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5. 騎士団長の暴走護衛
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健康診断での大騒動から数日が経過した。
あの日、私に声をかけてくれた空崎莉緒ちゃんとは廊下ですれ違うたびに「よっ、大変そうだね」と片手を上げてくれる、そんな奇妙な関係が続いていた。友達と呼ぶにはまだ距離があるけれど、この学校で唯一、私を普通の人間として扱ってくれる彼女の存在は、荒れ狂う非日常の海に浮かぶ小さな救命ブイのようだった。
とはいえ、私の学園生活が好転する兆しは依然として全く見えなかった。
原因はもちろん、あの自称・転生騎士団にある。彼らは私の「関わらないでください」という悲痛な願いを、「奥ゆかしい謙遜」あるいは「高度な照れ隠し」と超絶ポジティブに変換し、日々、あの手この手で私に接触を図ってくる。
軍師を名乗る如月伊呂波くんは、毎朝私の下駄箱に「本日の乃蒼様の幸福度を最大化するための行動指針」と題された、分厚いレポートを投函していく。諜報担当の倉吉凪くんは、気づけば常に私の視界の隅、半径五メートル以内にその姿がある。特攻隊長の早苗翔くんは、休み時間のたびに「よっ、乃蒼さま!」と馴れ馴れしく私の頭を撫でては、女子生徒たちの怨嗟の視線を集める的を私の背中に描いていく。
そして、その中でも最も厄介で、最も行動的で、最も私の精神を削ってくるのが騎士団長を名乗る男、一条彰人、その人だった。
その朝も悪夢は教室の扉を開ける前から始まっていた。
一年四組の教室の引き戸の横。まるで門番のように、一条くんが腕を組んで仁王立ちしていたのだ。彼がそこにいるだけで教室に入ろうとする生徒たちは皆、蜘蛛の子を散らすように遠巻きに距離を取っている。
「……おはようございます、一条くん。そこで何を?」
私が意を決して声をかけると、彼は待ってましたとばかりに太陽のような笑顔をこちらに向けた。
「おはようございます、乃蒼様! もちろん、貴女様がご無事に登校されるのを見届けるまで、この教室へ不審者が侵入するのを防いでおりました! これぞ、騎士団長として当然の務め!」
「不審者って……ここ、学校の教室ですよ」
「油断は禁物です! 貴女様の美しさに惹かれた不埒な輩が、いつ何時、この聖域を侵そうとするやも分かりません!」
彼は一点の曇りもない真剣な瞳でそう断言する。純粋な善意と忠誠心が百パーセント。だからこそ、タチが悪い。
「……そうですか。ご苦労様です。私は席に着きますので、もう大丈夫ですよ」
私は早々に会話を切り上げ、教室の中へと逃げ込もうとする。しかし、彼はそんな私を追いかけるように大股で自分の席へと向かいながら、なおも声を張り上げた。
「はい! 本日も一日、このレノーが、乃蒼様の学園生活を完璧にエスコートさせていただきます!」
教室中の視線が、再び私に突き刺さる。
もうやだ、この人。お願いだから、静かにして。私の心の叫びはもちろん彼の耳には届かない。
そして、その日のホームルームで、さらなる悲劇が私を襲った。
「えー、それじゃあ、そろそろクラス委員を決めたいと思う。男女一人ずつな。誰か、立候補したい奴はいるかー?」
担任の気の抜けた声に教室は水を打ったように静まり返る。誰もが面倒な役職を押し付けられまいと、目を逸らし、気配を消していた。私ももちろんその一人だ。クラス委員なんて、目立つ役職の代表格。絶対に避けなければ。
このまま誰も立候補せず、くじ引きか何かで決まるのだろう。そう思っていた、その時だった。
「先生! 私がやります!」
静寂を破り、ビシッと力強く手が挙がった。
声の主は、言うまでもない。一条彰人だ。
彼は颯爽と立ち上がると、クラス全員の注目を一身に浴びながら、自信に満ちた表情で教壇へと歩いて行った。
「私が、この一年四組のクラス委員、男子代表を務めさせていただきます!」
彼の堂々とした宣言に、女子生徒の一部から「キャー、一条くん!」という黄色い声が上がる。
「お、おお、一条か。やってくれるのか、助かるぞ」
担任も厄介事が一つ片付いたとばかりに安堵の表情を浮かべている。
「つきましては、この大役を拝命するにあたり、私の所信表明を述べさせていただく許可を!」
「え、あ、ああ。まあ、手短にな」
許可を得た一条くんはにこやかに一つ頷くと、くるりとクラスメイトの方へ向き直った。そして、私の方をちらりと見た。
――やめて! 私を見るな!
