閻魔大王の判決

みゆたろ

文字の大きさ
上 下
7 / 12

その後

しおりを挟む
二人はそれから一ヶ月が過ぎた頃、ほぼ同タイミングで、退院した。
退院後、初めてのデートをしていると、街にはまだ少し早いクリスマスの飾り付けがされ、至るところで、イルミネーションが光輝いていた。
二人は街の景色を眺めながら、いろんな事があった今年一年を振り返る。
「今年ももう終わりだね」
大介は小さく同意を示した。
遠くを眺めながら、大介はゆう気の手を取った。
「ーーなぁ、ゆう気」
「なに?」
「ーーこのまま、旅行に行かないか?二人で」
「いいかもね?」
冗談っぽい顔で、ゆう気は笑っている。
「ーー冗談で言ってる訳じゃないんだ。旅行に行こう」
「ーーえ?でも、、仕事が、、」
「いーよ。休んじゃえよ。気晴らししにいこーぜ」
「旅行、行くってどこに行くの?」
唐突な話の流れに、ゆう気はついていけないでいた。
「ーーどこでもいいんだ。一緒にいられるなら、、」
大介は少し恥ずかしそうに笑った。
「そーだね。じゃいつから行く?計画たてなきゃ」
ゆう気もはしゃいでいる。
「ーーそうしよう」
二人はゆっくり歩いて、部屋に戻るとずっと眠っていたパソコンを開き、立ち上げた。
「ーーなぁ、ゆう気はどこに行きたい?」
「そうだなぁ、、箱根に行きたいなぁ、、」
「箱根か、、いーなぁ。箱根で決めよう!」
目的地を決めると、あっとゆう間に宿泊先も決まった。
「じゃホテルの予約を取ろう」
年の瀬に近いクリスマスに、予約なんか取れるだろうか?
ダメ元で電話してみると、後一部屋空いているとゆう。大介は即座にその一部屋を予約した。
ーー二人で旅行に行く。
それは二人にとって、初めての事だった。
観光する場所も、二人で決めて楽しかった。
どんな旅行になるんだろ?ーーそれにしても大介はなぜ急に旅行に行こうなんて言い始めたんだろう?
幸せなんだからいーっか。
私は深く考えるのを辞めた。

旅行当日。
朝、大介の方が早く起きていた。
目を冷ますと珈琲の香りが部屋中に充満している。
「おはよ」
目をこすりながら、ゆう気が言う。
「ーーおはよ。やっと旅行にいけるな」
この頃の大介は、少し逞しく素敵に見える。
大介が話してくれた日から、拓海との関わりもまったくなくなったからだろう。
拓海ともう会う事もなくなって、いいことだらけだ。
「ーーうん」
満面の笑みを浮かべて、ゆう気は笑った。
「準備は出来てる?」
「うん」
箱根なんて近いもんだ。
大介は車を走らせた。
一時間半もすると、二人を乗せた車は箱根の目的地に着いた。
「でも、どーしたの?急に旅行なんてーー嬉しいけど」
「だってさ、今日クリスマスイブだろ?」
「あ、そーいえば、、」
「たまにはこーゆーのもいいだろ?新鮮で、、」
ーーなるほど。
いつも一緒にいるから、新鮮さが欲しかったのだとゆう気は理解した。
「ところで、、今夜は飲みに行かないか?」
「いーよ。今日は飲もう」

二人は観光地を巡りながら、そんな話をしていた。夜になったら二人で飲む。そんな小さな事がとても新鮮に感じられた。

夜。
ホテルの中に完備されているバーに、二人は腕を組みながら、向かった。
一時期は二人揃って、死に向かいかけたのに、こんな風に旅行ができる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
バーに着くと席につくとすぐに、サンタの服装をした若い子がテーブルの前に立ち言った。
「ハッピーメリークリスマス」
今日はイベントでやっているのだろうか?
「ーーちょっと待ってて」
大介は席を立ち、カウンターの方に歩いていく。サンタの彼はそのままそこに立っている。
カウンターで大介はゴニョゴニョと話しているが、サンタの服装をした若い彼が踊っているのを見てると、時が立つのを早く感じる。
数分後。
大介はようやく戻ってきた。
サンタの彼がワインとグラスを2つ持ってくる。
「どうぞ」
テーブルにグラスがおかれ、サンタの彼がワインを注ぐ。
「ーーじゃ、始めよう。今年いろいろあったけど、今生きてる二人に乾杯」
大介は言った。
「かんぱーい」
しばらくワインを飲みながら、話していると、大介が突然、手に入った小さな箱を差し出して言った。
「ーーゆう気、僕と結婚してください」
婚約指輪だ。
「ありがとう。これからもよろしくね」
ゆう気は幸せな想いでいっぱいになった。
涙が溢れる。
幸せすぎて、こんなに幸せで、涙を流すなんて、勿体無いと思いながらーー。
ーー神様、こんな幸せな未来をくれてありがとう。

しおりを挟む

処理中です...