みゆたろ

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翌日。

目を覚ますと、キッチンから何かを切るような物音が聞こえてくる。
母だろう。

寝ぼけた頭で、目を擦りながらゆっくりと階段を下りていく。

「ーーおはよー」
母に声をかける。

「おはよう」

珍しく母は朝から化粧をしていた。

「あれ?お母さん、出掛けるの?」
ぼんやりとしたまま聞いた。

「うん。今日はちょっとね」
普段はほとんど化粧をしない母が、化粧をして出掛けるのだから、男だろうか?

シャワーの音が止まる。

扉が開いた。
立ち込める白い湯気。
生暖かい熱気。

白い湯気の中から顔を覗かせたのは、境と言う汚ならしい男だった。
しかも素っ裸でーー。

「きゃっ」

幼いながらに思わず目を伏せる。
と同時に、私は自己嫌悪に陥った。

まさかこの男の裸を見るとはーー。

印象が悪すぎて私は二度とそのお風呂を使わない事にしたかったが、それは無理だろう。
咄嗟に頭ではそれを理解した。
しかし、私の心はそれを納得できなかった。

私は由美の家に呼ばれていた事を思い出す。彼女は、いい報告があると言っていた。
急いで服を着替えて、逃げ出す様にして私は由美の家に向かった。

「ーーいってきまーす」

「どうしたの?由美?そんなに急いで」
母は呑気な声でそう言った。
それに答える事もなく、私は外に出た。

祐司はどこに行ってるんだろう?
私の本当の父。
肝心な時にはいつもいない人だけど、私にとってはたった一人の父親なのにーー。
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