「皆の者、よく聞いてほしい!」
彼はまるで王の演説のように、朗々と語り始めた。
「私は、このクラスを、日本一……いや、世界一、安全で、秩序ある、理想的なクラスにすることを約束する! 不良の介入、いじめ、あらゆる理不尽から、弱い者を断固として守り抜く! そして何より!」
そこで彼は一度言葉を切ると、再び私の目を真っ直ぐに射抜いて、高らかに宣言した。
「このクラスの至宝である、夢見ヶ崎乃蒼様を、あらゆる脅威から完璧にお護りすることを、ここに誓う!」
シン……と静まり返る教室。
次の瞬間、どっと沸き起こる笑い声と、女子たちのさらに甲高い歓声。
「何言ってんだ、一条!」
「乃蒼ちゃんのこと、好きなのかよー!」
「ヒューヒュー!」
男子生徒たちのからかうような声と、女子生徒たちの「やっぱりそうなんだ!」「応援するー!」という声が入り混じる。私の顔は羞恥と怒りと絶望できっと茹でダコのように真っ赤になっていたに違いない。
「はっはっは、まあ、そういうことだ! 皆、私と共に、乃蒼様を……いや、このクラスを盛り上げていこうではないか! 以上だ!」
彼は満面の笑みで演説を締めくくり、クラス中からの拍手喝采を浴びながら席に戻ってきた。
こうして、一条彰人はその圧倒的なカリスマ性(と顔の良さ)でクラスの心を鷲掴みにし、満場一致で男子クラス委員に就任した。
そして、私の地獄はここからさらに加速していくことになった。
クラス委員という大義名分を得た一条くんの「暴走護衛」は、もはや誰にも止められなかった。
移動教室の時間になれば、彼は誰よりも早く私の机の横に立つ。
「乃蒼様、次の授業は美術室です。私が先導し、道の安全を確保します。ルート上の潜在的危険因子は全て排除済みです」
「結構です! 自分で普通に行けますから!」
「ご謙遜を! さあ、こちらへ!」
私の拒絶など意に介さず、彼は私の数歩前を歩き、廊下の曲がり角が来るたびにまるで特殊部隊のように壁に背をつけ、「前方、クリア!」などと指差し確認をする。その奇行のせいで移動中の全校生徒の視線が、私と彼に集中砲火されるのだ。
授業中に私がうっかり消しゴムを床に落とそうものなら、彼は椅子から飛び降りるような勢いでそれをキャッチし、「乃蒼様、お怪我は!?」と大声で叫ぶ。先生に「一条、静かにしろ」と注意されても、「失礼しました。しかし、これは騎士としての責務です」と悪びれもせずに胸を張る。
極めつけは、体育の授業だった。
準備運動で二人一組のストレッチをすることになった時、彼は当然のように私の前に立ち、「乃蒼様、このレノーが、貴女様の柔軟運動をサポートさせていただきます」と申し出てきた。私が近くにいた女子生徒と組もうとしても、「ならん! 乃蒼様の御身に、我々騎士団以外の者が触れることは許さん!」と、その女子生徒を威圧して追い払ってしまう始末だ。
彼の純粋すぎる忠誠心はもはや狂気の域に達していた。
そして、その純粋さが私から全ての反論の気力を奪っていく。彼は本気で、私のためにやっているのだ。悪意など、一ミクロンも存在しない。だから、私は強く怒ることもできずただただ「やめてください」「大丈夫です」と繰り返しながら、彼の暴走に振り回され心身ともに疲弊していくしかなかった。
昼休み、私がようやく一人になれるかもしれないと期待したその時も、一条くんはクラス委員としての権限を最大限に発動させた。
「皆の者! クラスの親睦を深めるため、今日は乃蒼様を囲んで昼食にしようではないか!」
