三人の義兄から歪な愛を受けています

八百屋 成美

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「俺のこともちゃんと見てくれよ、エリオット」

 その言葉は、まるで迷子の子供のような響きを持っていた。しかし、エリオットの上に覆いかぶさってくるクリスの身体は、紛れもなく成熟した男のものであり、その瞳に宿る光は、純粋な庇護欲とは似て非なる、粘着質な熱を帯びていた。
 病で弱り切ったエリオットに、騎士として鍛え上げられた次兄の腕力に抗う術はない。彼はただ、これから起ころうとしていることを予感し、絶望に青ざめることしかできなかった。

「傷ついたお前を、俺が優しく慰めてやる」

 クリスは、そう囁きながら、震えるエリオットを強く、しかし壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめた。その抱擁は、次第に熱を帯び、慰めは甘い愛撫へとゆっくりと姿を変えていく。
 彼は、アレクシスが付けた痣に、そっと唇を寄せた。

「痛かっただろう、可哀想に……」

 その痣を慈しむように舌でなぞり、まるで傷を癒やすかのように優しく吸い上げる。その行為に、エリオットの身体がびくりと震えた。それは、アレクシスの支配的なそれとは全く違う、心を蕩かすような甘い刺激だった。

「俺が、もっと気持ちいいもので、悪い記憶を上書きしてやるからな」

 優しい言葉とは裏腹に、その行為はエリオットをさらなる背徳へと引きずり込んでいく。アレクシスへの裏切り。その罪の意識が、エリオットの胸を締め付けた。しかし、クリスの与える優しさと温もりは、傷ついた今の彼にとって、抗いがたい麻薬のようでもあった。
 クリスの唇は、痣から離れると、そのままエリオットの身体をゆっくりと下っていった。まるで聖地を巡礼するかのように、敬虔な動きで肌の感触を確かめ、その香りを吸い込む。胸の突起にたどり着くと、彼は悪戯っぽく笑った。

「ここは、もう知ってるんだろ? でも、俺のやり方は、兄様とは違うぜ」

 彼は、決して強く刺激することはなかった。ただ、舌の先端で優しく撫で、柔らかく吸い上げるだけ。それなのに、そのじらすような愛撫は、アレクシスの直接的な刺激よりも、身体の奥深くから、じわりと熱を湧き上がらせた。

「あ……く、りす……にい、さま……」
「そう、俺の名前を呼んで。アレク兄様のことは、忘れさせてやる」

 クリスの手は、エリオットの熱の中心へと伸びていった。アレクシスの夜を思い出して強張る身体を、クリスは焦らず、時間をかけてゆっくりと解きほぐしていく。

「大丈夫、怖くない。全部、俺に任せて」

 優しい言葉に導かれるまま、エリオットの身体から力が抜けていく。クリスは、そんな弟の姿を愛おしげに見つめると、さらに深く、その身体を探り始めた。そして、ついにその場所へとたどり着く。

「ここも、きっと酷いことをされたんだろうな。……俺が、綺麗にしてやる」

 クリスは、少しも躊躇うことなく、その固く閉ざされた場所に顔を埋めた。

「……っ!?」

 予想だにしなかった行為に、エリオットは驚きと羞恥で声も出なかった。温かく、湿った舌が、その入り口をゆっくりと舐め上げる。それは、彼が今まで経験したことのない、あまりに官能的で、背徳的な刺激だった。

「ん……ぁ……だ、め……です、にいさま、そんな……きたな……」
「汚くなんてない。お前の身体は、全部綺麗だよ、エリオット」

 クリスは、まるで熟れた果実を味わうかのように、執拗にその場所を舌で犯し続けた。内側をこじ開けようとする生々しい動きに、エリオットの思考は真っ白になる。アレクシスに力ずくでこじ開けられた恐怖の記憶が、クリスの与える蕩けるような快楽によって、少しずつ、しかし確実に塗り替えられていく。
 指を使わず、舌だけで、その場所はゆっくりと解きほぐされていった。硬く閉ざされていた入り口は、いつしか熱い蜜を滲ませ、自ら次の刺激を求めるかのように微かに蠢いていた。

