三人の義兄から歪な愛を受けています

八百屋 成美

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 ゼムの研究室は、いつしか外界から完全に隔絶された実験室へと変貌していた。彼は、何重にも結界を張る呪文を詠唱し、この部屋で起きる出来事が、音も、気配も、決して外に漏れぬように設えた。エリオットは、黒曜石の長椅子の上で、逃げ場のない被験体として、ただ兄の次の行動を待つことしかできなかった。

「怖がることはないよ、エリオット。これは治療であり、研究だ」

 ゼムは、まるで興味深い昆虫でも観察するかのように、その紫の瞳を細めてエリオットを見下ろした。その手には、先端が丸みを帯びた、冷たい輝きを放つ水晶の棒が握られている。

「君の身体には、素晴らしい魔力親和性が眠っている。だが、兄さんたちの粗暴な行為で、その流れが淀んでしまっているんだ。僕が、それを正常な状態に戻してあげる」

 その言葉とは裏腹に、ゼムの行動は治療とは程遠いものだった。彼は、エリオットの衣服を、まるで不要な包装紙でも剥がすかのように、手際よく取り去っていく。完全に無防備な姿を晒されたエリオットは、羞恥と恐怖に身を縮こませた。

「兄様……お願いです、やめて……」
「おや、まだそんなことを言うのかい? 君の記憶は、先ほど見させてもらった。君はもう、快楽を知ってしまった身体だろう?」

 ゼムは、冷たい水晶の先端を、エリオットの胸の突起にそっと当てた。ひんやりとした感触に、エリオットの身体がびくりと震える。次の瞬間、水晶の棒が、微かな音と共に振動を始めた。

「あ……っ!?」

 今まで経験したことのない、身体の芯まで響くような、細かく、そして強い振動。それは、アレクシスの支配的な刺激とも、クリスの蕩けるような刺激とも全く違う、無機質で、抗いがたい機械的な快感だった。

「ふむ……。やはり、胸部の魔力結節点は反応がいいな。次は、ここだ」

 ゼムは、独り言のようにつぶやきながら、振動する水晶をゆっくりと下腹部へと滑らせていく。その動きは、どこまでも冷静で、分析的だった。まるで、エリオットの身体を、感情のないただの研究対象としか見ていないかのようだ。しかし、その紫の瞳の奥には、他の兄たちとは質の違う、粘着質で、歪んだ情欲の光が宿っていた。

「ここが、君の魔力が渦巻く中心点の一つだ。これを刺激すれば……」

 水晶の先端が、すでに熱を持ち始めたエリオットの中心に当てられる。そして、再び、あの微細な振動が始まった。

「ひッ……! あ、ああああッ!」

 先ほどとは比べ物にならないほどの強い快感が、脳天を直撃した。思考が真っ白になり、身体が勝手に痙攣する。まるで、身体中の魔力がその一点に集まり、暴走しているかのようだった。

「素晴らしい……! なんて素直な反応だ……!」

 ゼムは、恍惚とした表情で、エリオットの反応を観察している。彼は、箱からまた別の魔道具を取り出した。それは、滑らかな黒曜石で作られた、いくつもの大きさや形が違う球体だった。それらは、細い銀の鎖で繋がっている。

「これも、魔力循環を促すための道具だよ。君の身体の内部から、淀んだ魔力を掻き出してあげる」

 ゼムは、そう言うと、一番小さな球体を、すでに快感で濡れそぼった入り口へと押し当てた。

「いや……だめ、です……そんな、もの……」
「大丈夫。これは、君のために僕が特別に調整した魔道具だ。君を傷つけたりはしない。……ただ、快楽の虜にするだけだ」

 抵抗も虚しく、冷たく滑らかな球体が、一つ、また一つと、エリオットの身体の奥深くへと侵入してくる。異物が入ってくる感覚はあったが、不思議と痛みはない。むしろ、内部の敏感な粘膜を、球体が通り過ぎるたびに、ぞくぞくとした甘い疼きが走った。
 すべての球体が体内に入りきると、ゼムはその端を軽く引いた。

