親友だった奴等と異世界で勇者やってましたが、俺だけ力不足だとクビにされたので見返すために可愛い亜人たちと世界救っちゃいます!

農民サイド

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第1章 冒険の始まり

第6話 俺って勇者だよね?

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「起きてください」

 微睡む意識の中、何処かから俺を呼ぶ声がする。

「サイゾウさん、起きてください」

 これは……美少女な予感……?
 いや、騙されんぞ。
 どうせ、またおっさんに決まってる。
 こうしてやる!
 俺は手を伸ばし、触れているものの輪郭を確かめる。
 ふむ、丸い。
 頬は柔らか。

「あのー」

 耳がない……
 頭頂部か?
 
「ひゃん……」

 ひゃん?
 あれ、これ猫耳か!?
 俺は慌てて目を開けると、そこには猫耳の美少女が……

「うわああああああああああ」
「きゃああああああああああ」

 ほ、本当にいたああああぁ……
 猫耳美少女怖い。

「す、すみません……驚かせてしまったようで……」

 俺の目の前にいる、可愛らしい美少女は、恥ずかしそうに頬を染めながら笑顔で謝罪を口にする。
 け、謙虚で、可愛いとか……
 ああ、マジ天使……どっかの同級生とは大違いだ……

「いや、全然。問題ないっす」

 自分の顔の目の前に、グッドサインを構える。
 しかし、この天使はどこのどなただ?
 よく見れば、膝枕までしてくれているし……
 もしやこの子、俺に気があるのではないか?

「あの、お嬢さん」
「はい、なんでしょう」

 か、可愛い。
 もう、何気ない一言、一言が、可愛い。

「お名前を教えて下さい」
「ティアナです。サイゾウ様」

 ティアナ? 
 それって、あのギャンブル入り浸りの……

「てめええかあぁ! 俺の鼻返せ!」
「いやぁ! ごめんなさいぃぃ」

 俺は、起き上がり、今にもティアナに襲いかからんばかりと詰め寄る。
 見る人が見たら、完全に俺のほうが犯罪者にしか見えないが……

「い、一応、治しましたから。許してください!」
「え?」

 俺は自分の鼻を触る。

「ほ、本当だ! 軟骨までしっかり治ってる!」

 か、感動したぁー!

「あ、そう言えば、ティアナさん、サティアが探してましたよ」
「え、嘘……付いてこないでって言ったのに……」

 ティアナさんは、驚いてはいるものの、必死感のようなものは感じない。
 あんまり、気にしてないのか?

「まあ、酒場で待たせてますんで、さっさと戻りましょう、ティアナさん」
「うーん……」
「どうかしましたか?」

 ティアナさんは、目の前でうんうん唸りながら首を左右に傾げている。
 一体、なにがあると言うんだ……
 それに、ここはどこだ……
 周囲を見渡す限りは、まだカジノの中にいるみたいだが。

「じ、実は、お恥ずかしい話なのですが、お金を全て使ってしまって、帰るに帰れないといいますか……」

 なんだ、そんなことか……

「お金なら、また稼げばいいじゃないですか、妹さんが待ってるんだから戻りましょうよ」
「……サイゾウ様」
「え、なに?」
「取引しませんか?」
「と、取引? 言っとくけど、俺金はないよ」
「いえ、私が欲しいのはお金ではありません……名前です」
「名前? 尚更、俺じゃダメそうなんだけど……」

 すると、ティアナさんは俺の両手を自分の両手で包み込み、更には上目遣いと、潤んだ瞳のコンボで。

「お願いします。私に協力してください」
「はい、喜んで!」

 ずるくない?
 女の子ってずるくない?
 絶対断れないんだけど……

「ありがとうございます。それでは早速、詳しい話をしたいので――――」

 ティアナが話し終わる前に、部屋のドアが開き、ロイドが顔を出す。

「お忙しいところすみませんがぁ。支払う目処は付きましたかぁ?」

 え、なんの話だ?

「はい、今、目処が付いたところです」

 ティアナの意味深な笑顔。
 何かを察してしまった俺。
 ニヤニヤするロイド。
 
「ああ、お願いってそういうこと?」

 人柱か、なにかかな?
 
 
 ◇◇◇


「はあ!? 俺を亜人の国の親善大使として和平交渉!?」

 何を言ってるのこの子……

「今、私が代表を務める亜人連合は、もうじき、新連合国として新体制が発足されます。その際に、各国への挨拶回りと、平和条約締結のための顔役兼、護衛として、サイゾウ様に協力して頂きたいのです」
「そんな、大それた事に俺を選んでいいの? 正直、俺の話とかパッとしない物しかないよ?」
「そんなことはありません!」

 サティアは、グイっと俺に顔を近づける。
 
「実はサイゾウ様は私たちのような、亜人や一部の人間たちからは、尊敬できる人物として一目置かれる存在なのです」
「お、俺が?」

 なんか、胡散臭いな。
 もしかして、新手の宗教勧誘とか、マルチ商法じゃないのか?

「そうですよ! 勇者なのに気取らないところとか、庶民的で親しみやすいとか、後……」
「後……?」

 思わずゴクリと生唾を飲み込む。

「優しいところですね」

 サティアは、多分、お世辞とか俺を煽てるためとか、そんなつもりで言ったんだろうと思う。
 けど、俺はそのちょっと微笑んだ顔に見惚れてしまった。

「分かった。君のお願いを叶えるとしようじゃないか……この、伝説の勇者である碇才蔵様に任せなさい!」

 ドンっと力強く自分の胸を叩く。
 もう、余計なことは考えない!
 乗りかかった船、最後まで行けるとこまで行ってやろうじゃないの!

「ありがとうございます」
「で、これから俺は何をすれば?」
「逃げましょう」
「え?」
「逃げましょう!」
「え?」

 いや、よく分からないけど逃げよう。
 
「逃しませんよぉ」

 いきなり天上の一箇所がカパっと開き、そこからニュルリとロイドが登場する。

「いや、蛇かよ!?」

 それと同時に部屋のドアも開き、厳つい大男が3人入ってきた。

「先手必勝! 絶対に解けない紐絡まった髪の毛!」

 入ってきた男たちを魔力の紐で拘束する。
 
「逃げるぞぉ!!」
 
 俺は、後ろにいるはずのティアナに手をのばすが……

「って、もういねええええ!」
「サイゾウ様だけでも逃しませんよぉ!」

 ロイドは、俺目掛けてナイフを投げてくる。
 
「うるせえええ、俺は被害者だああああ」

 作り出した紐を鞭のように使ってナイフを防ぐが、全部は防ぎきれず、何本かは腕と足に突き刺さる。

「くっ……めちゃくちゃ痛えぇ……」

 更には、縛っていた紐を解き、男たちが動き出す。

「あ……終わった……」

 男たちに囲まれ、ロイドにも睨まれ、完全に逃げ場を失った。

「やっちまえっ!」
「ロイドさん、話し……合いませんか?」
「……お断り。しますっ!!」

 俺は、3人の男たちにこれでもかってくらいボコボコに殴られ後、地下牢に閉じ込められた。
 あれ、俺勇者だよね?
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