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32話
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「…………ひゃあ?!」
考えることに集中していたが、ふと視線を感じて横を向くと、ルミナスの頬に当たるギリギリの位置までアシルの顔面が近づいていた。
驚いて飛びのけると、アシルは我に返るような動作をした後、素知らぬ顔でそっぽ向く。
「な、なに……?」
まだ心臓がバクバクと動いている。
アシルは他所を向きながら「別に……」とつぶやくだけだ。
「???」
「アシルは引っ込んでいてくれませんか? 今は『女の子同士の会話』なので。参加したければ女装でも性転換でもしてから参加してくれます?」
サーナの物言いが、やはり上司に向けられるものではないのではないかと恐々としていたが、当のアシルはそれを気にした様子もなく、ただ参加出来ないことを不満に思うという感じだ。
今のやりとりのせいで、すっかりルミナスの頭の中に浮かぶ男性像が、アシル一択になってしまった。
もともと人との関わりがなかった人生で、深く接した男性と言えば居候先の家族と、会社の人たちくらいだ。
それで『深く接している』レベルだ。
むしろ、コチラの世界に来てから接してくれた、アシルとナインのほうがよく知っているような気がする。気がする、だけで、やはりまだ何も知らないのだ。
その中で、特に今密接に関わっているアシルしか思い浮かばなかったのだ。
「……好きな男性のタイプ、特にないです」
「……え?」
サーナが呆気に取られた表情をしたので、「期待外れだ」と思われたのかもしれない、この質問は間違いだったのかもしれないと焦って言い直した。
「な、ナインさんのような感じの方が、格好いいと思います!」
アシルしか思い浮かばなかったので、アシルを思考から払いのけたら、残っているのはナインだけだったのだ。
「…………え」
サーナが表情を固まらせ、ぎこちない動きで首を横に向けた。
つられてそちらを見ると、何故か視線の先でアシルが灰になっていた。
「あ、アシルくん……?!!?」
「え、っと、ルミナス……その、な、ナインが格好いいというのはわかりました。では、あ、アシルは格好いいと思われませんか……?」
「?」
サーナの質問の意味が分からず、首を傾げた。
「……脈ナシかぁ……」
彼女のその言葉を聞いたか否か、アシルが雄叫びを上げながら食堂を飛び出した。
「あ、あれ? メインは……」
今しがた朝食のメインを運んできたミンクが、突然食堂を飛び出したアシルの姿を見てショックを受けていた。
彼に食べてもらえないことを、深く悲しんでいるようだ。
どうやら、自分が何か言ってしまったらしいと察する。アシルが飛び出していってしまうほどの、何かを。
それが何かはわからないが、謝らないといけないと席を立つが、足に力が入らず後ろにひっくり返ってしまった。
「わわっ、ルミナス、無茶はしないでください!」
テーブルの向かい側で立ち上がるサーナと、自分を抱き起こしてくれたミンクにそれぞれお礼を言った。
そうして、自分の足をマッサージしようと駆け寄ってくれた白い毛玉たちにも「ありがとう」とお礼を言う。
それが通じたのか、白い毛玉……幸運の魔物たちは嬉しそうにルミナスの足の上で飛び跳ねていた。
「……アシルくんを呼んでこないと……」
「……いやー、今は行かないほうが良いんじゃないかな?」
「え、どうして……。ま、まさか、私、会わないほうが良いほど怒らせるようなことを……」
「そ、そうじゃないけれどォ……」
サーナは視線を彷徨わせながら、何と言ったらいいかと悩んでいた。やはり自分が何か悪いことを言ってしまったのだと、ルミナスは肩を落とした。
しかしすぐに、やはり謝ろうと思ったのだ。
「サーナさん、すみませんが、肩を貸してくれませんか? やっぱりアシルさんに謝りたいです!」
「……でも、ですね……」
「だって、さっきアシルさん、とてもつらそうな顔をしていて……その、うまく言えないけれど、アシルさんには笑っていてもらいたいんです……」
「……どうして?」
「……笑っているアシルさんの顔を見たいんです。なんだか、アシルさんが笑っているほうが、安心するから……」