彼の鶴の一声で、私の席の周りには生徒が集められてしまった。彼らは、一条くんの無言の圧力に屈したのか、あるいはただ面白がっているのか、皆、曖昧な笑みを浮かべてそこにいる。
「さあ、遠慮はいらん! 乃蒼様と語らう、またとない機会だぞ!」
一条くんがそう仕切るものの、彼の放つ「乃蒼様に無礼を働いたらわかっているだろうな?」という強烈なオーラのせいで、誰一人として私に話しかけてくる者はいない。
結果として、私の周りだけがまるで真空地帯のように静まり返るという、異様で気まずい空間が生まれてしまった。
私は、カチカチに緊張したまま、おじいちゃんが作ってくれたお弁当の卵焼きをただ黙々と口に運んだ。
味が、全くしなかった。
彼の行動は、全てが善意。全てが忠誠心。
そして、その全てが、私の望む「平凡な日常」を根こそぎ破壊していく。
一日が終わり、帰りのホームルームが始まる頃には私の胃はキリキリという悲鳴を上げ、HPは完全に底をついていた。
(私の普通は、どこ……?)
窓の外の茜色に染まり始めた空を見上げながら、私は心の中で静かに涙を流した。
一条彰人という、太陽のように明るくて、誰からも好かれる人気者のクラス委員が今の私にとってはジャングルで遭遇したどんな猛獣よりも恐ろしい存在に思えた。
あの日、私に声をかけてくれた空崎莉緒ちゃんとは廊下ですれ違うたびに「よっ、大変そうだね」と片手を上げてくれる、そんな奇妙な関係が続いていた。友達と呼ぶにはまだ距離があるけれど、この学校で唯一、私を普通の人間として扱ってくれる彼女の存在は、荒れ狂う非日常の海に浮かぶ小さな救命ブイのようだった。
とはいえ、私の学園生活が好転する兆しは依然として全く見えなかった。
原因はもちろん、あの自称・転生騎士団にある。彼らは私の「関わらないでください」という悲痛な願いを、「奥ゆかしい謙遜」あるいは「高度な照れ隠し」と超絶ポジティブに変換し、日々、あの手この手で私に接触を図ってくる。
軍師を名乗る如月伊呂波くんは、毎朝私の下駄箱に「本日の乃蒼様の幸福度を最大化するための行動指針」と題された、分厚いレポートを投函していく。諜報担当の倉吉凪くんは、気づけば常に私の視界の隅、半径五メートル以内にその姿がある。特攻隊長の早苗翔くんは、休み時間のたびに「よっ、乃蒼さま!」と馴れ馴れしく私の頭を撫でては、女子生徒たちの怨嗟の視線を集める的を私の背中に描いていく。
そして、その中でも最も厄介で、最も行動的で、最も私の精神を削ってくるのが騎士団長を名乗る男、一条彰人、その人だった。
その朝も悪夢は教室の扉を開ける前から始まっていた。
一年四組の教室の引き戸の横。まるで門番のように、一条くんが腕を組んで仁王立ちしていたのだ。彼がそこにいるだけで教室に入ろうとする生徒たちは皆、蜘蛛の子を散らすように遠巻きに距離を取っている。
「……おはようございます、一条くん。そこで何を?」
私が意を決して声をかけると、彼は待ってましたとばかりに太陽のような笑顔をこちらに向けた。
「おはようございます、乃蒼様! もちろん、貴女様がご無事に登校されるのを見届けるまで、この教室へ不審者が侵入するのを防いでおりました! これぞ、騎士団長として当然の務め!」
「不審者って……ここ、学校の教室ですよ」
「油断は禁物です! 貴女様の美しさに惹かれた不埒な輩が、いつ何時、この聖域を侵そうとするやも分かりません!」
