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第二話
志半ばで夢を断たれた魂 -10-
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「気分はどう?治まった?」
ヴィニエーラはサアヤに水の入ったグラスを手渡す。
「うん、もう大丈夫だけど……今のってさっきの豆が原因なの?」
「えぇ、説明が間に合わなくてごめんね。“ジャック”のもう一つの特性は心の中の膿を出す……長年抱えてきた負の感情を吐き出させるための特効薬でもあるのよ。ああやって黒い塊を出すこともあるわ」
「自白剤みたいなもんなの?」
「平たく言えばそうね。原産の“タヌー星”でもその使われ方が一般的よ」
「じゃあ料理の食材には向かないね、美味しいんだけどなぁ……」
サアヤは空になった“ジャック”の白い鞘を見つめながら涙をこぼす。しかし彼女自身何故涙が溢れてくるのか、理由は分かっていない様だった。
「今思ってる事、そのまま話してみて」
ヴィニエーラはサアヤの前に立ってそっと頭を撫でてやる。人(ではないが)の優しさに触れたサアヤは涙が止められなくなり、少しずつだが言葉を紡ぎはじめた。
「あたし……殺されなきゃなんないほどの悪い事、したのかな……?」
「していないわ、あなたの人生記録簿を見た限りはね」
「思い当たる事が無い訳じゃない、でも裏切ってないんだよ……」
サアヤは必死に自身の潔白を訴えかけ、ヴィニエーラはうんうんと頷きながら頭を撫で続けている。
まだ見習いという立場であるプルートーだけは事前に顧客情報を知る権限が無く、サアヤの話の内容がさっぱり分からない。こういった時は顧客情報の管理を担当するウラーノの傍に行けば見せてもらえるのだ。
「話が全く見えないっす」
「これがサアヤ嬢の人生記録簿にござる」
空中に浮かぶサアヤの人生記録簿に『知人女性の恋人に言い寄られた事がきっかけで“イジメ”という行為のターゲットのされた』と書かれてある。
「……痴情のもつれって感じすか?にしたって足引っ掛けて食用油に火かけてるとこに突き飛ばして焼死とはエグ過ぎるっす」
「それが学び舎で白昼堂々と行われたでござる」
酷い話でござる。ウラーノはサアヤに同情の視線を向けていた。
「油に火をかける学び舎があるんすか?」
「食い付くのはそこにござるか?“アース星”には料理の創作技術を学ぶ専門機関があるでござる。職業も世襲でないのが大半でござる」
「意外と自由と言うかシビアな星なんすね」
プルートーは更に人生記録簿を読み進め、ある一文で表情が険しくなった。
「これかなりマズイっす、『闇歩き千年刑』レベルの大罪っす!」
「左様。ここではそちにしか出来ぬ大技にござれば、如何様に成し得たのか……」
ウラーノにもそれは疑問だったようで珍しく首を傾げている。
「しかしそうであれば閻魔様直々に処分を下されてもよいものでござるが……」
「それをなさらなかった理由はこれだ」
先程まで隅っこで静観していたゾンがウラーノにある資料画面を見せてきた。
「転生前に作成される“青写真”でござるか?」
「あぁ、本来あの子は料理で平和活動をするという使命が課せられてた。ところが身近な人物の中に“オジャマタクシ”の入った人類が居たってぇ話だ」
「志半ばでの……でござるな」
そうさな。ゾンはサアヤとヴィニエーラのやり取りをじっと見つめていた。
ヴィニエーラはサアヤに水の入ったグラスを手渡す。
「うん、もう大丈夫だけど……今のってさっきの豆が原因なの?」
「えぇ、説明が間に合わなくてごめんね。“ジャック”のもう一つの特性は心の中の膿を出す……長年抱えてきた負の感情を吐き出させるための特効薬でもあるのよ。ああやって黒い塊を出すこともあるわ」
「自白剤みたいなもんなの?」
「平たく言えばそうね。原産の“タヌー星”でもその使われ方が一般的よ」
「じゃあ料理の食材には向かないね、美味しいんだけどなぁ……」
サアヤは空になった“ジャック”の白い鞘を見つめながら涙をこぼす。しかし彼女自身何故涙が溢れてくるのか、理由は分かっていない様だった。
「今思ってる事、そのまま話してみて」
ヴィニエーラはサアヤの前に立ってそっと頭を撫でてやる。人(ではないが)の優しさに触れたサアヤは涙が止められなくなり、少しずつだが言葉を紡ぎはじめた。
「あたし……殺されなきゃなんないほどの悪い事、したのかな……?」
「していないわ、あなたの人生記録簿を見た限りはね」
「思い当たる事が無い訳じゃない、でも裏切ってないんだよ……」
サアヤは必死に自身の潔白を訴えかけ、ヴィニエーラはうんうんと頷きながら頭を撫で続けている。
まだ見習いという立場であるプルートーだけは事前に顧客情報を知る権限が無く、サアヤの話の内容がさっぱり分からない。こういった時は顧客情報の管理を担当するウラーノの傍に行けば見せてもらえるのだ。
「話が全く見えないっす」
「これがサアヤ嬢の人生記録簿にござる」
空中に浮かぶサアヤの人生記録簿に『知人女性の恋人に言い寄られた事がきっかけで“イジメ”という行為のターゲットのされた』と書かれてある。
「……痴情のもつれって感じすか?にしたって足引っ掛けて食用油に火かけてるとこに突き飛ばして焼死とはエグ過ぎるっす」
「それが学び舎で白昼堂々と行われたでござる」
酷い話でござる。ウラーノはサアヤに同情の視線を向けていた。
「油に火をかける学び舎があるんすか?」
「食い付くのはそこにござるか?“アース星”には料理の創作技術を学ぶ専門機関があるでござる。職業も世襲でないのが大半でござる」
「意外と自由と言うかシビアな星なんすね」
プルートーは更に人生記録簿を読み進め、ある一文で表情が険しくなった。
「これかなりマズイっす、『闇歩き千年刑』レベルの大罪っす!」
「左様。ここではそちにしか出来ぬ大技にござれば、如何様に成し得たのか……」
ウラーノにもそれは疑問だったようで珍しく首を傾げている。
「しかしそうであれば閻魔様直々に処分を下されてもよいものでござるが……」
「それをなさらなかった理由はこれだ」
先程まで隅っこで静観していたゾンがウラーノにある資料画面を見せてきた。
「転生前に作成される“青写真”でござるか?」
「あぁ、本来あの子は料理で平和活動をするという使命が課せられてた。ところが身近な人物の中に“オジャマタクシ”の入った人類が居たってぇ話だ」
「志半ばでの……でござるな」
そうさな。ゾンはサアヤとヴィニエーラのやり取りをじっと見つめていた。
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