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小休止
その一
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初七日を済ませてひとまず落ち着きを取り戻した『赤岩青果店』は、年末商戦を機に営業を再開した。まどかの遺児となった木の葉も順調に成長を見せて無事に退院、角松家で元気一杯に過ごしている。
それから年も明けてすっかり銀世界となっている箱館市では、早朝からの雪かきが日常的な風景となっており、『オクトゴーヌ』の面々も慣れない作業に日夜悪戦苦闘している。
この日はブランクはあれど雪かき経験のある小野坂と、最年少の根田が担当する。もうじき搬入にやって来る『赤岩青果店』の営業車が停車できるスペースを確保する為だったのだが、その甲斐無く普段よりも早く到着した。
「おはようさん、相っ変わらずなってねえべ」
村木は営業車から降りて根田が使用していたシャベルを奪い取ると、さすがは道産子慣れた様子でさっさと雪かきを始める。
「お~さすが礼さん、年期が違いますね」
「感心してる場合でね、腰が入ってねしたからダメなんだべ」
急激にはかどる作業にはしゃぐ根田に再びシャベルを持たせ、雪かきのレクチャーを始める村木に小野坂は呆れ顔だ。
「先に搬入済ませろって」
「なぁにぬかしてんだ?おめえらがのっそのそしてっからちょべっとでもコツを……」
「ならお前一人でやれっての」
小野坂は『赤岩青果店』営業車のトランクを勝手に開け、ダンボール箱を抱えて搬入口からペンションに入った。その間村木と根田は雪かきに勤しみ、正面入口に移動して更に精を出している。
「あれ?礼君と悌は?」
小野坂と一緒に搬入口から出てきた川瀬が辺りをきょろきょろと見回す。
「正面入口なんじゃねぇの?」
小野坂は出来たばかりの足跡を指差して苦笑いした。
「じゃあ僕たちで搬入済ませよっか」
「だな」
二人は営業車に積まれているダンボール箱を運び出し、雪かきを村木と根田に任せて朝の喧騒に入った。
宿泊客用の朝食を出し終えた後、小野坂はアルバイトのため『アウローラ』へ出勤する。
「おはようございます」
「遅いわ!」
時間通りに出勤しているにも関わらず、この日の嶺山はいつになく忙しなく動き回っている。そのせいか、普段の飄々とした態度とはまるで別人かと言わんばかりに一人店内で殺気立っていた。
「何でです?俺遅刻してませんよ」
「やかましい、さっさと支度せぇ」
「へぇへぇ……」
小野坂はアルバイトとは思えぬ態度の悪さながらも、言われるまま厨房着に着替える。そう言えば他の人は?と思って外を見ると、裏口では厨房担当の男性従業員二名が雪かきに勤しんでいた。
そういう事か……小野坂はアルバイト先の現状に納得してから仕事に入り、嶺山の補佐役として厨房内を動き回る。
同じ頃、妹の雪路は店舗入口前の雪かきに悪戦苦闘していた。
「雪重っ……外寒っ……」
とひとり文句を垂れながらせっせとシャベルを動かしていると、一台のワゴン車が店の駐車場に停車した。その車を見た彼女はぱっと表情を輝かせ、慣れない雪の上をものともせず嬉しそうに駆け寄る。
「おはようございます、今日はめっちゃ積もったね」
「こんちわ~、したから手伝いに来たべ」
鵜飼は自営業車に積んでいた小型の除雪機を運び出し、慣れた手付きでセッティングし始める。
「これどないしたん?」
「ん?家の持ってきたっペ」
「こんなん家に置いてんの?」
大阪出身の雪路はそれを物珍しそうに眺めている。去年こんなん見たっけ……?などと思いながら記憶をたどるも、当時は店内の内装準備に明け暮れ雪かきは業者任せだったにしていた事を思い出す。
「この辺やと一家に一台持ってるもんなん?」
「多分。手作業はゆるくないしたから」
「そうなんや、お兄ちゃんに言うてみよかなぁ?」
「したらこれ置いて帰んべ、わちもう一台あるしたからさ」
気前の良すぎるその一言に雪路は目を丸くした。
「えっ!?そんな事して大丈夫なん?」
「なんもなんも、嫌でねしたら使ってほしいっしょ」
鵜飼はにこやかにそう言うと、除雪機を稼動させてあっという間に駐車スペースを空けていく。雪路は入口の階段に積もった雪を除けながらも、他人様宅の雪かきを楽しそうに手伝う彼の様子を伺っていた。
多分そういうことやねんやろなぁ……開店準備に動き回る嶺山は、外で雪かきをしている雪路を気にしていた。兄としては妹の成長だと嬉しく思う反面、年齢が離れているせいか自身の手元を離れていく寂しさも同居している。
雪路は雪路でこれまで恋人ができても交際が長続きせず、どこか兄を最優先としていたところがあった。何かに付け嶺山と比べ、変に高い理想を持っている節もある。
「やっぱそうですよね?」
珍しく作業の手を止めている上司に小野坂が声を掛ける。雪かきを終えた男性従業員と入れ替わり、手薄になっているフロア作業を始めていた。
「ん?何がや?」
部下の声に反応した嶺山は再び手を動かし始める。
「ユキちゃんですよ、多分……ですけど」
小野坂も外にいる雪路と鵜飼の様子を覗きながら言う。
「お前悪趣味やな」
