双面の王子に愛されています

八百屋 成美

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 その夜、王子の寝室は、いつもより明るい月の光に満たされていた。
 豪奢な天蓋付きのベッド。その中央に座らされたルカの目の前には、この世で最も美しい二つの存在が並んで立っていた。

「……目隠しはなしだ、ルカ」

 カイが、ルカの顎をすくい上げて告げる。
 その隣で、イルスが静かに衣を脱ぎ捨てていく。月光を浴びた双子の裸身は、大理石の彫刻のように美しく、そして瓜二つだった。
 鍛え上げられた胸板、引き締まった腰、そして男としての昂ぶり。
 すべてが二つある。その圧倒的な光景に、ルカは眩暈を覚えた。

「今夜は、その目でしっかり見るんだ。お前が誰に抱かれ、誰を愛しているのかを」
「逃がさないよ、ルカ。……私たちの姿を、その網膜に焼き付けて」

 二人が同時にベッドへ上がり、ルカを挟み込む。
 右からカイの熱が、左からイルスの涼やかさが迫る。ルカは震える手で二人の首に腕を回し、自らも衣服を脱ぎ捨てた。
 三つの肌が触れ合う。
 それだけで、部屋の空気が糖蜜のように甘く、重く変化した。

「あ……っ、お二人とも……」

 ルカが仰向けに倒されると、左右から同時に口づけが降ってきた。
 カイは貪るように唇を奪い、イルスは首筋や鎖骨を甘く噛む。
 視界いっぱいに広がるのは、愛おしい二人の顔だ。至近距離で見れば見るほど、二人は似ていて、けれど決定的に違う。
 カイの瞳は情熱の炎を、イルスの瞳は深い愛着の湖を宿している。

「ルカ、脚を開け」

 カイがルカの太腿を割り、その間に割り込んだ。
 イルスはルカの頭側に回り込み、背後から抱きしめるようにして、ルカの耳元に唇を寄せる。

「特等席だね、ルカ。……上からも、下からも、私たちが見えるだろう?」

 イルスの指が、ルカの口内へと入り込む。
 ルカはそれを無我夢中で舐め取った。イルスの指を舌で愛撫しながら、視線は股間のカイに向けられる。
 カイはルカの秘所を、ローションで濡らした自身の剛直で擦り上げていた。

「準備はいいな。……今日は、俺たちの愛を同時に注ぎ込んでやる」

 カイの腰が沈む。
 ズプ、ヌゥ……と、重く湿った音を立てて、楔がルカの深淵へと侵入していく。

「ん、ぐぅッ……! は、ぁああ……ッ!」

 目で見ている分、感覚はより鮮明だった。
 自分の身体がカイを受け入れ、飲み込んでいく様が、月明かりの下でありありと分かる。
 限界まで張り詰める入り口。お腹の皮膚が内側から押し上げられる感覚。
 根元まで収まると、カイは満足げに息を吐き、ルカを見下ろした。

「いい眺めだ。……俺を受け入れているお前の顔、最高に淫らだぞ」
「カ、イ様……っ、熱い、です……」
「まだだ。これからもっと熱くなる」

 カイが動き出すと同時に、頭側のイルスがルカの顔を自分の方へ向けさせた。
 そして、重なるような深い口づけを落とす。

「ん……ッ、んむ……!」

 下からはカイの激しい突き上げ。
 上からはイルスのとろけるような舌の絡み合い。
 ルカは二つの刺激の板挟みになり、逃げ場を失った。
 カイが突くたびに身体が揺れ、それを受け止めるようにイルスが強く抱きしめる。

「ふ、ぁ……っ! あっ、あッ! すごい、お二人が、いっぺんに……ッ!」
「そうだ、ルカ。もっと乱れろ」

 カイがルカの腰を掴み、獣のように激しく打ち付ける。
 パン、パン、と肉がぶつかる音が部屋に響き渡る。
 前立腺を正確に抉られ、ルカのペニスは誰にも触れられていないのにビクビクと跳ね、蜜を垂れ流していた。
 すると、イルスが身体を起こし、ルカの正面へと移動してきた。
 繋がったままのカイと、ルカの顔のすぐ横に並ぶイルス。
 二人の顔が並ぶ。鏡あわせの美貌が、ルカを見下ろしている。

「……見て、ルカ。兄上と私が、お前を真ん中にして繋がっている」

 イルスが、カイの肩に手を置いた。そしてあろうことか、二人の王子はルカの目の前で、互いに口づけを交わしたのだ。
 双子のキス。
 それは背徳的で、けれど神々しいほどに美しかった。
 二人の唾液が混ざり合い、その銀糸がルカの顔に垂れる。

「は……ぁ、あ……綺麗……」

 ルカは陶然と呟いた。
 この世で自分だけが見ることのできる、禁断の秘儀。
 カイが唇を離し、ニヤリと笑ってルカを見た。

「興奮したか? 変態め。……だが、俺もゾクゾクする」
「お前のその表情……堪らないな」

 イルスがルカの昂ぶったペニスを握り込んだ。
 カイの律動に合わせて、イルスが手淫を加える。
 内側と外側、両方からの責め苦。

「あ、ギッ、ひぃぃッ! だめ、もう、おかしくなるッ!」
「なれよ。俺たちでいっぱいになれ」
「私たちのことしか考えられないように、してあげる」

 視界が揺れる。
 金色の髪が混ざり合い、二対の碧眼が青い炎のように揺らめいている。
 カイが突く。イルスが擦る。
 二人の呼吸が完全にシンクロし、ルカを快楽の濁流へと押し流していく。

「あ、カイ様っ、イルス様っ、あ、あ、好き、大好きです……ッ!」
「「ルカ……ッ!」」

 愛の言葉が引き金となった。
 二人の動きが極限まで速まる。
 カイが最奥の一点を激しく叩き、イルスがルカの鈴口を親指で強く弾いた。

「いくぞ……ッ!」
「一緒に……ッ!」

 三人の声が重なる。
 ルカの目の前で光が弾けた。
 自身の放出と同時に、胎内でカイが、お腹の上でイルスが、熱い生命を吐き出した。
 ドクドクと脈打つ二人の熱。
 全身が熱い液で汚され、満たされていく。
 その瞬間、ルカは自分が二人と完全に溶け合い、一つの生き物になったような錯覚を覚えた。
 長い、長い余韻。
 三人は折り重なるようにしてベッドに沈んだ。
 ルカの右にはカイが、左にはイルスが寄り添い、互いの体温を確かめ合っている。
 ルカは重いまぶたを開け、愛おしい二人の横顔を見比べた。

「……幸せです」

 掠れた声で呟くと、二人は同時にルカを見て、全く同じ優しい微笑みを返した。

「ああ。俺もだ」
「私もだよ、ルカ」

 月光の下、三人の影は一つに重なっていた。
 隠すものなど何もない。
 そこにあるのは、歪だが誰よりも純粋な、三人の愛の形だけだった。
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