の名前を知らないんだ」
「?」
この世界に帰ってきて2、3日は高熱を出して、食事も摂れないし眠ってもすぐ起きてしまうほどの痛みに見舞われていた。
しかしサーナの治癒魔法が効いたことが大きく、4日目にはなんとか食事も摂れるようになり、ぐっすり眠るほどまで落ち着いた。
と言っても、リハビリが必要で、回復まで2週間を要した。
「……そいつの様子はどうだ?」
3日目までは他を気遣える余裕がないほど苦しんでアシルだが、4日目からは、痛い身体を引きずりながらでもルミナスの様子を見に来ていた。
「安静にしていてください」
ルミナスに付きっきり看病していたサーナが、やつれた様子を見せながらアシルをたしなめた。
サーナは優秀な魔法使いであるが、連日アシルとルミナスに回復魔法を使い続けているため、体力の消耗がとても激しい。ほぼ休みなく治療に当たっているためだ。魔力も体力も無限ではない。枯渇すれば死に瀕する。
「お前もすこしは休め」
回復してきたアシルよりも顔色の悪いサーナを労うが、彼女はルミナスに力を注いでいるため、アシルに視線を合わせず力なく答える。
「ルミナスさんの基礎体力が非常に低いためか、うまく魔力を吸ってくれないんです。それどころか、時々身体が拒否反応を起こすんです。他の人に任せられる状態ではないし、もし私が休んだりしたら、その間にルミナスさんは……」
やや感情が昂ってきた様子を見せるサーナの頭を優しく撫でる。
それで自分が興奮して気を乱してしまっていたことを把握したサーナは、頭を振ってから深呼吸をした。
「……取り乱しました。ですが、そういうことで、私のことはお構いなく……」
「そういうわけにはいかねえよ。……数分ならオレが見ているから、軽く飯を食え。簡単に高カロリーのものを摂取できる食べ物を、ミンクに作ってきてもらったからよ」
そう言い、バケットに入ったものを差し出す。
しばらく反応せずにルミナスへ魔力を注ぎ込んでいたサーナだが、ひと段落した様子を見せ、「では2~3分ほど、お願いします」とアシルへ交代してくれた。
「おう」
アシルは魔法使いではないから、回復魔法を使うことが出来ない。こちらの世界に戻ってくる際に使った術式は、魔力を使いこなせない一般人でも、力の使い方を理解出来ればなんとか使えただけで、基本頭を使うのが嫌いなアシルには取り扱うことが出来ない。
だから、ただルミナスのやせ細った青白い腕を握りしめながら祈ることしか出来なかった。
(祈るなんて、オレらしくねえけどさ)
藁にも縋る気持ちであった。
彼女が回復して目を覚ましてくれるのなら、悪魔にだって魂を売ろうと思えている。
こんな気持ちは初めてであった。
異世界に行く前も、行ってからも、アシルは一度も神や悪魔なんて存在に縋ったことはなかった。
だから今、愛する存在が昏睡状態にある状態を前に、自分がいかに無力かを思い知らされた。
そして、それから数日後に一瞬目を覚ました彼女が自分たちのことを何も覚えていない様子を見て、はじめてアシルの心が挫けそうになった。
自分のことも覚えていないのではないかという可能性が、自分の中で絶望に変わっていくのが分かる。
「……では、この子を諦めるんですか?」
ルミナスの身体に耐えず治癒魔法を施すサーナから冷徹に問われ、絶望に揺らいでいたアシルの心はなんとか立ち直れた。
「……諦めないでくれ。オレも諦めない。こいつがオレたちのことを覚えていようがいまいが、オレはこいつに生きてもらいたい」
握った拳が震える。
「……それに、こいつは覚えていなくても、オレのことをまた愛してくれるし、オレもこいつを愛し続けるって、思っているから」
そう告げれば、サーナは呆れたように、しかしどこか安堵したように小さく笑った。
「それにしても、恋人に向かって『こいつ』呼ばわりはないんじゃないですか?」
サーナが咎めるように指摘してくる。
「……仕方がないだろう。オレは『こいつ』の名前を知らないんだ」
「?」
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