奇跡

みゆたろ

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伝えなきゃいけない事

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お祖母ちゃんは笑顔で私の事を見つめている。

ーーお祖母ちゃんはどうしてここに来てくれたのだろう?
その疑問符に答えを出すようにして、私はお祖母ちゃんに聞いた。

「それで、おばあちゃんはどうして私に会いに来てくれたの?」

「ーーお前にね、伝えなきゃいけない事があるんだ。。ミケと出会った場所は、瓦礫だらけだったろう?」

「なんでおばあちゃん知ってるの?」

「見てたんだよ!ーーなぜ、あの場所にいたのか、それはね。あの場所にある過去の記憶とリンクしたんだよ!あの場所はあなたが子供の頃に、地震で大きな被害を被ったーー無意識のうちにあなたの記憶はそれを探し当てたんだろう。だから、あんな瓦礫の場所が生まれた」

「私が子供の頃ってどれくらい前の話なの?お祖母ちゃん?」

「あなたが今17歳。かれこれ15年くらい前かしらねぇ?その時は建物が1つ倒れただけで、大きな被害も犠牲者もなく済んだんだけど」

おばあちゃんも、記憶が定かではないようでアバウトな答え方をしている。

私にとってそれは覚えてもいないはずの記憶
だろう。
なのになぜ、その時の記憶があのタイミングで出てきたのか?まるで分からないけど、おばあちゃんの話では、心のどこかでその時を思い出したっていう事なんだろう。

「ねぇ、十五年前のその時、家の崩壊があった時そこにミケもいたの?」

「ーーいなかったはずよ!」

「そうなんだ。それで伝えたい事って...?」

おばあちゃんはニッコリ笑った。

「ミケは私が飼っていたネコなの。だから、これからも大事にしてあげてね。」

おばあちゃんはそう言った。

「ーーわかってるよ。おばあちゃん。この子の事は私が守るから安心して」

「ありがとう!」

その時、またミケが鳴く。
いつもの様に、おばあちゃんが光に包まれるとすぐに、消えてしまった。

ーーお、おばあちゃん。

目を開けると、そこには見慣れた白い壁。
見慣れた家具がある。
間違いない。ここは、私の部屋だ。

ミケと出会って、僅かな時間の間に不思議な奇跡を、私に運んできてくれたミケ。

彼は玄関の引き戸を抉じ開け、外にお散歩に行く。

幸いな事に外を出ても、車はほとんど走っていない。なぜなら目の前には公園があるだけなのだから。
だから、ミケは大丈夫。
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