52 / 86
運命
しおりを挟む
退院したその日。
祐司と静香に囲まれ、私は問われた。
柴ちゃんたちの散歩中に事故が起きた事もあり、柴ちゃんたちとお別れした方がいいんじゃないか?と。
ーーお別れなんてする訳がない。したくもない。
ハッキリとそう答える。
「今回はたまたま周りに人がいたから、気づいてくれて良かったけど、、周りに人がいなかったらと思うとゾッとする」
静香は言った。
確かに。
あの時、周りに人が誰もいなかったなら、私はここにいなかったかも知れない。
幸いにもケガ一つしていなかったのだけれど。
せめて柴ちゃんが言葉を話してくれたらーー。
トコトコトコトコ。
吠えもせず、私のところに柴ちゃんが歩いてくる。
頭を撫でると安心したようにして、柴ちゃんがコロコロと甘えるしぐさをしている。
その日。
私は柴ちゃんと翔大を両脇に抱えるようにして、深い眠りについた。
温かい。
こんな時間がずっと続いていたらーー。
その夜。
枕元で声がした。
「ーー俺、今回は考えさせられたよ。遊んでただけなのに、、あんなオオゴトになっちゃって、、ごめんな。夕夏」
肉球で夕夏の頭を撫でる。
いつも彼女がそうしてくれたようにーー。
ーーん?
目を覚ますと、大きな影が見えて驚いた。
声も出せずにいると、、
ペロッ。
ざらついた舌。
窓の向こうから木漏れ日が入り込むと、その姿を現した。
こちらを覗き込むようにして、眺めているのは柴ちゃんだった。
真夜中。
「ーー俺、迷惑かけちゃった。ごめん」
小さな声で柴ちゃんが言う。
「ちょっとした悪ふざけだったんだ。悪意はなかったんだーーでも、こんな事になって、俺すごい反省してるんだ。夕夏には伝えておきたくて、、」
「ーーうん。伝えてくれてありがとう」
夕夏は微笑んで聞いた。
「ーーどーしてこれまで話さなかったの?」
「話すと周りが気持ち悪いって言うのを聞いてたら、何でだか分からないけど、話せなくなったんだ。言葉を忘れた訳でもないのに、、」
「そうだったんだ。まだ話せる事を知って、ちょっと安心した」
本当にホッとしていた。
まだ話せる。
私の友達。これからもずっとーー。
祐司と静香に囲まれ、私は問われた。
柴ちゃんたちの散歩中に事故が起きた事もあり、柴ちゃんたちとお別れした方がいいんじゃないか?と。
ーーお別れなんてする訳がない。したくもない。
ハッキリとそう答える。
「今回はたまたま周りに人がいたから、気づいてくれて良かったけど、、周りに人がいなかったらと思うとゾッとする」
静香は言った。
確かに。
あの時、周りに人が誰もいなかったなら、私はここにいなかったかも知れない。
幸いにもケガ一つしていなかったのだけれど。
せめて柴ちゃんが言葉を話してくれたらーー。
トコトコトコトコ。
吠えもせず、私のところに柴ちゃんが歩いてくる。
頭を撫でると安心したようにして、柴ちゃんがコロコロと甘えるしぐさをしている。
その日。
私は柴ちゃんと翔大を両脇に抱えるようにして、深い眠りについた。
温かい。
こんな時間がずっと続いていたらーー。
その夜。
枕元で声がした。
「ーー俺、今回は考えさせられたよ。遊んでただけなのに、、あんなオオゴトになっちゃって、、ごめんな。夕夏」
肉球で夕夏の頭を撫でる。
いつも彼女がそうしてくれたようにーー。
ーーん?
目を覚ますと、大きな影が見えて驚いた。
声も出せずにいると、、
ペロッ。
ざらついた舌。
窓の向こうから木漏れ日が入り込むと、その姿を現した。
こちらを覗き込むようにして、眺めているのは柴ちゃんだった。
真夜中。
「ーー俺、迷惑かけちゃった。ごめん」
小さな声で柴ちゃんが言う。
「ちょっとした悪ふざけだったんだ。悪意はなかったんだーーでも、こんな事になって、俺すごい反省してるんだ。夕夏には伝えておきたくて、、」
「ーーうん。伝えてくれてありがとう」
夕夏は微笑んで聞いた。
「ーーどーしてこれまで話さなかったの?」
「話すと周りが気持ち悪いって言うのを聞いてたら、何でだか分からないけど、話せなくなったんだ。言葉を忘れた訳でもないのに、、」
「そうだったんだ。まだ話せる事を知って、ちょっと安心した」
本当にホッとしていた。
まだ話せる。
私の友達。これからもずっとーー。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる