どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

違うってだけの事……

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 「遵斗、それって……」
 「いや、見方にもよるけど俺は恐喝されてたって認識は無かったな。転校を機にケータイは解約するし、打ち上げ以来連絡取ってないから。それにそろそろあの連中終わりだし」
 そろそろ逮捕か?まぁ自業自得だろ。
 「どう終わりなんだ?」
 「今朝のニュース見なかったのか?当て逃げ事故起こしちまったんだと。通りすがりの人が救急車呼んでる間に逃げちまったらしくて、車種とナンバーも覚えてたとかで捕まるのも時間の問題だろうって。怪我してたって話だから大人しく病院に運ばれてた方が可愛げあったのに」
 可愛げって……まぁ逃げたら罪は加算されるからな、例え過失だったとしても。
 「あいつらの逮捕は免れないだろうし、薬物の事もバレるだろうな。その一端に俺も加勢してたけど、今は治療も受けてて現物も持ってない。何か我ながら上手いこと逃げたもんだなって、これって多分卑劣と言えるのかもな」
 卑劣……どっか別のグループにこっそり溶け込んでドラッグを使い続けてるのならそう言えると思う。確かに遵斗は事態が表面化する前に上手くフェイドアウトしたと思うけど、逃げた訳ではなく決別を図った訳だからその表現はちょっと違う気がする。
 「卑劣……は違うと思うな」
 「……そうかな?」
 「一緒にお縄になる事が実直だとは思わねぇもん」
 「……」
 「遵斗は自分で気付いて治療する選択をした、ΧΧΧはそこから抜け出さずに事故を引き起こし、更にバレるのを恐れて逃亡中。選択した物が違ってたから進む道が違ってきただけの事だと思うけど」
 「そんな単純で良いのかよ……?」
 「良いんだよ。俺らはただの高校生、青二才のクソガキだ」
 考えたって分かりゃしねぇんだよ、それに伴った知識も経験も大人に比べりゃ明らかに足んねぇんだからさ。遵斗は頭が良いし変に感受性も鋭かったりするから、相手の気持ちにまで寄り添って問題を難しくしてる様な気がする。
 「……フフッ、お前やっぱ面白ぇや」
 「は?面白い事なんて一言も言ってねぇぞ」
 オイ、俺何で笑われてんだ?
 「脳ミソの思考回路がだよ、単純なのか入り組んでんのかよく分かんねぇ。そこが俺には面白く感じるんだ」
 ……俺何一つ難しい事言ってねぇんだけどな。それでも遵斗は俺の顔を見てニタニタしてる。
 「俺伽月の事最初は『結構な不良なんじゃねぇの?』って思ってたんだ、細いけどガタイ良いしピアス付けて見た目派手だしさ」
 あ~ピアスは父さんの形見なんだよな、捨てるの忍びなくて洗浄して高校入学を機に穴開けたんだ、左耳に一つ。校則?そこまで煩くない、先生方も気付いてるけど注意はされない。一年生で付けてるのは俺とあと数人くらいだけど、上級生だとチラホラ見掛けるしそれで絡まれた事は一度も無い。
 「そうかと思えば授業態度は至って真面目、クラブ活動時は図書室に入り浸って人体図鑑読み漁る、そのギャップは何なんだ?って戸惑いもあったんだ」
 「学校は勉強する所だろ?」
 「まぁそうなんだけど……それ真顔で言ってる奴初めて見たよ」
 う~ん……それに関しては中学の同級生にも言われた事がある。
 『お前何でそんなにクソ真面目なんだ?』
 クソ真面目……か。そんなつもり無かったけど物心付いた頃から片親だったし、長距離トラックの運ちゃんだった父さんは週に二度くらいしか家に帰ってこなかった。そのせいか何なのかは知らないが妙な監視に近い視線を常に感じてて、ちょっとした事でも他の子より怒られてた記憶があるから迷惑掛けない程度に真面目にしとこう的な防衛本能が働いてた様に思う、分かんねぇけど。
 「でも俺はお前の事嫌いじゃねぇ」
 「へっ?どうしたんだ急に」
 「いや……言ってみたくなっただけ。俺は親が立派過ぎて周囲の視線が重荷だったから、状況は違えど好奇の目に晒される気疲れってのは理解出来る」
 「そうか……ありがとな」
 「礼を言うのは俺の方、伽月と話せて良かったよ」
 んじゃな。遵斗はトレーを持って立ち上がる。
 「ちょっと待て遵斗!」
 俺は鞄からペンとノートを出して自宅の住所とケータイ番号を書く。多分メールは無理だろう、転校先のルール次第だと思うけどここでフェイドアウトするのは絶対に嫌だ。俺はノートをピッと破って遵斗に渡す。
 「家の住所とケータイ番号、気が向いたら連絡くれよ」
 戸惑ってはいたけど遵斗はそれを受け取ってくれた。
 「審査があるらしいから何とも言えないけど……通ったら連絡する、多分葉書になると思う」
 「何だって良いよ。んじゃ、終業式には学校来いよ」
 分かった。遵斗は晴れやかな笑顔を見せて店を出て行った。俺も氷で薄くなったジュースを飲み干し、空梅雨の晴天の中自転車をこいで家路に向かった。
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