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34話
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「ご、ごめんなさい! え、えっと、これなんですか? パン? お菓子?」
ミンクに全力で謝り倒してから、ルミナスは席に座りなおらせてもらい、目の前の食事に目を輝かせた。
「お菓子。フレンチトーストのようなもんだ。食ってみ?」
アシルの言うとおり、それはフレンチトーストのように香ばしく焼きあがったパンが、厚みのある一口大に切られている。その上に真っ白な雪のような粉がまぶされており、甘く芳しい香りがする。
ミンクが「シナモンがまぶされています」と簡潔に教えてくれたので、初めて嗅いだシナモンの香りに引きつけられながら、出来たての湯気が立つ一口大のパンにフォークを刺し込んでみる。
じゅわりと汁がにじみ出て、もうその絵面だけで美味しさが伝わってくるようだ。
フォークを刺したそのパンを口の中にゆっくりと入れる。熱いかもしれないと身構えたが、湯気の印象よりずっと食べやすいあたたかさであった。
「おいひい!」
つい口の中に食べ物を含んだまま感想を言ってしまった。
慌てて口を押えて、必死に咀嚼してから、マナー違反を咎められないかと周囲を見回した。
しかしアシルもサーナもにっこりと優しい笑みで見守っていて、ミンクは、むずむずと何かに耐えるような表情を引き締めていた。
どういう感情なのか読めずにいると、アシルが「嬉しいよな、ミンク!」と笑顔で同意を求めた。
アシルに同意を求められたミンクは、顔を「ぽぽぽっ」と花が咲くような音と共に染め上げて、持っていたトレイで顔を隠しながら、そのまま厨房へ帰っていってしまった。
「ありゃ?」
アシルはなんでミンクが去ってしまったのか分からないという様子だったが、ルミナスもなんであんなに恥ずかしそうに去っていったのかわからなかった。
「よし、オレが理由を聞いてきてや……」
立ち上がったアシルを止めるように、サーナも立ち上がって叫んだ。
「やめてください、これ以上ボケ倒すのは!!!」
サーナの説明によると、ミンクは極度の人見知りで恥ずかしがり屋なので、ルミナスの反応を見て照れていたところに、アシルから意見を求める攻撃を受けて、恥ずかしさに耐えきれなかったのだという。
「ミンクが人見知りぃ? そぉかぁ?」
ただ一人、その説明に納得がいかない様子のアシルがぼやいた。
「たしかに少し内気かもしれないが、オレとちゃんと話してくれるぞ?」
「顔を真っ赤にして、たどたどしく話す少女の顔を見てそんな感想しか出ないんですか」
アシルのミンクに対する印象を聞き、サーナが呆れたように大きな息を吐き出した。
ルミナスもサーナと同意見だ。
ミンクと会ったばかりのルミナスでも分かった。
(ミンクちゃんは、アシルくんが好きなんだな)
そう思ったのと同時に、なにやら胸の中がムズムズとした違和感が生じた。
でもそれを自覚する前に、その感情は霧散した。
食事を終えると、「じゃあルミナス、部屋に帰るぞ」とアシルに抱きかかえられた。
「……あの、人を宙に浮かせる魔法とかはないんですか?」
「ないですね。あっても、アシルに止められますから」
サーナが困ったように微笑んだ。
自分を抱きかかえるアシルを見上げると、彼は「せっかくルミナスと密着出来る機会をみすみす失ってたまるか」と主張する。
面前に綺麗な顔立ちがあり、見た目より筋肉質な身体に抱きかかえられているという状況に心臓が持ちそうになかった。
せめて視界の刺激だけでも減らそうと、瞼を固く閉じて俯いた。
「ルミナス、どうした?」
ミンクに全力で謝り倒してから、ルミナスは席に座りなおらせてもらい、目の前の食事に目を輝かせた。
「お菓子。フレンチトーストのようなもんだ。食ってみ?」
アシルの言うとおり、それはフレンチトーストのように香ばしく焼きあがったパンが、厚みのある一口大に切られている。その上に真っ白な雪のような粉がまぶされており、甘く芳しい香りがする。
ミンクが「シナモンがまぶされています」と簡潔に教えてくれたので、初めて嗅いだシナモンの香りに引きつけられながら、出来たての湯気が立つ一口大のパンにフォークを刺し込んでみる。
じゅわりと汁がにじみ出て、もうその絵面だけで美味しさが伝わってくるようだ。
フォークを刺したそのパンを口の中にゆっくりと入れる。熱いかもしれないと身構えたが、湯気の印象よりずっと食べやすいあたたかさであった。
「おいひい!」
つい口の中に食べ物を含んだまま感想を言ってしまった。
慌てて口を押えて、必死に咀嚼してから、マナー違反を咎められないかと周囲を見回した。
しかしアシルもサーナもにっこりと優しい笑みで見守っていて、ミンクは、むずむずと何かに耐えるような表情を引き締めていた。
どういう感情なのか読めずにいると、アシルが「嬉しいよな、ミンク!」と笑顔で同意を求めた。
アシルに同意を求められたミンクは、顔を「ぽぽぽっ」と花が咲くような音と共に染め上げて、持っていたトレイで顔を隠しながら、そのまま厨房へ帰っていってしまった。
「ありゃ?」
アシルはなんでミンクが去ってしまったのか分からないという様子だったが、ルミナスもなんであんなに恥ずかしそうに去っていったのかわからなかった。
「よし、オレが理由を聞いてきてや……」
立ち上がったアシルを止めるように、サーナも立ち上がって叫んだ。
「やめてください、これ以上ボケ倒すのは!!!」
サーナの説明によると、ミンクは極度の人見知りで恥ずかしがり屋なので、ルミナスの反応を見て照れていたところに、アシルから意見を求める攻撃を受けて、恥ずかしさに耐えきれなかったのだという。
「ミンクが人見知りぃ? そぉかぁ?」
ただ一人、その説明に納得がいかない様子のアシルがぼやいた。
「たしかに少し内気かもしれないが、オレとちゃんと話してくれるぞ?」
「顔を真っ赤にして、たどたどしく話す少女の顔を見てそんな感想しか出ないんですか」
アシルのミンクに対する印象を聞き、サーナが呆れたように大きな息を吐き出した。
ルミナスもサーナと同意見だ。
ミンクと会ったばかりのルミナスでも分かった。
(ミンクちゃんは、アシルくんが好きなんだな)
そう思ったのと同時に、なにやら胸の中がムズムズとした違和感が生じた。
でもそれを自覚する前に、その感情は霧散した。
食事を終えると、「じゃあルミナス、部屋に帰るぞ」とアシルに抱きかかえられた。
「……あの、人を宙に浮かせる魔法とかはないんですか?」
「ないですね。あっても、アシルに止められますから」
サーナが困ったように微笑んだ。
自分を抱きかかえるアシルを見上げると、彼は「せっかくルミナスと密着出来る機会をみすみす失ってたまるか」と主張する。
面前に綺麗な顔立ちがあり、見た目より筋肉質な身体に抱きかかえられているという状況に心臓が持ちそうになかった。
せめて視界の刺激だけでも減らそうと、瞼を固く閉じて俯いた。
「ルミナス、どうした?」
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