冥土の土産に一杯どうだい?

谷内 朋

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第三話

【デスタウン】のお巡りさん -6-

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 「久し振りにお仕事のようね……」

 スミューチェの言葉に三人も反応する。

 「「この感じは“レリヒー星”の集中自殺だね」」

 ディオスとムエルテは長年の経験で外の状況が空気一つで分かってしまうらしい。

 「あそこの集中自殺は何とかならねぇのか?」

 「「それはへカテ神様次第だよ、“迷い魂”状態だから殆どが悪徳化してるね多分」」

 「今度こそブチ切れんじゃねぇのか?前回のご降臨から一世紀も経ってねぇし」

 「そうは言ってもあそこの人類寿命って長くて五十年でしょ、殆どの国で文字が発達してなくて書籍として残せないから次の世代にきちんと伝承されないのよ」

 「それでも絵は描けるんじゃないんですか?」

 「それもごく一部の技術者のみね。“レリヒー星”が宗教基盤で国政を運営してるのは知ってるわよね?彼らはへカテ神様のお言葉に懐疑的だから反政府団体扱いなのよ」

 「そりゃ参ったな……」

 トートはローブ越しに頭を掻く。

 「「そこは僕たちが気にする問題じゃないよ、取り敢えず【ガーフ】の門橋に直行だね!」」

 “モリーツェ”をきれいに平らげ、“麦茶”を飲み切った双子の鳩はバタバタと羽を動かし始める。

 「「ごちそうさまマスター、今度来るまでに“ミミズ”入荷しといてね!」」

 「畏まりました、“ミミズ”は鮮度が命ですからなるべくお早く。入荷次第ご連絡しますよ」

 はーい!双子は一足お先に店を出た。

 「私たちも行きましょう。マスター、“シフォンケイク”もお忘れなく」

 「鳩肉もお願いしていいですか?」

 スミューチェとトートもちゃっかりとリクエストしている。

 「畏まりました、またのお越しをお待ち致しております」

 マスターは“死神部隊”上層部のワガママを嫌な顔一つせず承諾する。それに満足したスミューチェは立てかけていた箒を、トートは大鎌を手にして店を出て行った。

 「皆様ご武運を……って負ける事など有り得ないですけどね」

 マスターは四人の背中を見送りながらそう呟いた。



 はてさて“死神部隊”下層部員の働きによって“迷い魂”が居なくなった居住エリアでは……。

 「あーっ!またやられたぁ!!!」

 「うちもですよ。ったくどうせ食べるのならきれいに食べてほしいよ!」

 市場で働いている修行魂たちは“迷い魂”による惨劇にイライラを募らせていた。

 「今回も“レリヒー星”だったのかよ!?」

 「あそこの“迷い魂”だけはホント迷惑!!!」

 「“マーケット”でこれなんだ、“フードコート”ではもっと酷いんじゃないか?」

 「う~んちょっと心配よねぇ……」

 修行魂たちは惨劇の後片付けを開始する。

 「最近増えてないか?」

 「そうよね、昔は一世紀に一度くらいだったのに……」

 「今じゃこの一年で三度目だ、それに今回は規模がデカ過ぎるぞ」

 「支配神様のせいではないにしろ、何とかならないものかしらねぇ……」

 一人の女性修行魂の言葉に皆困った表情で唸り声を上げていた。他の修行魂たちも困り顔だったが、各々の店舗の掃除をしてこの日の営業は諦める事にした。
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