どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

憂鬱になってしまった金曜日……

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 その遵斗はと言うと、火曜日の朝から学校に姿を見せていない。今日バイトの後ライブハウスに行く約束してるんだけどアイツ大丈夫なのか?今のところ連絡も無いからそのままにしてたんだけど、さすがに今日来てなかったらメールしてみるか。
 ……で、教室に入ると今日も居ない。この時間で居ないとなるとまだ体調悪いのか?俺は体調悪いなら約束の事は気にしなくて良いと言う内容のメールを送信してから席に着く。
 「おはよう、今日は輝が公欠なんだって」
 ラグビー部の応援だってさ。火曜日の一件で怖い思いしたろうに、真幸は当日から平然としてる、あんま無理すんなよ。
 「そっかぁ~、今日も三人か」
 「うん。でも当面遵斗とは顔を合わせたくないね」
 まぁそうだろうな、コイツだってあの死体みたいな顔色の悪さは目の当たりにしてるし。真幸は輝の席に座って一時限目って化学だよな?と言い出した。
 「三人で実験って……何か寂しくない?」
 そうだな。俺はがら空きの教室を一望する。まずは輝と井口がブラスバンドで、瀬戸山セトヤマがラグビー部、須賀スガと宮本もバスケ部の大会で居ない。んで猛は怪我で休んでるし遵斗と“ヤシクッス”も居ない。このクラスは三十一人、分かってるだけで十三人も居ない。そりゃがらんとするわな。そこに朝練を終えた颯天が教室に入ってきて少なっ!と呟く。
 「何だ?学級崩壊みたいだな」
 「おいおい、せめて学級閉鎖にしてくれよ」
 五人は公欠なんだからさ。喜多川の突っ込みに笑いがおこる。
 「五人じゃなくて七人なんじゃないか?テニス部も大会だぞ」
 「って事は小野オノモリも公欠だ」
 「今日半分しか居ないじゃん」
 「“ヤシクッス”が居ないのは快適だけどな、結嶋」
 誰かの言葉に結嶋はそうだね、と微笑んでる。コイツアイツらに結構な事されてるのに平然と学校に来て何食わぬ顔してるんだよな。これは俺の勘に過ぎないんだけど、マトモに拳交えたら結嶋の方が強い気がするんだ。体小さいし見た目は色白でひ弱そうなんだけど、体育の授業で後れを取るわけでもないし着替えで裸見ても意外と締まってるんだよ。実は隠れた才能でもあるんじゃないかとにらんでる、数学以外は平均値以上の成績だし、喋ってみてもオドオドした印象は一切無い。ひょっとして策士か?
 「コラ、お前ら席に着け。一時限目移動教室だからホームルームちょっと早めるぞ」
 早くも史生谷先生の登場、普段はそれでも予鈴と同時位に来るんだけど何かあったのか?
 「少し先の話だが皆に報告がある」
 先生は教卓に出席簿を置き、俺たち生徒の方を見た。
 「今学期修了と同時に平泉の転校が決まった」
 えっ……?火曜日の一件で相当のマイナスイメージが付いてしまった様で反応は薄めだったんだけど、それでも冷たくあしらってる雰囲気でもない。
 「親御さんの転勤だそうだ、長崎県と聞いてる」
 「で、本人は今?」
 クラス委員の喜多川が質問する。
 「午前中のうちに病院に行くそうだが一応欠席扱いで、と連絡は受けてる」
 「そうですか、でしたら今日もノート持って行きます」
 「頼むわ。本人と面会は出来てるか?」
 いえ。喜多川は首を横に振る。
 「親御さんに言伝てて帰ってます。声掛けはしてくださるんですが残念ながら」
 そうか……先生はそれ以上の追求はしない。多分遵斗と喜多川の折り合いの悪さはご存知なのだろう。俺も火曜日の昼飯ん時に知ったんだけど、そう言えばクラス委員として喜多川が何かする度に気に入らなさそうにしてたな。だからって訳でもないけど、最初のうちは喜多川の印象が良くなかったのは事実で、補習で神崎から話を聞くまでは出しゃばりの気取り屋的に映ってたんだ。遵斗が嘘を言ってた訳でもないんだろうけど、アイツサイドの話しか知らなかった俺と宮本は最初ちょっと混乱したんだ。
 『それなら本人と話してみて決めると良いよ』
 神崎のその一言で喜多川に話し掛けてみた俺と宮本は一瞬にしてこれまでの印象が払拭された。見た目あんなだからお堅い印象こそ拭えなかったけど、神崎の言葉の方がしっくりきた。宮本も同じみたいで今じゃすっかり仲良くなってるよ。因みに彼らのグループ内では『喜多さん』と呼ばれてるんだ、本人は東海道でも歩くか、なんて言って割と気に入ってるみたいだ。
 ……それよりも今は遵斗だ、俺のメールの返信があったのは昼前で、体調の方は大丈夫だからと予定通りライブハウスへ行く運びとなった。
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