聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美

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 それからの生活は、まさに「籠の中の鳥」ならぬ「ベッドの中の人間」だった。
 朝はガレオスが起きるまで抱きしめられ、昼は彼が執務をする玉座の隣(専用のふかふかクッション)に座らされ、夜はまた一緒のベッドへ。
 お風呂も「匂いが変わると困る」という理由で、同じバスルームに入れられ、彼好みの香油で洗われる。
 食事は人間界の王族でも食べられないような高級食材ばかりだし、魔族たちは皆、僕を「魔王様を救った聖人」として崇めている。
 正直、居心地は悪くない。いや、良すぎるくらいだ。
 ただ一つ、問題があるとすれば。

「……ガレオス様、少しきついです」

 夜。
 広大なベッドの上で、僕はガレオスに背後から抱きすくめられていた。
 彼の腕は僕の腰と胸をガッチリとロックし、足は僕の足に絡められている。
 いわゆる「スプーン曲げ」の体勢だ。

「我慢しろ。……こうしていないと、ミナトの成分を取り逃がす気がする」

 ガレオスは僕のうなじに唇を押し付け、深々と息を吸い込む。
 吸血鬼が血を吸うように、彼は僕から発せられる「何か」を摂取している。

「ふぅ……甘い。ミナトの匂いを嗅ぐだけで、脳髄が溶けるように安らぐ……」

 耳元で囁かれる低音ボイスと、背中に感じる彼の心音。
 それは恐怖ではなく、不思議な安心感を僕に与えていた。
 人間の国では、僕は「オマケ」だった。誰からも必要とされず、簡単に見捨てられた。
 でも、この人は違う。
 世界最強の魔王が、僕という存在だけを頼りにし、縋り付いてくる。

(……温かいな)

 冷たいはずの彼の体温が、今は心地よい。
 僕は諦め半分、愛着半分で、彼の腕に自分の手を重ねた。

「おやすみなさい、ガレオス様」
「ああ。……愛しているぞ、私のミナト」

 数百年分の睡眠不足を取り戻すように、ガレオスはすぐに寝息を立て始めた。
 その顔は、魔王としての威厳を脱ぎ捨てた、無防備な少年のようだった。
 この穏やかな日々が、あの「聖女」たちの来訪によって壊されることを、僕たちはまだ知らなかった。
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