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第三話
【デスタウン】のお巡りさん -4-
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その頃修行魂が暮らしている居住エリアではちょっとした異変が起きていた。様々な惑星で肉体から離れたばかりの魂が多数迷い込むという事態になっており、その殆どがチラシを持って彷徨っていた。
『住民の皆様、速やかに屋内避難をお願い致します!』
“死神部隊”下層部職員による街頭アナウンスにより、外に出ている住民たちは仕事や用事を中断して近くの建物に緊急避難する。
その中にはこの度新米修行魂となったサアヤもおり、相棒として“ポッキー”も一緒にこの街で暮らしている。この時彼女は飲食店を巡って他の惑星の料理を見聞し、市場に通って情報収集をしているところだった。ここは冥土の世界、通貨というものが存在しないので全ての事が無償で体験できるのだ。
……話を元に戻して、サアヤを始めとした街の修行魂たちの緊急避難が完了した頃、何処からともなくチラシを持った迷い人がうようよと街中を埋め尽くした。
「な、何だアレ……?」
「サアヤは初めてだよね?この状況を体験するの」
サアヤの傍らにはかつて通信経由で串刺団子を差し入れていた原型犬人類のポロスが立っていた。彼はサアヤよりもかなり小柄で、仕事の時は四足歩行で活動するので姿形はほぼ“犬”だ。
「はい、これって何なんですか?」
世話好きのポロスは仕事と称して新米のサアヤにあれこれ手助けをしていたので、サアヤも分からない事があればポロスに頼っている状態だった。
「これは然るべき経路で【関所】に行けなかった魂がここに迷い込んできたんだ、殆どは“死神部隊”で処理するんだけど、たまに突発的な戦争とかテロといった大量殺戮によってあぶれてしまう魂があってね」
「【関所】って?」
「【境界線】みたいな所の事だよ。他にも似たような所は沢山あって、普段は“死神部隊”が正しく魂をそこに送り届けるんだ……ちょっと待ってて」
ポロスは顔の前でサッと右手を動かして通信を始める。
『やぁポロス、そっちは今大変そうだね』
「うん、“迷い魂”がうようよしてるよ」
ポロスは浮遊した画面に写っている見た事の無い相手と話していた。
「何処かの惑星で何かあったのか?」
『まぁそんなところだな、“シャウラ”系の“レリヒー星”で大量自殺があったんだ』
「“また”あそこか、信仰するのは自由だけどいい加減ああいうのは止めてほしいよ」
『こっちもある程度は何とかできても、あの星万単位でそれするだろ?さすがに手が回らなくて』
「一度支配神様にご降臨願った方が良いんじゃないか?定期的にそれされるとこっちの生活にも支障をきたすよ」
『今その方向で話が進んでるよ、最近間隔が詰まりすぎだからね。ウチの部下たちもさすがに怒ってる』
通信相手の男性はそう言って肩をすくめている。ローブで顔が隠れているため表情までは分からないがどうやら呆れているようだ。
『こうなった時【ガーフ】の連中が動き出すからね、そろそろ上層部に動いて頂かないと……今頃行きつけのカフェで遊んでんじゃないかな?』
「多分ね、さっき上機嫌のディオスとムエルテを見掛けたから」
『はぁ……あンの鳩ども最近暇だったとは言え、遊んでばっかで全ッ然仕事しないから一遍食われればいいんだ、ヴィニエーラさんに捌いて頂こうかな?』
「おいおい、勤続二万五千年のレジェンドにそれは無いだろう。あの双子が抜けたら結構な痛手だぞ」
そうなんだよなぁ……男性はがっくりと肩を落として項垂れていた。
『住民の皆様、速やかに屋内避難をお願い致します!』
“死神部隊”下層部職員による街頭アナウンスにより、外に出ている住民たちは仕事や用事を中断して近くの建物に緊急避難する。
その中にはこの度新米修行魂となったサアヤもおり、相棒として“ポッキー”も一緒にこの街で暮らしている。この時彼女は飲食店を巡って他の惑星の料理を見聞し、市場に通って情報収集をしているところだった。ここは冥土の世界、通貨というものが存在しないので全ての事が無償で体験できるのだ。
……話を元に戻して、サアヤを始めとした街の修行魂たちの緊急避難が完了した頃、何処からともなくチラシを持った迷い人がうようよと街中を埋め尽くした。
「な、何だアレ……?」
「サアヤは初めてだよね?この状況を体験するの」
サアヤの傍らにはかつて通信経由で串刺団子を差し入れていた原型犬人類のポロスが立っていた。彼はサアヤよりもかなり小柄で、仕事の時は四足歩行で活動するので姿形はほぼ“犬”だ。
「はい、これって何なんですか?」
世話好きのポロスは仕事と称して新米のサアヤにあれこれ手助けをしていたので、サアヤも分からない事があればポロスに頼っている状態だった。
「これは然るべき経路で【関所】に行けなかった魂がここに迷い込んできたんだ、殆どは“死神部隊”で処理するんだけど、たまに突発的な戦争とかテロといった大量殺戮によってあぶれてしまう魂があってね」
「【関所】って?」
「【境界線】みたいな所の事だよ。他にも似たような所は沢山あって、普段は“死神部隊”が正しく魂をそこに送り届けるんだ……ちょっと待ってて」
ポロスは顔の前でサッと右手を動かして通信を始める。
『やぁポロス、そっちは今大変そうだね』
「うん、“迷い魂”がうようよしてるよ」
ポロスは浮遊した画面に写っている見た事の無い相手と話していた。
「何処かの惑星で何かあったのか?」
『まぁそんなところだな、“シャウラ”系の“レリヒー星”で大量自殺があったんだ』
「“また”あそこか、信仰するのは自由だけどいい加減ああいうのは止めてほしいよ」
『こっちもある程度は何とかできても、あの星万単位でそれするだろ?さすがに手が回らなくて』
「一度支配神様にご降臨願った方が良いんじゃないか?定期的にそれされるとこっちの生活にも支障をきたすよ」
『今その方向で話が進んでるよ、最近間隔が詰まりすぎだからね。ウチの部下たちもさすがに怒ってる』
通信相手の男性はそう言って肩をすくめている。ローブで顔が隠れているため表情までは分からないがどうやら呆れているようだ。
『こうなった時【ガーフ】の連中が動き出すからね、そろそろ上層部に動いて頂かないと……今頃行きつけのカフェで遊んでんじゃないかな?』
「多分ね、さっき上機嫌のディオスとムエルテを見掛けたから」
『はぁ……あンの鳩ども最近暇だったとは言え、遊んでばっかで全ッ然仕事しないから一遍食われればいいんだ、ヴィニエーラさんに捌いて頂こうかな?』
「おいおい、勤続二万五千年のレジェンドにそれは無いだろう。あの双子が抜けたら結構な痛手だぞ」
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