「……ほら、もうこんなに準備できてる」

 クリスは顔を上げると、満足げに微笑んだ。その唇は、弟のもので艶めかしく濡れていた。彼はゆっくりとエリオットの上に身体を重ねると、その潤んだ瞳をまっすぐに見つめた。
 熱に浮かされ、潤んだ青い瞳。庇護欲を掻き立てるその瞳は、しかし同時に、見る者の理性を溶かす蠱惑的な光を宿していた。クリスは、その瞳から目を逸らせない。

「もう、痛い思いはさせない。気持ちいいことだけ、してやるから」

 その声は、誓いの言葉のように、静かで熱っぽかった。クリスは、エリオットの脚をそっと持ち上げると、自らの腰に絡ませる。そして、すでに蜜で濡れ光るその入り口に、ゆっくりと自分の熱の先端を当てた。

「……ん……」

 硬質な熱が触れただけで、エリオットの身体が甘く震える。恐怖ではなく、期待に。その反応に、クリスは愛おしげに目を細めた。
 その言葉通り、クリスの熱がエリオットの身体に入り込むとき、そこにアレクシスの夜のような引き裂かれる痛みはほとんどなかった。クリスが時間をかけて舌で解きほぐし、快感で満たした身体は、驚くほど素直に、そして貪欲に兄のすべてを受け入れようとしていた。まるで、乾いた大地が雨を吸い込むように、じわり、じわりと、その熱が奥深くへと迎え入れられていく。
 完全に一つになった瞬間、エリオットの口から、安堵のため息のような甘い声が漏れた。満たされていく感覚。アレクシスに与えられたのが支配される屈辱的な充足感だったとすれば、これは、優しさで包み込まれるような、蕩けるような充足感だった。
 アレクシスの、すべてを支配するような激しい律動とは違う。クリスの動きは、どこまでも優しく、エリオットの身体がどうすれば悦ぶのかを、一つ一つ確かめるようなものだった。
 深く、ゆっくりと突き入れ、一番奥を優しく刺激する。そして、抜くか抜かないかの寸止めで動きを止め、内部の感触を確かめるように、じらすように腰を回す。その度に、エリオットの身体の芯から、ぞくぞくとした甘い痺れが広がっていった。

「……ここ、か? エリオット……。ここが、気持ちいいのか……?」

 クリスは、エリオットが特に強く反応する場所を見つけると、そこに狙いを定めて、角度を変えながら何度も擦り付けた。

「あ……ん、ぁ……っ! にい、さま……そこ、は……」
「嫌か?」
「……い、やじゃ……ない、です……っ」

 そのしどろもどろな答えが、クリスの庇護欲と独占欲をさらに煽った。彼は、エリオットの耳朶に吸い付きながら、さらに腰の動きを速めていく。
 優しかった動きは、次第に情熱的な激しさを帯びていった。深く、速く、それでいて乱暴ではない。ただ、ひたすらにエリオットを悦ばせることだけを目的とした、愛の律動。
 その度に、エリオットの口からは、自分のものではないような甘い喘ぎ声が漏れた。

「あ、ああッ! クリス、兄様……! もっと……!」

 無意識のうちに、さらなる快感を求めて腰を揺らしてしまう。その淫らな姿に、クリスの理性の箍が外れた。

「エリオット……可愛い……っ、お前は、俺だけのものだ……!」

 彼はエリオットの身体を強く抱きしめると、嵐のような激しさでその身を突き上げた。シーツが乱れ、ベッドが軋む。二人の肌が合わさる生々しい音と、喘ぎ声だけが部屋に響き渡った。
 エリオットは、与えられる快感の波に何度も飲み込まれ、その中で確かに感じていた。自分は、優しい兄の手によって、快楽に溺れることを教え込まれているのだ、と。

「いく……エリオット、一緒だ……!」

 クリスが、絶頂を告げるように叫んだ。その瞬間、エリオットの身体の奥深くで、熱い奔流がほとばしる。アレクシスのそれとは違う、すべてを優しく包み込むような、温かな奔流。エリオットもまた、その熱に導かれるように、白い光の中へと意識を飛ばした。
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