「人のこと言えます?」
「やかましい、さっさと仕事せぇ」
嶺山は小野坂の脚をこつんと蹴り、厨房へと引っ込んでいく。
「ってぇなぁ……」
小野坂は蹴られた箇所を擦りながら毒吐き、一度外にいる二人の様子に視線をやってから陳列作業を再開した。
それから年も明けてすっかり銀世界となっている箱館市では、早朝からの雪かきが日常的な風景となっており、『オクトゴーヌ』の面々も慣れない作業に日夜悪戦苦闘している。
この日はブランクはあれど雪かき経験のある小野坂と、最年少の根田が担当する。もうじき搬入にやって来る『赤岩青果店』の営業車が停車できるスペースを確保する為だったのだが、その甲斐無く普段よりも早く到着した。
「おはようさん、相っ変わらずなってねえべ」
村木は営業車から降りて根田が使用していたシャベルを奪い取ると、さすがは道産子慣れた様子でさっさと雪かきを始める。
「お~さすが礼さん、年期が違いますね」
「感心してる場合でね、腰が入ってねしたからダメなんだべ」
急激にはかどる作業にはしゃぐ根田に再びシャベルを持たせ、雪かきのレクチャーを始める村木に小野坂は呆れ顔だ。
「先に搬入済ませろって」
「なぁにぬかしてんだ?おめえらがのっそのそしてっからちょべっとでもコツを……」
「ならお前一人でやれっての」
小野坂は『赤岩青果店』営業車のトランクを勝手に開け、ダンボール箱を抱えて搬入口からペンションに入った。その間村木と根田は雪かきに勤しみ、正面入口に移動して更に精を出している。
「あれ?礼君と悌は?」
小野坂と一緒に搬入口から出てきた川瀬が辺りをきょろきょろと見回す。
「正面入口なんじゃねぇの?」
小野坂は出来たばかりの足跡を指差して苦笑いした。
「じゃあ僕たちで搬入済ませよっか」
「だな」
二人は営業車に積まれているダンボール箱を運び出し、雪かきを村木と根田に任せて朝の喧騒に入った。
宿泊客用の朝食を出し終えた後、小野坂はアルバイトのため『アウローラ』へ出勤する。
「おはようございます」
「遅いわ!」
時間通りに出勤しているにも関わらず、この日の嶺山はいつになく忙しなく動き回っている。そのせいか、普段の飄々とした態度とはまるで別人かと言わんばかりに一人店内で殺気立っていた。
「何でです?俺遅刻してませんよ」
「やかましい、さっさと支度せぇ」
「へぇへぇ……」
小野坂はアルバイトとは思えぬ態度の悪さながらも、言われるまま厨房着に着替える。そう言えば他の人は?と思って外を見ると、裏口では厨房担当の男性従業員二名が雪かきに勤しんでいた。
そういう事か……小野坂はアルバイト先の現状に納得してから仕事に入り、嶺山の補佐役として厨房内を動き回る。
同じ頃、妹の雪路は店舗入口前の雪かきに悪戦苦闘していた。
「雪重っ……外寒っ……」
とひとり文句を垂れながらせっせとシャベルを動かしていると、一台のワゴン車が店の駐車場に停車した。その車を見た彼女はぱっと表情を輝かせ、慣れない雪の上をものともせず嬉しそうに駆け寄る。
「おはようございます、今日はめっちゃ積もったね」
「こんちわ~、したから手伝いに来たべ」
鵜飼は自営業車に積んでいた小型の除雪機を運び出し、慣れた手付きでセッティングし始める。
「これどないしたん?」
「ん?家の持ってきたっペ」
「こんなん家に置いてんの?」
大阪出身の雪路はそれを物珍しそうに眺めている。去年こんなん見たっけ……?などと思いながら記憶をたどるも、当時は店内の内装準備に明け暮れ雪かきは業者任せだったにしていた事を思い出す。
「この辺やと一家に一台持ってるもんなん?」
「多分。手作業はゆるくないしたから」
「そうなんや、お兄ちゃんに言うてみよかなぁ?」
「したらこれ置いて帰んべ、わちもう一台あるしたからさ」
気前の良すぎるその一言に雪路は目を丸くした。
「えっ!?そんな事して大丈夫なん?」
「なんもなんも、嫌でねしたら使ってほしいっしょ」
鵜飼はにこやかにそう言うと、除雪機を稼動させてあっという間に駐車スペースを空けていく。雪路は入口の階段に積もった雪を除けながらも、他人様宅の雪かきを楽しそうに手伝う彼の様子を伺っていた。
多分そういうことやねんやろなぁ……開店準備に動き回る嶺山は、外で雪かきをしている雪路を気にしていた。兄としては妹の成長だと嬉しく思う反面、年齢が離れているせいか自身の手元を離れていく寂しさも同居している。
雪路は雪路でこれまで恋人ができても交際が長続きせず、どこか兄を最優先としていたところがあった。何かに付け嶺山と比べ、変に高い理想を持っている節もある。
「やっぱそうですよね?」
珍しく作業の手を止めている上司に小野坂が声を掛ける。雪かきを終えた男性従業員と入れ替わり、手薄になっているフロア作業を始めていた。
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「ユキちゃんですよ、多分……ですけど」
小野坂も外にいる雪路と鵜飼の様子を覗きながら言う。
「お前悪趣味やな」
「人のこと言えます?」
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