「……ナインが笑うほうと、どちらのほうが安心しますか?」
「え?」
考えることに集中していたが、ふと視線を感じて横を向くと、ルミナスの頬に当たるギリギリの位置までアシルの顔面が近づいていた。
驚いて飛びのけると、アシルは我に返るような動作をした後、素知らぬ顔でそっぽ向く。
「な、なに……?」
まだ心臓がバクバクと動いている。
アシルは他所を向きながら「別に……」とつぶやくだけだ。
「???」
「アシルは引っ込んでいてくれませんか? 今は『女の子同士の会話』なので。参加したければ女装でも性転換でもしてから参加してくれます?」
サーナの物言いが、やはり上司に向けられるものではないのではないかと恐々としていたが、当のアシルはそれを気にした様子もなく、ただ参加出来ないことを不満に思うという感じだ。
今のやりとりのせいで、すっかりルミナスの頭の中に浮かぶ男性像が、アシル一択になってしまった。
もともと人との関わりがなかった人生で、深く接した男性と言えば居候先の家族と、会社の人たちくらいだ。
それで『深く接している』レベルだ。
むしろ、コチラの世界に来てから接してくれた、アシルとナインのほうがよく知っているような気がする。気がする、だけで、やはりまだ何も知らないのだ。
その中で、特に今密接に関わっているアシルしか思い浮かばなかったのだ。
「……好きな男性のタイプ、特にないです」
「……え?」
サーナが呆気に取られた表情をしたので、「期待外れだ」と思われたのかもしれない、この質問は間違いだったのかもしれないと焦って言い直した。
「な、ナインさんのような感じの方が、格好いいと思います!」
アシルしか思い浮かばなかったので、アシルを思考から払いのけたら、残っているのはナインだけだったのだ。
「…………え」
サーナが表情を固まらせ、ぎこちない動きで首を横に向けた。
つられてそちらを見ると、何故か視線の先でアシルが灰になっていた。
「あ、アシルくん……?!!?」
「え、っと、ルミナス……その、な、ナインが格好いいというのはわかりました。では、あ、アシルは格好いいと思われませんか……?」
「?」
サーナの質問の意味が分からず、首を傾げた。
「……脈ナシかぁ……」
彼女のその言葉を聞いたか否か、アシルが雄叫びを上げながら食堂を飛び出した。
「あ、あれ? メインは……」
今しがた朝食のメインを運んできたミンクが、突然食堂を飛び出したアシルの姿を見てショックを受けていた。
彼に食べてもらえないことを、深く悲しんでいるようだ。
どうやら、自分が何か言ってしまったらしいと察する。アシルが飛び出していってしまうほどの、何かを。
それが何かはわからないが、謝らないといけないと席を立つが、足に力が入らず後ろにひっくり返ってしまった。
「わわっ、ルミナス、無茶はしないでください!」
テーブルの向かい側で立ち上がるサーナと、自分を抱き起こしてくれたミンクにそれぞれお礼を言った。
そうして、自分の足をマッサージしようと駆け寄ってくれた白い毛玉たちにも「ありがとう」とお礼を言う。
それが通じたのか、白い毛玉……幸運の魔物たちは嬉しそうにルミナスの足の上で飛び跳ねていた。
「……アシルくんを呼んでこないと……」
「……いやー、今は行かないほうが良いんじゃないかな?」
「え、どうして……。ま、まさか、私、会わないほうが良いほど怒らせるようなことを……」
「そ、そうじゃないけれどォ……」
サーナは視線を彷徨わせながら、何と言ったらいいかと悩んでいた。やはり自分が何か悪いことを言ってしまったのだと、ルミナスは肩を落とした。
しかしすぐに、やはり謝ろうと思ったのだ。
「サーナさん、すみませんが、肩を貸してくれませんか? やっぱりアシルさんに謝りたいです!」
「……でも、ですね……」
「だって、さっきアシルさん、とてもつらそうな顔をしていて……その、うまく言えないけれど、アシルさんには笑っていてもらいたいんです……」
「……どうして?」
「……笑っているアシルさんの顔を見たいんです。なんだか、アシルさんが笑っているほうが、安心するから……」
「……ナインが笑うほうと、どちらのほうが安心しますか?」
「え?」
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