「んぐ……っ!」

 内部で、鎖に繋がれた球体が蠢き、的確に快感の源を刺激する。エリオットは、声にならない悲鳴を上げた。もはや、自分の身体ではないみたいだ。

「さあ、ここからが本番だよ、エリオット」

 ゼムは、恍惚の表情で、自らの衣服も脱ぎ捨てた。その身体は、騎士である兄たちとは違い、華奢で、しなやかなものだった。しかし、その内には、計り知れない魔力が渦巻いていることを、エリオットは肌で感じていた。
 ゼムは、ぐったりと長椅子に横たわるエリオットの身体を、まるで実験台の配置を変えるかのように、巧みに反転させた。そして、その背後から、内部に魔道具を埋め込まれたままのエリオットの身体に、自らの熱をゆっくりと沈めていく。

「ああ……っ、あああッ!」

 魔道具の冷たい硬さが、兄の生々しい熱が。同時に、そして別々の種類の刺激が、エリオットの最も敏感な場所を犯していく。その二重の刺激に、エリオットの理性は完全に焼き切れた。

「素晴らしい反応だ……。だが、これだけではまだ足りない」

 ゼムは、まだ満足していなかった。彼はエリオットの身体を貫いたまま、その上半身を起こさせると、自分の肩に凭れかかるような体勢を取らせた。そして、空いている方の手で、エリオットの顎を掴み、自分の方へと向かせる。

「君の口も、魔力の重要な排出口の一つだ。ここも、きちんと循環を促してやらなければね」

 その言葉と共に、ゼムは、まだ箱に残っていた別の魔道具を手に取った。それは、滑らかな瑪瑙で作られた、指のような形状のもので、持つと微かに温かい。

「これは、魔力を流すと持ち主の意のままに動く。……つまり、僕の指が、君の口の中でもう一本増えるようなものだよ」

 悪魔のような囁きと共に、その瑪瑙の指が、震えるエリオットの唇をこじ開けた。

「んぐ……ぅ……!」

 口内に侵入してきた異物は、まるで生き物のように蠢き、舌に絡みつき、上顎を撫で上げた。それは、ゼムの指そのものではないと分かっていながらも、あまりにリアルな感触で、エリオットの羞恥心を煽った。
 そして、悪夢のような饗宴が始まった。
 下半身は、ゼムの律動と、体内の魔道具の蠢きによって、絶え間なく快感を与えられ続ける。そして上半身は、口内を犯す魔道具と、時折落とされるゼムの舌なめずりによって、別の種類の快楽を教え込まれていく。
 ゼムの動きは、アレクシスのように激しくも、クリスのように優しくもなかった。それは、最も効率的に、最も強く、エリオットを快感の頂点へと導くための、計算され尽くした動きだった。
 彼は、魔術師としての優れた頭脳で、エリオットの身体がどの刺激に最も強く反応するのかを瞬時に分析し、攻撃のパターンを自在に変化させた。
 体内の魔道具の鎖を引いて内部を刺激しながら、同時に口内の魔道具の動きを速める。あるいは、腰の動きを一度止め、上下の魔道具だけを同時に振動させて、エリオットを焦らす。

「どうだい、エリオット? アレクシスやクリスには、こんな真似はできまい。これが、魔術的な快楽というものだよ」

 その声は、もはや兄のものではなかった。未知の現象を探求し、その反応に歓喜する、狂気の科学者の声だった。
 エリオットは、もはや自分が何をされているのかも分からなかった。ただ、今まで経験したことのない、強烈で、多彩な快感の嵐に、何度も何度も頂点へと突き上げられる。思考は麻痺し、ただ快感に喘ぐだけの肉塊と化していた。

「あ……ああ、にい、さま……! むり、こわれる……!」
「壊れはしないさ。むしろ、君は新しく生まれ変わるんだ。僕によってね」

 ゼムは、エリオットが限界に近いことを見て取ると、最後の仕上げに取り掛かった。彼は、口内と体内の魔道具を、同時に最大出力で振動させる。

「ああああああああああッ!」

 エリオットの身体が、大きく痙攣した。上下から同時に与えられる、人知を超えた快感の奔流。意識が完全に飛び、視界が真っ白に染まる。
 その瞬間を狙って、ゼムは自らの熱を、エリオットの身体の最も奥深くで解放した。
 それは、もはや交合というよりは、人体実験に近かった。しかし、その実験がもたらす禁断の果実は、あまりにも甘美で、抗いがたいものだった。
 エリオットは、天才魔術師である兄の手によって、快楽の探究の、その最も奥深い場所へと引きずり込まれ、完全に堕とされてしまったのだった。
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