彼は一点の曇りもない真剣な瞳でそう断言する。純粋な善意と忠誠心が百パーセント。だからこそ、タチが悪い。
「……そうですか。ご苦労様です。私は席に着きますので、もう大丈夫ですよ」
私は早々に会話を切り上げ、教室の中へと逃げ込もうとする。しかし、彼はそんな私を追いかけるように大股で自分の席へと向かいながら、なおも声を張り上げた。
「はい! 本日も一日、このレノーが、乃蒼様の学園生活を完璧にエスコートさせていただきます!」
教室中の視線が、再び私に突き刺さる。
もうやだ、この人。お願いだから、静かにして。私の心の叫びはもちろん彼の耳には届かない。
そして、その日のホームルームで、さらなる悲劇が私を襲った。
「えー、それじゃあ、そろそろクラス委員を決めたいと思う。男女一人ずつな。誰か、立候補したい奴はいるかー?」
担任の気の抜けた声に教室は水を打ったように静まり返る。誰もが面倒な役職を押し付けられまいと、目を逸らし、気配を消していた。私ももちろんその一人だ。クラス委員なんて、目立つ役職の代表格。絶対に避けなければ。
このまま誰も立候補せず、くじ引きか何かで決まるのだろう。そう思っていた、その時だった。
「先生! 私がやります!」
静寂を破り、ビシッと力強く手が挙がった。
声の主は、言うまでもない。一条彰人だ。
彼は颯爽と立ち上がると、クラス全員の注目を一身に浴びながら、自信に満ちた表情で教壇へと歩いて行った。
「私が、この一年四組のクラス委員、男子代表を務めさせていただきます!」
彼の堂々とした宣言に、女子生徒の一部から「キャー、一条くん!」という黄色い声が上がる。
「お、おお、一条か。やってくれるのか、助かるぞ」
担任も厄介事が一つ片付いたとばかりに安堵の表情を浮かべている。
「つきましては、この大役を拝命するにあたり、私の所信表明を述べさせていただく許可を!」
「え、あ、ああ。まあ、手短にな」
許可を得た一条くんはにこやかに一つ頷くと、くるりとクラスメイトの方へ向き直った。そして、私の方をちらりと見た。
――やめて! 私を見るな!
「皆の者、よく聞いてほしい!」
彼はまるで王の演説のように、朗々と語り始めた。
「私は、このクラスを、日本一……いや、世界一、安全で、秩序ある、理想的なクラスにすることを約束する! 不良の介入、いじめ、あらゆる理不尽から、弱い者を断固として守り抜く! そして何より!」
そこで彼は一度言葉を切ると、再び私の目を真っ直ぐに射抜いて、高らかに宣言した。
「このクラスの至宝である、夢見ヶ崎乃蒼様を、あらゆる脅威から完璧にお護りすることを、ここに誓う!」
シン……と静まり返る教室。
次の瞬間、どっと沸き起こる笑い声と、女子たちのさらに甲高い歓声。
「何言ってんだ、一条!」
「乃蒼ちゃんのこと、好きなのかよー!」
「ヒューヒュー!」
男子生徒たちのからかうような声と、女子生徒たちの「やっぱりそうなんだ!」「応援するー!」という声が入り混じる。私の顔は羞恥と怒りと絶望できっと茹でダコのように真っ赤になっていたに違いない。
「はっはっは、まあ、そういうことだ! 皆、私と共に、乃蒼様を……いや、このクラスを盛り上げていこうではないか! 以上だ!」
彼は満面の笑みで演説を締めくくり、クラス中からの拍手喝采を浴びながら席に戻ってきた。
こうして、一条彰人はその圧倒的なカリスマ性(と顔の良さ)でクラスの心を鷲掴みにし、満場一致で男子クラス委員に就任した。
そして、私の地獄はここからさらに加速していくことになった。
クラス委員という大義名分を得た一条くんの「暴走護衛」は、もはや誰にも止められなかった。
移動教室の時間になれば、彼は誰よりも早く私の机の横に立つ。
「乃蒼様、次の授業は美術室です。私が先導し、道の安全を確保します。ルート上の潜在的危険因子は全て排除済みです」
「結構です! 自分で普通に行けますから!」
「ご謙遜を! さあ、こちらへ!」
私の拒絶など意に介さず、彼は私の数歩前を歩き、廊下の曲がり角が来るたびにまるで特殊部隊のように壁に背をつけ、「前方、クリア!」などと指差し確認をする。その奇行のせいで移動中の全校生徒の視線が、私と彼に集中砲火されるのだ。
授業中に私がうっかり消しゴムを床に落とそうものなら、彼は椅子から飛び降りるような勢いでそれをキャッチし、「乃蒼様、お怪我は!?」と大声で叫ぶ。先生に「一条、静かにしろ」と注意されても、「失礼しました。しかし、これは騎士としての責務です」と悪びれもせずに胸を張る。
極めつけは、体育の授業だった。
準備運動で二人一組のストレッチをすることになった時、彼は当然のように私の前に立ち、「乃蒼様、このレノーが、貴女様の柔軟運動をサポートさせていただきます」と申し出てきた。私が近くにいた女子生徒と組もうとしても、「ならん! 乃蒼様の御身に、我々騎士団以外の者が触れることは許さん!」と、その女子生徒を威圧して追い払ってしまう始末だ。
彼の純粋すぎる忠誠心はもはや狂気の域に達していた。
そして、その純粋さが私から全ての反論の気力を奪っていく。彼は本気で、私のためにやっているのだ。悪意など、一ミクロンも存在しない。だから、私は強く怒ることもできずただただ「やめてください」「大丈夫です」と繰り返しながら、彼の暴走に振り回され心身ともに疲弊していくしかなかった。
昼休み、私がようやく一人になれるかもしれないと期待したその時も、一条くんはクラス委員としての権限を最大限に発動させた。
「皆の者! クラスの親睦を深めるため、今日は乃蒼様を囲んで昼食にしようではないか!」
彼の鶴の一声で、私の席の周りには生徒が集められてしまった。彼らは、一条くんの無言の圧力に屈したのか、あるいはただ面白がっているのか、皆、曖昧な笑みを浮かべてそこにいる。
「さあ、遠慮はいらん! 乃蒼様と語らう、またとない機会だぞ!」
一条くんがそう仕切るものの、彼の放つ「乃蒼様に無礼を働いたらわかっているだろうな?」という強烈なオーラのせいで、誰一人として私に話しかけてくる者はいない。
結果として、私の周りだけがまるで真空地帯のように静まり返るという、異様で気まずい空間が生まれてしまった。
私は、カチカチに緊張したまま、おじいちゃんが作ってくれたお弁当の卵焼きをただ黙々と口に運んだ。
味が、全くしなかった。
彼の行動は、全てが善意。全てが忠誠心。
そして、その全てが、私の望む「平凡な日常」を根こそぎ破壊していく。
一日が終わり、帰りのホームルームが始まる頃には私の胃はキリキリという悲鳴を上げ、HPは完全に底をついていた。
(私の普通は、どこ……?)
窓の外の茜色に染まり始めた空を見上げながら、私は心の中で静かに涙を流した。
一条彰人という、太陽のように明るくて、誰からも好かれる人気者のクラス委員が今の私にとってはジャングルで遭遇したどんな猛獣よりも恐ろしい存在に思えた。
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